不動産トピックス

【今週号の最終面特集】職場環境を見直し更なる成長へ オフィス移転事例

2023.01.16 10:25

効果検証・アップデート可能な造り
複数フロアから1フロアに集約 面積は1.4倍へ拡張
 コロナ禍以降、自社オフィスを見直す企業が増えた。コロナが要因でなくとも、オフィスが昨今のワークスタイルに適さない(適応しにくい)ことが挙げられる。第一ビルディングは、既存ビルの建替えにより本社を移転。同時にオフィスを新たなニーズに適応した環境へ変えた。アップデートも加味しており、今後は移転コンサルティング業務にも生かしていく。

フリーアドレス採用 働きやすさを重視
 オフィスビルのプロパティマネジメントを得意とする第一ビルディングは、本社オフィスを東京都中央区の京橋から品川区の大崎へ移転した。2022年3月14日に「アートヴィレッジ大崎セントラルタワー」11階への移転が完了。新オフィスとなって半年以上が経過した。
 本社移転のきっかけは、入居していたビルの建替え工事。従前から建替えは通達されており、移転先を探す猶予も充分にあった。その期間を活用し単なる本社オフィスの引っ越しではなく、ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、新しい働き方が可能な職場環境の構築を計画した。従前のオフィスはデスクと会議室が中心で、各自決まった場所・席で勤務していた。旧会議室は収容率が低く、かつ社内用途でフル稼働。非常に効率が悪い状態であった。使用したい時に使用できず、オンラインの打ち合わせにも適していなかった。新オフィスではフリーアドレスを採用し、オープンに会議できるスペースも数拠点構築。従前は複数フロアに分かれていたオフィスを1フロアに集約し、社員同士の交流頻度を増やすオフィスを目指した。社員重視、働きやすさ重視のオフィスである。社内はオープンと割りきり、利用頻度の高い3~4名の少人数打ち合わせテーブルやブースを複数設置。オープンスペースのため、参加人数に合わせて可変的に利用可能とした。
 人事総務部の小林篤鋭氏は「最初に本社で勤務する若手社員の中からメンバーを募り、『ワークスタイルデザインチーム』、『IT・インフラチーム』、『ペーパーレスチーム』といった今後重要な項目毎に振り分けました。ワークスタイルデザインチームは、社員の快適で働きやすい環境造りを中心に思案・行動するチーム。IT・インフラチームは、Web会議など最新の働き方を踏まえ、必要な機器・インフラの構築を目指すチーム。ペーパーレスチームは、社内及び業務等々におけるペーパーレス促進に向けたチームです。それぞれで意見やアイディアを出しながら情報共有しつつ、新しい本社オフィスのコンセプトを『ONE―O OFFICE ―クローズからオープンに、社員一人ひとりが繋がるオフィス―』としました。『ワクワクする、ドキドキする、イキイキするオフィス』、『コミュニケーションが活性化されるオフィス』、『好きな時間に、好きな仕事を、好きな場所でおこなえるオフィス』を実現することを意識した結果です。イメージとしては、オフィスっぽくないオフィスです」と語った。

社員同士の対話促す ONE-O CAFE
 移転先の「アートヴィレッジ大崎セントラルタワー」は、1フロアが約840坪。従前よりも面積は1・4倍に拡張した。だが新オフィスではフリーアドレスを採用。執務室の席数は約180席と以前よりも全体で2割減少した。一方新たに創出されたスペースには、グリーンやナチュラルテイストの内装で構成されたカフェスペース「ONE―O CAFE」を造った。社員同士の対話やコミュニケーションを促す快適なオアシスを意識し、かつ近くには15分使用のリチャージ席やマッサージチェア、リフレッシュ専用のスペースも構築した。
 加えて執務室の中央を通るメーン動線が、「ONE―O CAFE」へ自然と誘導する造りとなっている。動線を斜めにしたことで、歩行時の景色を単調にさせず移動意欲も掻き立てられる。パーティション等の隔てる物は失くし、他の社員の働く様子が自然と目に入りやすくなった。オフィスの先が見渡せる開放感にも繋がり、何処で誰が勤務しているのか把握しやすい。会話が自然発生しやすいことも意識した。ちなみにオフィス什器メーカーのイトーキ(東京都中央区)と一緒にオフィスの設計を実施。ワーカー(自社社員)から見た理想のオフィスと働き方の構築を行っている。

本社移転データを基に移転コンサルにも活用
 会議室はこれまでの利用状況から必要な個数や面積を算出し、気軽に3~4名で打ち合わせができるゾーニングから、机をなくしたひな壇型の会議室も造った。新会議室は社内と来客を明確に分けて構築。ひな壇型であると参加者は意見を出しやすく、プレゼンテーションやアイディア出しといった活用もできる。1日3~4件と稼働率も良い。一方集中しての作業に適した、個人用の囲われた席も用意。チームでの業務から個人での業務と、仕事に合わせてワークスペースを選択できる。もちろん昨今の環境配慮やエコへの働きとして、間伐材を会議室や什器等の一部に採用している。緑もオフィス内に設けて、癒しや安らぎへ繋げている。
 プロパティマネジメント事業部の二戸大輝氏は「これら以外にも様々な仕掛けを施し、快適かつ働きやすい環境づくりを行いました。移転してから半年以上が経過した今では、社内アンケートを実施するなど、事前に想定していた効果を検証し、社員の声をキャッチアップしながら、日々オフィスをアップデートしています。この本社移転で得たデータを基に、今後はオフィス移転のコンサルティング業務にも生かしていきます。当社のオフィスがライブオフィスであり、移転事例としても紹介できることは大きな強みだと思います」と語った。

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