不動産トピックス

今週の一冊

2018.03.26 17:13

西洋と日本の価値観の違い

時が作る建築 リノベーションの西洋建築史
著者:加藤耕一
出版:2017年4月21日
発行:東京大学出版会
価格:3600円(税別)

空き家問題が叫ばれて久しいが、日本ではいつから空き家は粗大ゴミになったのだろうか。空き家でなくとも35年のローンを払い終わった家屋は支払った分の価値はないどころか、その家屋が建つ土地は住宅付きよりも更地の方が高く売れる現状だ。よく考えればおかしな話ではないか。欧米と日本の中古住宅に対する感覚の違いに疑問を持った著者の試みが本書である。「日本人の建築観、価値観に対する挑戦」だという。
 「20世紀の日本に特有の異常な価値観」という視点には驚かされる。まさに身に覚えがあるからだ。欧米では古い住宅が高値で取引されるのに日本では古い家屋は厄介者扱い。それは建築そのものの問題ではなく価値観の問題、20世紀の日本が近代化した後の価値観との差と言い当てる。
 本書で語られる西洋のリノベーションの歴史は古く深い。例えばフランス革命では修道院から監獄へ破壊があり転用があり、「建物を別の時代の状態へ戻す」手法もあり、西洋と日本の感覚の違いにただ驚くばかりだ。現在の我々のリノベーション手法を再考すべきときかもしれない。

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