不動産トピックス

第20回不動産ソリューションフェア人気セミナー紙上再現

2018.12.10 15:01

実践セミナー ビルオーナーが確認した!ビル経営の重要ポイント リアルエステート・アドバイザーズ 代表取締役社長 釜口浩一氏

管理コストの削減だけでなく中身を見直して 委託費を500万円以上も値下げ

現金収入を確保する重要なポイントはどこか

 今は満室稼働しているが、数年後にどうなるか不安。設備の取り替えで多額の資金が必要になる時期が近まっている。などのビルオーナー向けの講演として、弊紙コラム「繁盛しつづけるビル経営の勘所」でおなじみ、リアルエステート・アドバイザーズの釜口浩一氏が実践セミナーを行った。

 ビルオーナーの中には所有不動産が満室で余裕のある人もいれば、昨今のビル市況は良いけども、立地的な問題などもあり空室が中々改善しない人もいらっしゃると思います。状況は様々ですが、どのオーナーも共通する点は「キャッシュを増やしたい」とのこと。これまでも、90年代前半の「バブル崩壊」、2008年には「リーマンショック」があり、今良くても今後景気が急に変わることも考えられます。その時のため、今満室であってもできるだけ現金収入を確保する。そのための重要なポイントはどこか、どこに目を付けていくかを話したいと思います。今回のテーマを検討する際にベースとなったのは、全国に20数物件をお持ちのビルオーナー様から頼まれて数年前から、そこの全面的な見直しに協力したことが関連します。最終段階では、同企業の担当者(不動産に詳しくない方)も人事異動で異動してくることが分かりました。その方々でも、直ぐに委託先のプロと交渉できるようなモノは何かないかということがありました。「不動産に詳しくない方でも、ポイントが分かるように」と作り上げていき、その過程で全国的なビル経営の見直しを順次実施。仕上げとして行った感じです。また、その過程においても委託先が「何でその様なことやっているのだろう?」、「それはこの様に行ったら良いのでは?」という疑問が湧いてきました。その様な疑問点もチェックするポイントとして仕上げていった結果、稼働率が80%にも満たなかったビルを複数所有していましたが、1年後には皆90%以上に改善。委託(外注)費も500万円以上も値下げできました。単に削減だけでなく、中身を見直すということです。他にも、大手不動産会社の管理担当者とテナント側から相談を受けた際に「何故この様な対応をされるのだろう?」と疑問に感じるケースも実際に御座いました。「ビルオーナーだけでなく、ビル管理会社の社員もしっかりと業務を果たす仕組みとなっているか?」も知って頂きたいと思います。ビル管理会社や施工業者にとってはオーナーのキャッシュが増えると自身の腹が痛むという利益相反の面もあり、踏み出しにくいとも思われます。ですが現在は良くとも後にオーナーが不動産の知識を得てきますと、自身で動かないことを逆にオーナーから指摘される可能性も高くなります。今回のポイントを見て「自分たちのどこに問題があるか」、「現金が眠ってそうな所はあるか」ということを考えて頂きたいです。まず、「100万円の現金収入を上げるためにはいくら売上が必要か」ということ。例えば「売上高営業利益率」。自社で利益上げるには5%としましょう。「売上1億円で利益500万円」という企業の場合、100万円の利益を上げるためには、2000万円の売上を増やさなければならない。100万円の利益をあげるためには20倍の売上をあげなければならない。これが2%という企業も結構多いと思います。その場合は50倍の売上を挙げなければいけない。50倍ですから、5000万円売上を増やして初めて100万円の利益が残る。1000万なら10倍で、2億とか5億あげなければならない。管理会社を信頼し、おまかせで何も手をつけてないと、これ程の額が眠っているかもしれないということです。規模が大きければ、これ程は出ると思います。先程事例に挙げた会社は、とある施策に取り組んだ瞬間、あっという間に年間500万です。それも継続的な収入。空室率も解消すれば純利益ですから、もしかすると眠っている現金が皆様の不動産にもあるかもしれないということです。この現金はどこにあるかを考えるときに見ていくポイントが、「見せかけの対策」と「根を抑えた対策」の2つ。話題に出しましたが、「とりあえず費用を1割削減しろ」などということです。例えば管理会社に「維持費を1割下げろ」と言えば、下げるかもしれません。ですが管理会社も一生懸命行っていますので、どこかにしわ寄せが行く可能性がある。本来の適切な維持管理ができなくなり、後々それが響くことも考えられます。担当者・経営者は「とりあえず維持費を削減できたから良かった」と言うかもしれませんが、実際に中身がどの様に変化したかを理解していないと、一時的もしくは将来的にその施策が間違っていたことにもなります。なので、大事なのは「根を抑えた対策」。費用を下げる理由はどこにあるのか、現金を増やすには何処に目を付けるのかを理解して対策を打つ必要があります。そのためには、管理会社におまかせでは無理。オーナー自ら、不動産の賃貸事業はどういう仕組みでできているのか、現場では何が起きているのか、を理解していなければいけないのです。
千円違うと1000坪で年間1200万円の差
 また収入についてです。ビルからの収入は賃料、共益費、敷金や礼金、更新料等の一時金があります。その中で、まず目を付ける箇所は「賃料」。その賃料が本当にビルの稼げる賃料なのかという点です。坪2万円取れる場所で坪1万9000円しか取れていないと1000坪の場合、1000円差があるので毎月100万円、年間で1200万円の損失です。更に更新時は、その賃料1万9000円をベースに賃料交渉するか、2万円をベースに交渉するかテナントがいる限り継続して残っていきます。管理会社に委託して賃料交渉してもらい、買い手も交渉済んだ場合に、どうやってその賃料が妥当だと判断していますか?私が以前見た時は、単価100円玉1枚で真剣に交渉している担当者がいました。私もテナントの入居交渉を行ったことはありますが、行っていた当時は90年代半ばでビルの空室率も高かった頃なので大変でした。それに賃料改定では資料も色々検討したりして行っていました。私もオーナー側から相談を受けますが、「根拠がわからない」、「はっきりしない」、「比較対象のテナントビルが間違っているのでは」ということがあります。とある企業では、長期にわたり定点観測でビルを比較して調査し報告を受けたりしていました。私が資料を拝見し、かつ現地も見たところ「比較対象のビルが違いますよ」と指摘され入れ替えになりました。マーケットで比較されるビルと違うビルを比較してしまったのですね。それでは判断を間違えます。1万9000円ベースのテナントビルを持ってきて「1万9000円妥当ですよ」と指摘されるのと、現地行き対象のビルを見て、今の物件のマーケット需給を見て2万円が正しいビルとを比較するのか。それをしっかりと把握されていますか?もしかして「1万9000円で大丈夫です」と現地も行かず、ビルも知らないで判断されていませんか。1000円違うと、1000坪で100万円、年間1200万円の差になりますよと言いたいのです。現金で利益も違いますからね。そこに目を付けることも重要です。

PAGE TOPへ