不動産トピックス

クローズアップ 古民家活用編

2018.07.09 15:28

 古民家の活用が進んでいる。訪日観光客の増加で宿泊施設としての再生が多いなか、「働き方改革」と連動する動きもある。管理されていないことも多く、空き家問題の一角。ここに来て新しい活用法が出てきた。

くらつぐが鎌倉に古民家ホテルを2019年1月開業へ
住宅宿泊事業法で運用、レストランで収益を確保
 日本有数の観光地・鎌倉で古民家再生に挑むくらつぐ(神奈川県小田原市)。その第一弾として2019年1月に「鎌倉」駅から車で10分ほどの場所に立地する古民家をリノベーションして宿泊施設「鎌倉 古今」をオープンする。同宿泊施設は先月15日に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)上での運営となる。
 今回リノベーションを行った建物の竣工は安政2年(1855年)。日本が鎖国を解く原因となった黒船来航から2年後のこと。「古都・鎌倉」は言葉通り、このような歴史的建造物が多い。ただその一方でそれらの物件が空き家となり、管理が手つかず、活用もされていないという例も多い。加えて、住宅販売事業社がそれらの土地・物件を買い上げて分譲するために更地にしているケースも少なくない。
 代表取締役の松宮大輔氏は「このような古民家を再生し、宿泊施設をはじめとして活用していくことがくらつぐのミッションです」と話す。松宮氏を含む創業メンバーがこれまでの経験を生かしたノウハウを持ち寄る。  「今後葉山含めた鎌倉では10物件ほどの活用を行っていきたいと考えています。そのなかには宿泊施設はもちろんのこと、たとえばレストランや物販などの店舗としての活用も選択肢でしょう。立地との兼ね合いを検討しながら、展開スピードを早めていきたい」(松宮氏)
 一方で民泊新法下における宿泊施設運用で懸念となるのは営業日数が180日に制限されていることだ。民泊を運営していく上で最大のネックとなっている。「鎌倉 古今」に関しては「レストラン営業が収益を下支えする」(松宮氏)。もうひとつの柱を据えることで事業の採算性を確保する。
 鎌倉エリアはホテル不足が顕著なエリア。古民家の利活用に関しても「古くからの居住者が多く、売却や活用は周辺住民からの理解が欠かせない」(松宮氏)。
 手塩にかけた物件が来年1月にオープンする。鎌倉エリアでどれほどの実を得られるだろうか。外国人観光客の宿泊先の選択の変化と含めて、今後の動向に注目したい。

Agoop 輪島市初 古民家をサテライトオフィス化 働き方改革の一環
 ソフトバンクグループで位置情報を活用したビッグデータ事業を行うAgoop(東京都渋谷区)は石川県輪島市の古民家「能登平家の郷 松尾家」をサテライトオフィスとして活用し、発想力や思考力の向上を目指した働き方改革の実証実験を実施する。
 同社は2018年4月より輪島市にサテライトオフィスを開設。地方創生および働き方改革の実現を目指す。東京・渋谷の本社からチームやプロジェクトごとに入れ替わりで数週間泊まり込み、業務の生産性向上の検証を行う。同社では満員電車などの通勤ストレスの回避や、自然の癒しを感じることによる、新たなアイデア創出や思考力の向上に期待する。
 開発期間やプロジェクトの進行具合を従来と比較して、良好な結果が得られた場合、来年以降の輪島市での本格的な事務所開設を検討していくという。

バリューマネジメントとANAセールス低芸でパッケージ販売
古民家施設への集客を強化
 バリューマネジメント(大阪市北区)とANAセールス(東京都中央区)は今年3月よりバリューマネジメントが運営する「NIPPONIA」に宿泊する旅行商品をダイナミックパッケージ「旅作」にて販売している。  NIPPONIAは歴史性を尊重しながら各地に点在して、残されている古民家を客室や飲食店、または店舗としてリノベーションを行い、その土地の文化や歴史を実感できる複合宿泊施設として再生し、「非日常空間」を提供している。 
 ANAセールスは国内最大のネットワークを持つANAの航空券付き旅行商品を活用し、バリューマネジメントとともにより多くの顧客へのその土地ならではの文化・食を体験できる地域の魅力を提供していく。

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