不動産トピックス

クローズアップ 緑化編

2015.05.25 16:26

 都市のヒートアイランド現象に抑制効果を発揮する屋上・壁面を活用した建築緑化。こうした取り組みは環境配慮という側面だけではなく、建物利用者への快適性や憩いの提供というメリットも考えられる。導入後の手入れが以前に比べて簡便な緑化システムも増えており、導入のハードルは低くなっているようだ。

緑化計画研究所 メンテナンスフリーの常緑キリンソウ緑化システム
 屋上緑化ではセダムが一般的に採用されることが多いのだが、こまめなメンテナンスが必要であり、オーナー側の負担となる場合がある。緑化計画研究所(横浜市西区)が開発した屋上緑化システム「常緑キリンソウ袋方式」は、雨水があたる場所であれば全国どのような条件下でも生育が可能なシステムだ。「常緑キリンソウ」は品種改良によって開発され、種苗登録を受けた常緑のキリンソウで、鳥取県の植物生産会社・フジタパラダイスパークが生産を行っている。そこに、元々土木関連の業務を得意とする鳥取県の田中緑化研究所、建築設計業務を出発点とする同社が協力。独自に開発された500mm四方の「FTMバッグ」に専用土壌を入れ「常緑キリンソウ」の苗を植えた後にファスナーを閉じるので、風などで土壌が流出することを防ぎ、また、雑草の繁殖も防ぐ。
 「従来の屋上緑化システムでは建物の荷重制限や、風による土壌の飛散、雑草等のメンテナンス、かん水システムを導入することによるコストの増大といった問題点がありました。『常緑キリンソウ袋方式』は30mm~50mmの薄層土壌による緑化で、1㎡あたりの荷重は40kgと非常に軽量という点が大きな特徴です(代表取締役 松本 功氏)
 「常緑キリンソウ」はかん水システムによる水やりを必要とせず、雨水だけで生育することができるため、イニシャルコストやメンテナンスコストの大幅な削減に寄与。また室内の断熱効果にも期待でき、ある学校施設で夏場に実施した実験によると、緑化した屋上面のコンクリート温度は一日を通してほとんど変化がなく、屋上を緑化していない教室と緑化した教室では3度ほどの温度差が生じることが実証されている。


東邦レオ 屋上空間を活用し憩いのスペースに 従来工法に比べ約2割の低コスト化を実現
 屋上緑化システムの開発・販売を行う東邦レオ(大阪市中央区)は、都市部のオフィスビルや集合住宅などを対象に、ビジネスや生活シーンに「ひと時のくつろぎ」を提供することで自社の福利厚生や他施設との差別化を生み出す屋上ラウンジ導入パッケージ「ソラミエ」を開発。今年2月より首都圏・中部圏・関西圏・九州圏で発売を行っている。
 平成13年に東京都が実施した、一定規模以上の建物の新築・増築時に屋上緑化を義務付ける条例が契機となり、全国へと広がった屋上緑化市場。国土交通省の調査ではこの14年間で383ha以上の屋上が緑化されている。同社ではこれまで子会社が木造住宅においてデザイン性の高い資材を一括購入することで、低コストでの調達が可能な「屋上リビング」を4000棟以上導入しており、「ソラミエ」はこれらのノウハウを法人施設に応用するものだ。「ソラミエ」は自立式の日除けやバーカウンターなどの屋外でも利用可能な家具、床デッキ、軽量緑化システムなど、約30種類の装飾アイテムをコーディネートすることが可能な屋上ラウンジ導入パッケージ。導入にあたっては顧客の空間活用イメージをもとに、過去15年にわたり屋上デザインに携わってきたプランナーがプランニングをサポートする。価格は、開放感を味わえるリフレッシュスペースをイメージした23㎡の屋上ラウンジで160万円(税別)から。同社が従来提供してきたフルオーダー型の屋上ガーデン工事に比べ2割安の低コスト化を実現するとしている。


サスティナビリティ創造研究学会 緑化事例が豊富な東京・銀座 各施設をめぐるエコツアーを開催
 NPO法人サスティナビリティ創造研究学会(東京都港区)の専門部会である「サスティナブル・コミュニケーション部会」は7月22日(水)、屋上緑化をテーマにした「銀座 エコツアー」を開催する。
 都市部には、著しい平均気温の上昇や人工排熱、緑地の減少によりヒートアイランド現象といった問題が生じている。東京都では、ある一定の大規模ビルに屋上・壁面緑化を義務付けているが、中規模ビルにあっては屋上・壁面緑化の導入が進んでいないというのが現状である。
 今回開催される「銀座 エコツアー」は、中小規模のビルを対象とした「簡単にできる屋上・壁面緑化」を紹介。都市部の緑化を推進していくことで都市環境問題に貢献している施設を見学する。当日は銀座周辺の屋上緑化・農園などを見学。その後、白鶴酒造の「東京支社ビル」の屋上に設けられた「天空農園」の見学及び会議室において有識者による「簡単にできる屋上・壁面緑化」をテーマにした講演が展開される。
 当日は13時に東京メトロ「銀座」駅に集合し、17時30分の解散を予定。40名の定員に達し次第、参加募集を終了する。参加申し込みやイベントの詳細については同学会まで。


日比谷花壇 新ブランド立ち上げ「西武池袋本店」に店舗オープン
 日比谷花壇(東京都港区)は4月29日、観葉植物をはじめとするグリーン専門ブランド「COTO tree HIBIYA KADAN(コトツリーヒビヤカダン)」を立ち上げ、観葉植物などのグリーン販売・レンタルグリーン・空間コーディネートの強化に取り組んでいる。同日にJR「池袋」駅直結の商業施設「西武池袋本店」の屋上にオープンした、豊富な緑と飲食店舗等で構成される「食と緑の空中庭園」において、同ブランドの店舗「COTO tree HIBIYA KADAN 西武池袋店」を開業した。
 このブランドでは、観葉植物の個人向け販売から、法人向けレンタルグリーン、商業施設、ホテル、オフィスなどでの植物を生かした空間コーディネートまでを、これまで同社が培ってきた植物に関する専門性、商品知識、接客サービス、メンテナンスサービスを生かし、また室内緑化や壁面緑化などを中心に事業展開するグループ会社のグリーバル(東京都港区)との連携を強化することで、提案・販売を行う。森を連想させるような大型の植物やユニークな樹形の植物、希少なデザートプランツなどを、世界中から取り寄せ、植物の種類、樹形、プランターを利用客の希望に沿ってカスタマイズすることが可能となっている。
 ブランド名の「COTO tree」の「CO」はコミュニケーションを意味しており、同社は植物を通じてありふれた空間を特別な空間に変え、人と人をつなぎ、「集い」と「語らい」を生み出す新ブランドとして、実店舗及びインターネット販売、セミオーダーメード販売、空間コーディネート、レンタルサービス、メンテナンスサービスを通じて事業展開を図る考えだ。

PAGE TOPへ