不動産トピックス

クローズアップ VR編

2017.06.12 17:18

 映画やゲームの世界をはじめ、VR(バーチャルリアリティ:仮想現実)の技術を活用したコンテンツが急速に普及している。不動産業界においてもVRを用いたサービスが続々登場。利用者の利便性は高まっている。

アスネット 不動産関連業界向けに「360PRO」好評の「2DKプラン」は月額1万円から
 不動産業界においてVRの活用可能性は高い。賃貸不動産の仲介事業者やオーナーなどが所有の不動産・施設を紹介する際、VRを活用することで見込み客に対しより効果的な訴求が可能となる。
 一方でこれまでVRは活用したくても「高嶺の花」というのが実情だった。大手事業者や広告代理店が制作するようなPR性に富んだVRは制作費用だけで100万円以上になることもしばしば。この価格帯がVR活用の裾野が広がらない要因としても大きかった。
 そのなかでVRサービス「360PRO」を展開しているアスネット(東京都新宿区)が今年より新たなプランとして用意したのが「2DKプラン」だ。2DKタイプの部屋をVRで紹介する、という意味で名付けられたこのプランの最大の魅力は月額1万円からのサービス提供が可能というもの。このプランを開始した経緯についてITBS事業部360PRO担当の松浦輝尚氏は次のように話す。
 「『360PRO』のサービスは2015年1月よりスタートし、当社でも大手商業施設や広告代理店から多くご利用いただいてきました。この当時より不動産業界関係者の方から興味・関心を引いてきましたが、その一方で費用が捻出できない、コストが高い、との声も頂いてきました。この間、当社としても高価格帯で事業を展開していくか、より裾野を広めるために低価格帯プランを開始するかで検討をしてきましたが、『より多くの需要に応えていくことがVR市場の広まり、当社の事業機会の拡大につながる』と考え、今年より『2DKプラン』をスタートしました」
 同社のVR制作はプロのカメラマンとオーサリング担当者が施設を訪問し写真撮影を行い、制作にうつる。低価格プランではしばしば「画像素材は注文者側から提供する」というものも多い。松浦氏は「ここが360PROのポイントになっている」と言い、次のように続ける。
 「VR制作向きのカメラが販売され、手軽にVRが制作できるようになった一方で、VR制作の画像素材には通常の写真撮影とは異なる技術が要求されます。たとえば施設内のどの部分が重要なのか、そしてその箇所は本当にVRで表現することが適切なのかなどを吟味し、撮影しなければなりません。一例を話しますと、あるクライアントから『建物の外観をVR制作してほしい』という要望がありました。が、私たちは『VRに向かない』と判断しVR内にスチール写真を表示することで対応しました。VRは360度見ることができる性質上、建物の外観を写すと、他の建物もそのVR内に写り込んでしまいます。また部屋の紹介に関しても、撮影の仕方や見せ方によって機材は同じでも大きく変化してくるのがVRの難しいところだと思います」
 プラン開始から半年ほどが経過しようとしているが引き合いは多いという。「不動産事業者はもちろんですが、民泊や介護老人ホーム、シェアハウスなど幅広く引き合いを頂いている」と松浦氏。月額1万円、契約期間は最低3年となるが「最低でも合計36万円となると、広告費用として決済しやすいようです」と人気の意外な側面も明かす。
 今後、急速に普及していくことが見込まれるVR。商業利用の速度も速まるが、当然ながら品質の確保が要求される。VRでも品質が劣れば、逆宣伝となりかねない。不動産の新しいリーシングツールとして、コスト面と品質のバランスを確保したいものだ。

エフマイナー 遠隔地でも現地内見と同じ感覚で物件を見学 スマホ操作で誰でも簡単に編集可能
 賃貸マンションや賃貸オフィスの入居先を探す際、まずは豊富な情報量を持つ仲介業者に条件等を相談し、条件に見合った物件を紹介してもらうというのが一般的である。仲介業者は候補物件を抽出し、クライアントに対して現地での内見を案内するが、物件が遠方である場合など、必ずしもクライアントが現地を訪れることができるとは限らない。従来は現地で撮影した写真や映像が入居の可否を判断する要素となっていたが、撮影者の意図とクライアントの希望が一致するとは限らず、求める情報が得られないこともあった。エフマイナー(東京都渋谷区)では、遠隔地からでも現地で内見をしているような感覚を再現するためにVRに着目。360度撮影した画像を用いて、あたかも現地を訪れたような状況をスマートフォンの画面上で再現できるシステム「3D Stylee」を開発した。
 「当社はギャラリーの運営や美術作品をオンライン上で購入できるサービスなど、アート関連の業務を行っています。その中で、より多くの方にアートを楽しんで頂くための手段として『3D Stylee』を開発しました」(代表取締役 森田 博和氏)
 「3D Stylee」は、市販されている360度カメラを用いて室内を撮影。画面上に表示される室内の画像は、実際の動きに合わせて変化する。例えば、スマートフォンを頭上にかざせば、画面上では室内の天井部分が表示される。森田氏は「マニュアル不要でスマートフォンでも操作が可能、リーズナブルな価格に強みがあります」と自信を見せる。VR技術の活用によって不動産仲介のサービスメニューの幅が広がると同時に、業務効率化への貢献も期待できる。同社の導入試験では成約率の向上にもつながっているとのことだ。

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