不動産トピックス

第2回ビル経営アワードノミネート物件紹介

2016.09.19 14:16

ノミネートNo.17
丼池繊維会館
丼池繊維会館

所在地:大阪市中央区久太郎町3-1-16
延床面積:638㎡
規模:地上3階地下1階
竣工:大正11年
所有者:丼池繊維会館


 「丼池繊維会館」は大阪の繊維問屋街として知られる丼池筋の一角に立地する大正11年竣工のレトロビル。元々は銀行の店舗として建てられたが後に地域の人々に買い取られ、地域サロンやテナントビルとして利用されてきた。タイル張りで水平ラインを強調する外観は今でこそレトロビルとしての特長とされているが、以前はさほど評価されず平成9年には鋼製のサイディングがなされて独特の外観は損なわれてしまっていた。しかし近年、近代建築の価値が見直されるようになってきたことから同ビルも再評価されるようになり、「近代建築に興味のある人からは『このビルはいつ再生されるのか』という声が寄せられていました」と代表取締役の木戸一夫氏は改修(今年3月完了)前を振り返る。そうした声が寄せられる中で、地域の資産である「丼池繊維会館」を有効活用し、多くの人が集まる建物とすることで丼池筋の地域活性化に役立てようという視点から同ビルのリノベーションが決定された。
 リノベーションにあたっては複数の設計会社より寄せられた改修案の中から、大阪を中心に既存不動産の再生を多く手掛けるマットシティ(大阪市中央区)のプランが採用された。改修によってサイディングは外され、失われていたタイル張りの外観を取り戻した。内装も天井や壁などを取り外し時代ごとに施された手業の表情をできるだけ残すようにされている。その一方で「ありのままを認める」というコンセプトのもと、昔の姿に戻していくだけではなくビルの経てきた歴史を踏まえ、あえて改修の痕跡が残るようなデザインも取り入れられている。
 また、マットシティ代表取締役の末村巧氏の「2nd cycle」という考えのもと、ビル内にはかつて他のレトロモダン建築で使われていたプロダクトが取り入れられており、2階ホールのキャビネットの建具は塩野義製薬研究所の研究室に設けられていた天袋の建具が使われている。


ノミネートNo.18
東洋リンクス
朝日ビル

所在地:東京都千代田区平河町1-2-2
延床面積:1320㎡
規模:地上7階地下1階
竣工:昭和60年
所有者:東洋リンクス

 東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅から徒歩1分の好立地に建つ「朝日ビル」では、昨年外壁のリニューアル工事を実施した。「朝日ビル」を所有・管理する東洋リンクス(東京都千代田区)では、定期的に内装や設備機器の更新を行っており、日々のメンテナンス業務も注力する。今回の外壁のリニューアルは、劣化部分の解消や資産価値向上、意匠性アップを図るため実施した。
 主な工事内容は、外壁の色の塗り直しやコーティング剤の塗布、劣化部分の解消などである。外壁の塗り直しでは、色が落ちかかっていた従来の赤茶色の外壁をさらに濃く塗り直し、コーティング剤を塗布することで綺麗な仕上がりを実現した。不動産管理担当の武田太郎氏は「築年数が30年以上経過しているビルなので、水漏れ等々が発生しないように入念に防水対策を施しました。意匠性・見栄えも向上したので、以前よりビルのイメージも良くなったと思われます」と語る。その他の改修では、エントランスの一部や給水ポンプの更新、4階のトイレブースと給湯室の改善などを実施し、最新の温水洗浄便座を導入した個室トイレも利用可能となった。また1階の駐車場を月極め駐輪場に改修した点も特長。元々、1階はテナント向けの駐車スペースであった。しかし、自転車のニーズの高まりから駐車場を駐輪場へと改修。現在は57台の駐輪設備を備えており、テナントだけでなく周辺住民もよく利用している。周辺地域では、ここ数年マンションの新築工事が盛んに行われており、自転車の普及率も急速に増加している。しかし、敷地面積の問題からか駐輪スペースが狭く、マンションの住民全員が置けないケースも見られる。
 武田氏は「周辺住民が当ビルの月極め駐輪場を利用する経緯にその様な背景があり、ちょうど住民のニーズに応えた内容となりました。非常に利用率が高く、空きはむしろほとんど見られません」と語る。

〇改修ポイント
 意匠性と見栄えを改善しつつ防水対策も整えた外壁リニューアル。また、テナントと周辺住民のニーズに応えた月極め駐輪の導入。

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