不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2022.06.20 11:58

需要拡大見据えた新興企業の出店戦略 キーワードは「DX化」「SNS」「健康と美」
 外国人の入国緩和によりインバウンド復活に期待がかかるホテル業界では、徐々に攻めの出店に転じる企業も増えてきた。コロナ禍の最中、ホテル運営のDX化等が進み、新たなオペレーション体制を構築することで、事業拡大への期待感が高まっている。新興ホテルの出店戦略を追った。
不動産会社と提携し空き土地データ共有
 飛行機のファーストクラスをイメージしたコンパクトホテル「ファーストキャビン」を展開しているファーストキャビンHD(東京都港区)は、昨年より本格的なリブランディングに着手している。新コンセプトとして掲げているのは「STAY SMART」だ。
 同社の米良浩幸社長は話す。「これまでは、高級感ある設備とサービスで、非日常空間を提供することをコンセプトにしてきました。ここに、ワーク&ライフの価値を上げるコンパクトホテルとして、新しい価値観を提供していくものです」。
 例えば「ファーストキャビン御堂筋難波」(大阪府大阪市)は、以前より好評を博していた大浴場とサウナを一新し、健康づくりを支援するパーソナルジムやイベントスペースなどの機能を併設した。また、「ファーストキャビン市ヶ谷」(東京都新宿区)は、働く女子をターゲットに、専門家の監修のもと、独自のファスティング(断食)プランなどを打ち出した。
 同社は、今回のリブランディングとともに、コロナ後を見据えた成長戦略を描いている。大きなテーマは「収益力アップ」と「新規事業の開発」。
 柱となるのは、不動産テックを活用した新築投資用マンションの企画開発を行うタスキ(同)との、資本業務提携契約締結だ。
 テクノロジー基盤の導入、デジタル人材の育成支援を図ることでホテル運営のスマート化を図る。また、タスキ商品のペルソナとする東京都心でアクティブに活動する若い世代に向け、自宅、職場とは別の「第3の場所」として、「キャビン」を提案。コロナ禍後のライフスタイルを実現させる空間を提供する。「新しい形として、テレワークキャビンやサブスクリプションによる新しい居住スタイル、ペットホテルなどの空間創造に取り組んでいく」(米良社長)。
 同社は提携を機に、グランテックという不動産子会社を新たに設立。両社の営業活動で有効活用可能な事業用地、空きオフィス、空き店舗等の空間情報を共有し、新規出店の用地開発など、不動産オーナーに対するクロスセル・アップセルの提案による収益機会の拡大に取り組んでいきたいという」。
オリジナルブランドフランチャイズ展開
 神奈川県湘南地区に「8HOTEL」「3S HOTEL」など6店舗を展開している湘南レーベル(神奈川県藤沢市)では、「8HOTEL」ブランドのフランチャイズチェーン事業をスタートさせる。
 コンセプトに合わせ、主要顧客を絞り込んだホテルを展開してきた同社だが、これまで培ったノウハウを基に本格的なブランド力を強化、全国展開を目指す。
 同社のフラッグシップ店舗である「8HOTEL CHIGASAKI」をモデルにフランチャイズチェーンを展開する。全国に拡大させていく計画で、「年間5店舗、4年後には20店舗にまで拡大させていきたい」(藤原大和社長)という。
 同ホテルは、全36室と小規模ながらも、観光やビジネス利用者に「非日常的な時間を提供する」をコンセプトにしたホテルだ。
 エントランスにはヤシの木を配置し、4階建ての白い建物に囲まれたプール、そこを中心にエントランス・ラウンジ・サウナが配置された造りは海外のビーチリゾートを意識した。
 大きな特徴は、男女共用で使用できる愛好者専用ブランドTTNE incプロデュースの本格サウナを配置していること。サウナ好きの若者層を中心に、ターゲット層を絞り込むことで、周辺の施設にはないオリジナリティーを前面に打ち出した。
 同社はこのホテルを「目的型運営」の成功例としてFC加盟募集の基本モデルにする。
 顧客ターゲットを明確化した「安定集客」、OTAからの脱却による「運営費用削減」、宿泊以外の売り上げ確保する「付帯販売収益」だ。
 「茅ケ崎では、ペルソナマーケティングとして、20~30代の女性・SNSに敏感・海外旅行好きにフォーカスしました。自社サイトの予約シェア率は、通常のホテルは20%程度ですが、50%と非常に高くなっています。また、当ブランドではオリジナルグッズを販売していますが、これが施設内飲食と併せて、売上全体の12%にのぼっています。結果、コロナ禍でも、当社の他のビジネスホテルと比べても『8TOTEL』は、稼働率で30%以上、ADRも倍以上と高い数字となっています」(藤原社長)。
 参画するホテルに対しては、本部がSNSを中心に集客代行を行い安定集客を目指す。またオリジナルアメニティの一括購入などで運営費用の削減も支援していく。
 リニューアル費用は、ブランドコントロールためのサイン・デザイン料として約500万円。オプションとして、同ブランドの特徴の一つであるサウナやプールなども費用に応じて設置することが可能だ。初期加盟費用は1室あたり5万円、年間ロイヤリティは稼働室数に応じて3%。
 同社はブランド力を維持させていくために、大都市圏から1.5時間以内の立地で、ハイ・オフシーズンの落差が大きく、ビーチタウンにあり文化情緒があるエリアのホテルを主なターゲットにする。

