不動産トピックス

クローズアップ 天井落下防止編

2015.07.27 12:21

 躯体の耐震性も重要だが、頭上にも注意。東日本大震災によって顕在化した天井落下による危険性。天井落下防止を進める動きは法改正を経てさらに加速することになる。今回は天井落下を防ぐために開発された技術力の結晶を紹介する。

大建工業 在来天井とシステム天井の長所を備えた耐震天井 20~30%の施工手間を削減

 東日本大震災発生時における建築物の天井落下の件数は2000件以上といわれる中、問題になったのが吊り天井の落下。その中でも在来天井が落下件数の約80%を占めるとされ「天井の耐震化が必要」との認識が広まったのである。これに対して国土交通省は平成26年4月に建築基準法を一部改正し、天井の脱落防止に関する新告示を施行した。脱落によって重大な危害を生じる恐れがある特定天井に対して新たに耐震化の基準が定められたのである。
 これに対して、建築部材メーカーの大建工業(大阪市北区)は吊り天井でありながら耐震性の高い新たな天井工法「ダイケンハイブリッド天井」を開発。地震に強い吊り天井の「耐震天井」として早くも注目されている。
 「在来天井とシステム天井の長所を兼ね備えたのがダイケンハイブリッド天井です。在来天井の仕上げ材選定の自由度とシステム天井の格子組による高い剛性を融合させることが出来ました」(市場開発部 エコ課 課長 川井 一哉氏)
 吊りハンガーで上階の躯体からつるしたメインバーに、クロスバーを両側から差し込んで格子を形成。これを天井仕上げ材の張り付け下地とし、さらに天井仕上げ材として同社が発売しているロックウール吸音板「ダイロートン」等を直張りする。システム天井のように格子が強固にかみ合い、天井下地が変形しにくくなることで、既存在来天井に比べて大幅に耐震性が向上するのである。
 「在来天井にて耐震化を行うには、施工時の手間が増え、部材点数も多くなります。ダイケンハイブリッド天井は、耐震化した在来天井の場合と比較して、20~30%程度の施工手間削減を想定しております。また、石膏ボードよりも軽い『ダイロートン』を天井仕上げ材として直張りすることで天井材の軽量化が図れ、万が一の天井落下においても人命に対する危険性を低く抑えることができるのです」(川井氏)
 格子形状による揺れに強い天井下地とあわせて、天井材の軽量化も実現。地震に対する二重の安全性を講じているのがダイケンハイブリット天井の特徴だ。


日栄インテック 耐震天井とは一線を画す「最後の砦」簡単施工の天井落下防止システム
 天井の耐震化を実現する製品は多数存在するが、その多くが天井自体の耐震性を向上させることに注力している。仮に耐震性能を超える災害が発生したらどうなるか。抜本的な解決策とはいえないのだ。
 これに対して日栄インテック(東京都荒川区)が提案する天井落下防止システム「N―Safe」は既存の耐震設備を補完することに主眼を置いており、東日本大震災以降、多くのメーカーが提案する「耐震天井」とは一線を画す。耐震営業部の澤田晴由氏によると「当社の天井落下防止システムは装置やシステムには必ず故障することを前提に何らかの対策を施す『フェイルセーフ』という思想に基づき、天井の落下そのものを防ぐ」と説明する。つまり、耐震化した天井が落下するような大災害が発生した場合でも一時的に天井落下を防ぎ、避難経路を確保することができるのである。天井落下防止システムを追加設置することで落下の危険性を大幅に減らすことを可能にした。
 「N―Safe」は既存の天井ボードの下から穴を開けて「支持材ユニット」を設置。アルミレールで天井を支えることで天井落下を防ぐ仕組みだ。既存吊りボルトを利用しないので引き抜けや破損の心配はない。さらに既存天井をそのままに工事を行うため、テナントや入居者の居ながら施工が可能になる。工事に伴う足場組立や天井解体、ボードの張り替えが不要で、一般的な天井の落下防止工事に比べて工期を最大3分の1まで短縮でき、施工コストも2分の1~3分の1程度削減できるという。
 また「N―Safe」は天井面にアルミレールが視認でき、賃貸オフィス等では意匠性の観点から嫌がられることもある。さらにアンカーボルトの打ち込みが困難なケースもあり、そうした場合天井裏側から天井ボードをワイヤーで固定する天井落下防止金具「BBカチットワイヤー」が効果的だ。天井の状況に応じて2つの天井落下防止システムを使い分けることができるのも魅力だ。
ABC商会 軽い「膜材」で落下被害を最小限に
 天井落下を防ぐのではなく、天井落下の被害を最小限に食い止めるための新技術として注目を集めているのが「膜天井」である。石膏ボード等を用いる既存の天井材は硬く重いため、地震動によって天井材が柱や壁に衝突したり、落下する危険性が高い。一方、膜天井は軽量な布等の膜材を天井材として使用するため、地震が発生しても建物躯体を傷める危険性は少なく、なりより落下しても人や物に与えるダメージを最小限にとどめることができるのである。また、安全性だけでなく、薄く柔らかい膜材は室内の意匠性向上にも寄与し、採光性も非常に高い。現在は大型建物・ホールといった大規模建築物の天井落下対策として採用されるケースが多いという。
 建築部材を多数取り扱うABC商会(東京都千代田区)はガラスクロスを樹脂コーティングした軽量な「膜」で構成された膜天井システム「マクモ」を展開している。平成26年4月1日より施行された「建築物における天井脱落対策に係る技術基準」によって「構造耐力上安全な天井の構造方法」が策定。天井の安全性への関心が高まっている中、軽量で安全な素材の天井仕上材として同製品が注目されている。
 主材がガラスクロスを樹脂コーティングした約0・5kg/㎡の膜材で構成されているため、非常に軽い。仮に落下しても、被害を最小限に抑えることができるという。また、従前まで現場ごとの特注仕様や特殊施工技術が必要だった膜天井を規格化することで現場にて確実に設置することが可能になった。

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