不動産トピックス

クローズアップ スペース活用編

2017.12.04 17:50

「シェアリングエコノミー」という言葉が登場し、スペースを有効に活用して収益の源泉とするビジネスモデルが続々と生まれている。その背景には「働き方改革」やライフスタイルの変化があるようだ。不動産を無駄なく最大限活用するためにも、今回紹介する企業が展開するビジネスに注目して頂きたい。

スペイシー 1時間あたり50円の貸会議室サービス 飲食店舗のアイドルタイムを活用
 貸会議室・レンタルスペースの予約サイト「スペイシー」を運営するスペイシー(東京都中央区)は、飲食店舗のアイドルタイム(営業外の時間帯)を活用し月額で利用することのできるワークスペースを、11月20日に東京・渋谷で5店舗オープンした。
 外回りの多い営業職のビジネスマンや事務所を持たないノマドワーカーにとって、仕事や休憩場所として広く利用されているのがカフェである。このビジネスモデルは、バーなど日中は営業していない飲食店舗を借り上げ、カフェと同様に落ち着いた空間で仕事のできるスペースを月額会員に割安で提供するというもの。一般的なカフェでは電源やWi-Fiの無料サービスを提供している店舗もあるが、毎日利用し続ければ飲食費がかさんでしまう。同社がオープンした飲食店舗のアイドルタイムを活用してのワークスペースは、4時間プランの場合で月額料金200円(税別)の従量課金制となっており、1時間あたりの利用料金は50円という破格の値段である。月額プランはこのほか、10時間で500円、40時間で1980円、使い放題で3980円(いずれも税別)があり、利用頻度に応じて自動的にプランが切り替わる。
 今回渋谷にオープンした5店舗は、いずれも道玄坂など「渋谷」駅徒歩数分圏内の好立地。利用に際してはスマートフォンなどのモバイル端末で取得したQRコードを店舗内に設置されたタブレット端末にかざせば、入室・退室の時間が記録される。同社代表取締役の内田圭祐氏は「入退室の記録管理の効率化を目的に、顔認証システムを採用しています。会員登録時に記録した顔認証で、入退室をスムーズに行えるようになりました」と話す。同社では渋谷での5店舗オープンを皮切りに、12月は新宿・新橋においてもオープン予定で、都心のターミナル駅周辺や企業が集積するビジネス街の路面店を中心に1年後には50カ所、50万人の利用を目指している。
 内田氏は「貸会議室の需要は高いものの、口コミなどで評判が広まることは少なく、認知を広げる余地は十分にあると考えています。飲食店舗にとっては営業時間外で遊休化した空間を有効に活用して頂き、利用者に対しては日常的に利用したいワークスペースを割安で提供することで、貸会議室がより身近な存在であることを認識して頂けたらと思います」と話す。貸会議室をよりポピュラーな存在へと押し上げるのが同社の狙いだ。


東電用地 建物の付加価値向上に新アイディア 利用者・宅配業者双方にメリットの宅配ロッカー設置
 東電用地(東京都荒川区)は、東電不動産及び尾瀬林業の電力設備用地の管理・取得業務を統合し、2008年に設立された東京電力グループの一員である。電力の安定供給を根幹の部分から支えてきたノウハウを生かし、同社では土地取得に係る交渉や手続き、取得後の管理・フォローに至る業務をワンストップで提供。インフラ開発の現場でも同社が用地コンサルタントとして、ノウハウを生かしているそうだ。
 また、近年同社が注力しているのは宅配便ロッカーの設置に関する提案である。近年は宅配業界の労務環境が問題視されているが、この問題の解消や消費者の利便性向上に寄与する施策として、駅やスーパーマーケットといった公共性の高い施設に宅配ロッカーを設置する動きが活発化している。中でも設置数が多いのはヤマト運輸とフランスのネオポストシッピング社が共同出資して昨年設立されたパックシティジャパン(東京都千代田区)が運営する宅配便ロッカー「PUDO(プドー)ステーション」である。東電用地はパックシティジャパンと提携し用地業務でのノウハウを生かした「PUDOステーション」の設置提案を行っているのだ。
 「PUDOステーション」はヤマト運輸を含むどの宅配業者でも使用可能な宅配便ロッカー(一部ヤマト運輸以外の利用が出来ない箇所あり)で、先月末時点での設置台数は首都圏を中心に約1300台。2018年3月末までに3000台の設置を目標に掲げている。消費者にとって、いつでも好きな場所で荷物を受け取れるというのがメリット。一方、宅配業者にとっても送り先の不在による業務ロスの低減など、業務の効率化に大きく貢献する。東電用地の事業開発・用地コンサルティンググループで「PUDOステーション」の設置提案を担当する矢板俊彦氏は「宅配業者の業務効率化を実現することで、トラックの運用が減りCO2削減にも効果が持てます」と、宅配便ロッカー設置のメリットを語る。
 同社が「PUDOステーション」の設置提案を行っているのは、東京・神奈川の全域をはじめとする首都圏エリアで、設置場所を提供する側の費用負担はなく設置に必要なのは家庭用100V電源(アース付)1カ所のみである。ロッカーのサイズは屋内型・屋外型で若干異なるものの、高さ・幅は200cm強、奥行きは約65cmで、飲料の自動販売機とほぼ同じサイズである。設置場所の提供者にとって自動販売機は大きな収入源となり得るが、「PUDO(プドー)ステーション」は、設置場所の利便性と付加価値向上につながるサービス及びCO2削減につながる環境問題への取り組みであるとイメージして頂きたいと思います」(矢板氏)
 金銭的なメリットを享受することは難しそうであるが、建物内で宅配ロッカーを設置すれば施設利用者はもちろんのこと、周辺の住民にとっても有益な存在となることは間違いない。矢板氏は「建物の付加価値向上を目的に、不動産オーナーに設置を提案していきたい。設置を検討される際には、当社までお問い合わせ下さい」と述べており、建物利用者の更なる満足度向上に「PUDOステーション」の設置は一考の余地がありそうだ。

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