不動産トピックス
【8/18号・今週の最終面特集】オフィスづくり最新トレンド

2025.08.18 12:05
多様な働き方をライブオフィスで体験
社員同士の会話が自然と生まれる場を整備
オフィスは働く人それぞれのワークスタイルに寄り添った多様性が求められている。一方で収益を生む生産拠点としての機能も、当然ながら有していなければならない。両者をバランス良く融合させた最新のオフィスづくりを紹介する。
16のゾーンに細分化 場面ごとに快適な働く空間
コロナ禍を通じてオフィスのあり方は大きく変化した。リモートワークが定着し、一時はオフィスを必要最低限の面積に抑えようという動きがみられたものの、コロナ禍の収束後はオフィスに集まって働くことの優位性が改めて見直され、企業は社員の生産性だけでなくエンゲージメントの向上、健康増進といった多角的な視点からオフィスづくりを行うようになった。アーバンプラン(東京都新宿区)はオフィスのレイアウト設計・デザインから内装・設備工事、企業の成長に合わせたアフターフォローまで一気通貫のトータルコーディネートを手掛けており、昨今のトレンドや企業側のニーズに合致するオフィス空間の構築を得意としている。同社は東京・西新宿の本社オフィスや横浜・名古屋・大阪の各営業所のオフィスをライブオフィス化し、同社の理念や多様な働き方に対応したオフィスをリアルに体験できる機会を提供している。
「新宿野村ビル」32階のアーバンプラン本社オフィスは2022年に開設。一部の部門を除き、固定席から完全フリーアドレスを採用した。エントランスは白を基調としたシンプルなデザインで、壁や天井は左官の質感を表現しているのが特徴。営業部の野澤夏樹氏は「入口部分にはアーチ状の造作を設えており、自動ドアからオフィス内に入った箇所にも同じアーチ状の造作を設置して2連としています。これは、元々ビルに存在する柱が当社オフィスの目指す空間づくりとミスマッチであったことから、アーチ状の造作を2連にすることで柱を隠す役割もあるのです」と語る。
オフィスはエントランスを含め16のゾーンに分かれており、執務スペースはデュアルモニターや昇降デスクを設置し働く人の使いやすさを重視したワークエリアや、半個室の空間で集中して働くことのできるエリア、社内のライトな打ち合わせに使用できるファミレスブース、自然と社員同士の会話が生まれるフリーテーブルなど、働く人の場面に応じた多彩なエリアを配置した。また内装建材や家具・什器類の見本帳を広げながら仕事ができるエリアを設けるなど、オフィス設計を主業務とする同社ならではの空間も大きな特徴といえるだろう。
ミーティングルームは2部屋で、モニターを設置しオンライン会議にも対応。前述の執務スペースも含め、オフィス内には同社が得意とする造作家具が各所に配置されている。メーカーの既製品では賄うことのできない空間デザインを実現できるのが造作家具を設置することによる大きな利点であり、ミーティングルームに設置した大きなテーブルもその造作家具の一つ。天板が壁を伝って天井へ伸びるような形状としているのは理由があり、野澤氏は「モニターの配線類が空間の中で悪目立ちしてしまうのを防ぐために、テーブルの天板を壁に見立てて配線類を隠す役割も担っています」と話す。ミーティングルームでは、窓際に配置したベンチシート内や壁際に収納スペースを設けており、デザイン性を担保しつつも空間を無駄なく活用する同社の狙いがみてとれる。
このほか、眺望を楽しむことができる窓に面したカウンター席や、造作で周囲をカバーし人の腰の高さで社員同士のちょっとした立ち話の場所にもなっている個人ロッカー、ランチなどで社員が集まってコミュニケーションをとれる多目的カウンターなど、オフィス内にはこだわりの箇所がふんだんに盛り込まれている。ライブオフィスの見学会は定期的に開催されており、「すべてのはたらく人に、生きがいを。」を企業メッセージに掲げる同社のオフィスづくりへの思いを現地で体感してみてはいかがか。
「日経ニューオフィス賞」発表 組織力を高める空間構築
日本経済新聞社(東京都千代田区)とニューオフィス推進協会(東京都中央区)は、「ニューオフィス」づくりの普及・促進を図ることを目的に、創意と工夫をこらしたオフィスを表彰する「日経ニューオフィス賞」を主催している。今月5日には今年度の「第38回日経ニューオフィス賞」が発表された。
「日経ニューオフィス賞」は、快適かつ機能的なワークプレイスを整備し、感性を刺激し創造性を高めるために、また知識資産や情報の適切な管理・運用のためのコンセプトや具体策、その効果を評価するもの。全国および地域ブロックごとでそれぞれ「ニューオフィス推進賞」を選定し、入賞しなかったオフィスの中から各ブロックにおいて今後のオフィス環境の整備の模範と認められたオフィスを奨励賞として表彰している。今年度は全国16の企業・団体のオフィスが「ニューオフィス推進賞」を受賞した。
その1つ、三井ホーム(東京都江東区)の新オフィス「三井ホームグループ MOCXCOM(モクスコム)」は、都内9カ所に分散していた拠点を集約し、木の街として知られる東京・新木場に2024年5月に完成した。デザイン設計・施工は、三井不動産グループの三井デザインテック(東京都中央区)が担当した。新オフィスはオープンイノベーションの創出を目指し、組織の垣根を越えたコミュニケーションと連携を促進するため、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入。これにより、社員は業務内容に応じて最適な働く環境を自由に選択することができる。また、オフィスを「家」に見立て、グループ各社が一つ屋根の下で、同じ家に集い、働く姿をイメージしたオフィスを構築した。オフィス内において、カフェ機能やセミオープンな会議スペースなど、部門や会社を超えて集うための空間を「LIVING」、社内で集まり集中し生産性を高めて働く各社専用の執務エリアを「ROOM」と名付けるとともに、オフィス内は木を多様に生かしたデザインとしているのが特徴だ。
経営・マーケティング等の各種コンサルティングサービスを提供するアビームコンサルティング(東京都中央区)は、JR「東京」駅前の「東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー」の本社オフィスが「ニューオフィス推進賞」を受賞した。同社オフィスは「As One Stage」をコンセプトに、社員一人ひとりが創造性や専門性を発揮し、チームとして最大限のパフォーマンスを発揮できる場所として整備された。オフィスの整備にあたっては、設計段階から経営層や社員が参画し、働き方や空間に関するアンケート・インタビューを通じて得た定量・定性データやこれまで蓄積してきたデータをもとに、オフィスに求められる要素や機能を多角的かつ継続的に分析することで、オフィスがより働きやすい空間へ進化し続けることを目指している。
会議室や座席の予約・運用にはオンラインのビジネスツールや外部のクラウドサービス、社内開発のシステムを活用し、予約管理から入室処理、QRコード発行までを一括管理し、API連携による自動通知機能などにより、効率的でスムーズな業務運用を支えている。また執務エリアでは昇降デスクや集中ブースなど、プロジェクトや個々の業務内容に応じて働く場所を切り替えられる空間を整備。さらに、サウンドスケープデザインの考え方を採用することで音環境を最適化し、快適で集中しやすいオフィスづくりを実現している。