不動産トピックス

今週の一冊

2018.06.11 16:22

浮浪者や孤児を主要したのは第一級の水上の芸術品

ル・コルビュジエの浮かぶ建築
著者:ミシェル・カンタル・デュパール(古賀順子/訳)
出版:2018年1月25日
発行:鹿島出版会
価格:2200円(税別)

 「近代建築五原則」を提唱したという著名建築家ル・コルビュジエ。自らの建築理論を実践したという建築物「アジール・フロッタン(浮かぶ避難所)」は元は「ルイーズ・カトリーヌ号」として製造された鉄筋コンクリート製の平底船だ。第一次世界大戦中、鉄と石炭が極度に不足し、原料補給のためにロンドンとパリを結ぶため数多くの船が造られた。そのうちの一つで造られた「ルイーズ・カトリーヌ号」は戦後、売りに出された。購入したのは慈善団体「救世軍」、見つけたのは2人の女性だ。 その後コルビュジエが改修することになった。浮浪者を収容し、恵まれない子供たちのバカンス場となった。だがどこまでも数奇な運命なのか、またも売りに出され、そして今も新所有者の元で再生中だ。長い物語を読んでいるようだ。
 今年はパリの「コルビュジエ財団」の創立50周年に当たるという。先月25日付日経新聞文化面には本書監修の建築家・遠藤秀平氏による寄稿が寄せられていたが、ちょうど今月行われる財団の式典へ出向き、「日本からの再生への思いを熱く訴えるつもりでいる」とのことだ。今後の再生の便りが待ち遠しい。

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