不動産トピックス

【8/4号・今週の最終面特集】新ビルめぐり 豊洲セイルパーク

2025.08.04 16:59

豊洲2・3丁目地区最後の大規模再開発が完成
インキュベーション施設・シェア企業寮を整備
新しいライフスタイルの提案や事業モデルの実証実験の舞台に
 IHI(東京都江東区)と三菱地所(東京都千代田区)が開発を推進してきた東京都江東区豊洲の大規模再開発「豊洲セイルパーク」が完成した。街区内は高機能オフィスや商業エリアのほか、インキュベーション施設やシェア企業寮を内包し、豊かなライフスタイルの発信・創出を目指している。

1フロア1275坪 レイアウト性高い最新鋭オフィス
 東京メトロ有楽町線「豊洲」駅前に広がる江東区豊洲2・3丁目地区は、かつて東京石川島造船所(現在のIHI)が立地し、日本の近代産業を長らく支えてきた。1990年代以降は区画整理が本格化し、造船・工場の街から住宅地や商業地への移行が加速した。IHI都市開発部長の植田満氏は「豊洲2・3丁目では2002年に、まちづくり協議会の前身となる開発協議会が発足。地区内で行われる開発プロジェクトの実施にあたり、豊洲地区全体の課題への迅速な対応や統一的な街並みの形成を目的として、まちづくりガイドラインの策定とその運用を通じて、『職・住・遊・学』が融合する複合都市の形成に向け活動してきました」と話す。豊洲2・3丁目地区では駅周辺の街区においては大型オフィスビルの開発が段階的に行われ、その周囲には大型商業施設や教育施設、大型マンションなどの開発が行われてきた。その中で三菱地所はこれまでに「豊洲フロント」や「豊洲フォレシア」といった大規模再開発を手掛けている。
 「豊洲セイルパーク」は、豊洲2・3丁目地区で行われてきた大規模再開発の最後となるプロジェクト。敷地内は「きんでん豊洲ビル」と「豊洲セイルパークビル」の2棟の大型ビルで構成されており、このうち「きんでん豊洲ビル」は関西電力グループのきんでん(大阪市北区)の新しい事業所としての利用を目的として建設され、建物竣工後に三菱地所からきんでんへ土地建物の所有権が譲渡される予定となっている。
 「豊洲セイルパークビル」はオフィスを中心に低層部には商業エリアやインキュベーション施設、シェア企業寮を整備した。4~15階のオフィスは基準階面積が約4215㎡(1275坪)で、エレベーターや給排水設備といったコア設備を中央部に集約し「ロ」の字型で多彩なレイアウト構成に対応した空間を実現。9~15階の高層フロアにはテナント専用の外部テラスを設置しており、ワークスペースの延長として利用することが可能だ。環境負荷低減に係る様々な取り組みや、非常用発電機の設置など防災にも配慮した、最新鋭のオフィスとなっている。三菱地所の執行役員都市開発部長の鯉渕祐子氏は「オフィスの成約状況は現在のところ約5割といったところで、機能性の高いオフィスや水辺のロケーションなどで高い評価を頂いております」と話す。
 1階および2階の商業エリアは飲食・物販・サービス・クリニックなどの日常生活の利便性を高める21店舗が出店。ペットを飼育している世帯が比較的多い豊洲エリアの特性を考慮し、商業エリアの1階共用部はペットをバッグまたはカートに入れた状態での入館や、一部店舗ではペット同伴での入店が可能となっている。またペット向けのサービスとして、ペット用の足洗い場や排泄物ボックスを設置し、ペットフレンドリーな空間の提供に努めている。このほか、街区中心に位置する約700㎡の大屋根広場ではイベント開催を通じた人々の交流や賑わいづくりも計画されている。
 「豊洲セイルパーク」の大きな特色といえるのが、インキュベーション施設である「LIFESTYLE LAB “TOYONOMA”」とシェア企業寮の「TRIAL HOUSE “TAMESU”」である。コクヨ(大阪市東成区)が運営を担当する「TOYONOMA」は、1時間からの短期利用や、4~6名の個室月額利用、イベントや企業の研修での大会議室利用など、多様な働き方に合わせて利用することが可能。また働くだけでなく本格的な厨房設備を備え、飲食店営業許可取得済のテストキッチンを利用したポップアップ営業や、オフィスエントランスに面したエリアでの製品展示など、多様な実証実験や社外活動にも対応している。「TAMESU」は、全39戸で構成されるシェア企業寮で、様々な企業やスタートアップとの異業種交流を促進し、人的ネットワークの形成や学びの機会を提供する。施設内は菜園付きのルーフトップや100㎡を超えるダイニングラウンジなどの共用部を設け、自然と入居者同士の交流が生まれる空間を実現した。居室は約25㎡のワンルームと約50㎡の1LDKの2タイプがあり、ベッドや冷蔵庫などの家具・家電付きとなっている。地域住民やオフィスで働く人へのテストマーケティングが可能な「TOYONOMA」で生まれた製品やサービスを、「TAMESU」の入居者が日常的にフィードバックすることで、ユーザー目線が反映された新しいビジネスが生まれていくことを目指す。


<豊洲セイルパーク>
名称:きんでん豊洲ビル(A棟)
事業者:三菱地所
所在地:東京都江東区豊洲2-14-1
規模:地上18階地下1階塔屋1階
敷地面積:約6600㎡
延床面積:約4万7000㎡
用途:事務所、展示スペース、駐車場
スケジュール
2022年7月着工、2025年9月竣工(予定)

名称:豊洲セイルパークビル(B棟)
事業者:IHI、三菱地所
所在地:東京都江東区豊洲2-14-2、4、5
規模:地上15階地下1階塔屋1階
敷地面積:約1万2893㎡
延床面積:約8万9000㎡
用途:事務所、インキュベーション施設、店舗、シェア企業寮、駐車場
スケジュール:2022年7月着工、2025年6月竣工




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