ソラーレH&R 「サウナ」と「カフェ」併設「アンドルームズ」7軒目
 ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(東京都港区)は、7月に「ホテル・アンドルームス札幌すすきの」(北海道札幌市)を開業させる。「ホテル・アンドルームス」ブランドでは、7軒目となる。
 同ホテルは、札幌市営地下鉄東豊線「豊水すすきの」駅から徒歩3分に位置し、東急不動産が所有する土地に建つ。敷地面積658・60㎡、延床面積4090・52㎡、地上13階建て、客室数は155室。“一泊のストーリーを充実させる「&」がある”というコンセプトのもと、本場フィンランド式の「サウナ」とカジュアルスタイルの「カフェ」を併設する。
 客室は、1名で利用可能なシングルルームから4名まで宿泊できるプレミアツイン、セルフロウリュ対応のプライベートサウナを備えた特別な1室まで、全7タイプを用意している。
 サウナはプロサウナー「ととのえ親方」こと松尾大氏がCEOを務めるTTNEが監修した男女別の共用サウナと貸切個室サウナの他、プライベートサウナ付きの客室も用意。共用サウナは静寂な空間にロウリュの音が響き渡る「メディテーションサウナ」で、開放的な外気浴スペースを備えている。

京急イーエックスイン 「京急EXホテル 札幌」開業
 京急イーエックスイン(神奈川県横浜市)では、北海道札幌市に「京急 EXホテル 札幌」を6月29日に開業させる。
 JR「札幌」駅に近接したビジネスホテルをリブランドしオープンする同ホテルは、京急イーエックスインホテルグループとして北海道初出店となる。また、同ホテルは宿泊に特化したビジネスホテル「京急 EXイン」が2018年10月から従来のビジネスホテルからワンランク上の新たな業態として展開する「京急 EXホテル」ブランドで、全2館となる。 同ホテルは、JR「札幌」駅北口より徒歩1分、北海道のビジネス・レジャーの中心地・札幌市において、利便性が非常に高い場所に位置する。150室ある客室は全室禁煙、滞在の目的にあわせて10種類の多様なルームタイプから客室を選ぶことができる。
 ロビースペースはラウンジ、ワーキングスペース、ギャラリー、インフォメーションなど、フレキシブルに使えるゾーニングにより利用者ひとりのニーズにあわせて自由に過ごすことができる。朝食は、ホテル内地下1階のレストランで北海道ならではの食材を存分に愉しめるオリジナルメニューを用意。自動チェックイン機、キャッシュレス決済の導入により、ニューノーマルに即したスマートなサービスを提供する。

登別グランドホテル 「鬼サウナファンド」を設立
 登別グランドホテル(北海道登別市)は、ミュージックセキュリティーズ(東京都港区)と提携し、同ホテルが新たに設置する「鬼サウナ」の事業に共感する個人法人の出資者を募るため、地域課題解決の定量化設定を行った「鬼サウナファンド」を設立した。
 登別のシンボル「鬼」をテーマにした「鬼サウナ」は、日本国内の数多のサウナ設計に携わっている松尾大氏がプロデュースを手掛け、9月頃にオープンを予定している。 
 「鬼サウナファンド」は、広く一般から出資を募り、個人の出資者にとっては“1口オーナー”として「鬼サウナ」事業に参画、投資して事業を応援する楽しみと温泉・サウナそのものの楽しみを合わせた設計を施した。 
 個人投資家の参加は、登別グランドホテルの新たなファンの獲得や登別地域・登別温泉街の魅力発信など「関係人口」の増加につながるため、地域活性化への貢献が期待されている。 
 また、社会的インパクトを可視化する「社会的リターン」の指標を設定した「社会的リターン指標設定ファンド」である「鬼サウナファンド」は、SDGs及びESG投資に関心を持つ法人からの出資も募っていく。

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