不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2018.04.09 13:10

東急電鉄グループのホテル事業が活発化 渋谷駅再開発に合わせて「エクセルホテル」が出店
大規模複合施設内に2018年秋開業へ
 東京急行電鉄(以下、東急電鉄、東京都渋谷区)グループのホテル事業が活発化している。同社は、東横線隣接エリアの権利者と、大規模複合施設「渋谷ストリーム」の建設を進めているが、このほど同施設で、東急ホテルズ(同)が運営するホテル名称を、「渋谷ストリームエクセルホテル東急」に決定したことを発表した。開業は2018年秋の予定。
 同ホテルのコンセプトは、「渋谷から世界へ 感性を刺激するホテル~THE SHIBUYA SENSIBILITY~」。4階エリアは、ロビーラウンジ・レストラン・バーが一体的につながる設計。ゲストルームは、「ヴィンテージモダン」を表現した独創的なデザインと機能性を組み合わせた新しい客室空間を提供することで、「国内外から訪れる人々や渋谷に集うクリエイティブワーカーの感性を刺激し、『心おどる非日常への扉』を感じていただけるホテルを目指します」(同社)。
 渋谷エリアは、国内有数の観光地・ビジネス拠点であり、東急ホテルズが運営する渋谷エリア3ホテルの客室稼働率が90%を超えるなど、宿泊需要が非常に高いエリアにも関わらず、宿泊施設が不足している。また渋谷エリアはオフィス床が不足しており、これを克服するべく、同施設や、2019年度に開業予定の渋谷スクランブルスクエア東棟など、さまざまなオフィス供給が進んでいく。今回の新築ホテルは、本施設の9~13階に177室の客室を備え、今後もますます増える渋谷エリアへの観光客やビジネス客の利便性を向上させるとともに、宿泊ゲストに居心地のいいホスピタリティを提供していく考えだ。
「セルリアンタワー」エグゼクティブフロア
 同じ渋谷エリアでのフラッグシップホテルであるセルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)は「エグゼクティブフロア」宿泊者のための専用サロン「エグゼクティブサロン」の改装工事を実施、4月1日より「エグゼクティブラウンジ」としてサービスを開始する。
 35階フロア217㎡として約34㎡拡張。14席増設の50席、総工費は約9500万円。「デザインは、ホテル開業時のコンセプト『選択・伝統・創造』を踏襲し、未来の『SHIBUYA』にふさわしい『新創造』をテーマといたしました。モダンデザインに日本の美意識を重ね合わせ、流行のカラースキームを随所に取り入れた上質なデザインで統一いたしました」(同社)。
 具体的には、フロアの拡張のほか、無煙グリルやブッフェカウンターを新設し、時間帯ごとのフード・ビバレージサービスの拡充を図る。朝食にはシェフも登場し、焼きたてのオムレツを提供する。
 また、ラウンジのエントランス部分の壁をなくし、エレベーターホールを降りた瞬間にひろがる開放感を演出。更に、1枚ものの天然板を使用したレセプションデスクを新設した。レセプションエリア、ダイニングエリア、ラウンジエリアを明確に分け、1名用のカウンターテーブルや、大きめのラウンジスペースを新設。「お食事を楽しむ時」「寛ぎ語らう時」「情報提供やサポートを必要とする時」を明確化した。
 インテリアデザインは、モダンに和のテイストをバランスよく交差させた「モダン×ジャパニーズ」のインテリアで統一。「五島美術館」所蔵の絵巻からイメージを膨らませオリジナルで作成したカーペットを採用。雲海に差し込む光を金糸で、雲の間に覗かせる青い空色をセルリアンブルーの糸で表現、窓からの自然光や照明によって様々な表情を見せてくれるのが特長だ。省エネルギーを考慮し、照明にはLEDを採用している。
赤坂では外国人強化 フィットネス室新設
 また、赤坂エクセルホテル東急(東京都千代田区)では、4月1日よりホテル1階に、宿泊者が滞在中に無料で利用できるフィットネスルームを新設する。
 長期の宿泊や高い客室単価が見込めるインバウンド需要が見込まれる昨今、同ホテルでは2020年までに、外国人比率を50%に高めたいとの目標を掲げている。 
 現在、外国人旅行者やビジネスマンがホテルを選定する際、「フィットネスルームの有無」は大きな要素の一つとされている。同ホテルへの予約段階でもフィットネスルームに関する問い合わせは常にあり、これまでは有料近隣施設を紹介してきたが、一旦外出しなければならず、休館日などの不便もあった。今回の新設により、それらを解消し、訪日外国人の志向や要望に沿えるものと期待している。
 また、同ホテルはランニングスポットとして人気の、皇居外周路まで約1kmにある。フィットネスルームにはランニングマシーンも設置するため、滞在中のトレーニングや皇居ラン前のウォーミングアップでの需要も期待している。
宮古島リゾートでは40室リニューアル
 リゾートエリアに目を向けてみると、宮古島 東急ホテル&リゾーツ(沖縄県宮古島市)は、訪日外国人やファミリー層の需要拡大を見据えたオーシャンウィング棟2フロア40室をリニューアルした。
昨年11月より進めてきたもの。オーシャンウィング総フロア客室数6フロア150室のうち、2フロア40室を行った。総工費は約7560万円、設計・施工は東急リニューアルが担当した。
 改装デザインのコンセプトについて同社はこう話す。「ホテル開業から、お客様には宮古島ならではのリゾートを感じていただくことを第一とし、館内の内装や建物の造りには、琉球石灰岩や赤瓦、ぬくもりのある木材など、島ならではの素材を使用してきました。今回の改装では、天井、壁面の壁紙、床、畳を一新しましたが、琉球<宮古島>の要素とモダンデザインを随所に取り入れました。また、カラースキームは、デザインテーマ『PANA(花)』を感じていただける色柄をセレクト。シンプルで洗練された色調ながらも、あたたかみのある印象を基調としています」。
2階の和洋室は、老年層から乳幼児連れまで、快適に過ごしてもらえるよう、畳の小上がりスペースはそのままに、家族の団欒をテーマに内装を改めた。 一方1階の客室は、客室奥のスペースにあった畳を外し、大型のソファや、テーブル、いすを配置。家族での利用だけでなく2名からでも快適に過ごせるスペースを設置した。エキストラベッドを追加することによって、最大で大人5名まで宿泊することができる。
空家を再生し宿泊施設へ
 住宅リノベーションを手がけるクジラ(大阪府大阪市)は、「SEKAI HOTEL(セカイホテル)」事業を、大阪府東大阪市の布施エリアに展開する。
 同事業は、地域にある空き家を宿泊施設として再生利用し街ごとホテル化することで、空き家問題を解決し地域活性化を目指していくもの。オープンは2018年夏を予定。  「布施」駅前には戦前から続く商店街があり、現在17の商店会によって形成されている。しかし人口減少と後継者不足、大型店舗の増加などの影響を受け、店舗数・利用者数ともに減少しているのが現状だ。
 一方では、交通の便として大阪の中心街である、なんばまで10分、奈良や京都への鉄道、バスの直行便があるなど交通の利便性が高い。加えて2019年にはラグビーワールドカップが東大阪で開催されるなど、観光のポテンシャルに富む地域なのだという。
   「SEKAI HOTEL布施」では、商店街、商店街の周りにある人々の暮らしそのものをコンテンツとして発信することで、外国人観光客が日本人の「日常」を体感できる場を創り出していく。
 具体的には、「布施」駅前の商店街の複数の物件を宿泊施設として再生利用する。日本を代表する「ものづくりの街」、「町工場の街」として知られる同エリアにちなみ、宿泊施設のコンセプトは「工場に泊まる」とし、トタン板などを内装として活用していく。 
 このプロジェクトでは、一般にホテル事業が持つ「フロント」や「宿泊設備」、「物販」、「アクティビティ」などの機能を1つの大規模な建物の中に収めるのではなく、点在する空き家を再生利用しながら、街全体を大きなホテルと見立てて開発する。

沖縄UDSが新築プロジェクト
 沖縄UDS(沖縄県那覇市)では、日建ハウジングとケネディクスとの共同出資による特定目的会社と共同開発する「(仮称)美栄橋駅前ホテル」を、那覇市「美栄橋」駅前に開業する。2018年4月に着工し、2020年初旬の開業を予定している。
 同ホテルは、敷地面積2749・26㎡、延床面積8053・91㎡、鉄筋コンクリート造、地上15階建て、予定客室数約220室、予定付帯施設はレストラン、バー、プール、フィットネスなど。
 「(仮称)美栄橋駅前ホテル」は沖縄都市モノレール「美栄橋」駅前の新築ホテルプロジェクト。「都市型アーバンリゾート」をコンセプトに、別棟レストランやルーフトップバー、プールも備えたホテルとして計画している。 
 同ホテルは不動産証券化スキームを用いたホテル開発プロジェクトで、ケネディクスと日建ハウジングの共同出資によるKRF65特定目的会社を事業主として、企画・設計・運営を沖縄UDSとUDSが行っていく。
 沖縄UDSはまちづくりにつながる「事業企画」、「建築設計」、「店舗運営」を行うUDSの100%出資子会社として2016年10月に設立された。2018年1月に開業した「HOTLE LOCUS」を皮切りに、沖縄各地で複数のホテル・リゾート施設の開業を進めている。
 一方、ケネディクスは1995年に設立され、その後不動産アセットマネジメント事業へ本格参入し、先進的な投資手法や金融手法を活用し、事業を展開してきた。

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