不動産トピックス

クローズアップ スマートロック編

2015.05.11 11:01

 スマートフォンで鍵を開け閉めする。IT技術の進化によって誕生したスマートロックが注目されている。鍵の紛失や複製といったリスクを回避できる他、不動産の有効活用としてスペースの時間貸しも可能になる。貸し駐輪スペースに導入される等、スマートロックが不動産業界を席巻する日は近そうだ。

自転車創業 室内型駐輪スペースに導入し今後の施設展開に生かす
 高級自転車向け室内駐輪スペース「PEDALRest(ペダレスト)西新宿」を運営する自転車創業(東京都渋谷区)は先月27日、フォトシンス(東京都品川区)が開発したスマートロック「Akerun(アケルン)」、セーフィー(東京都品川区)が開発したホームセキュリティ「Safie(セーフィー)」を導入した。
 「PEDALRest(ペダレスト)西新宿」が開業したのは昨年10月。いたずらや盗難の危険性が高い屋外駐輪場では安心して駐輪できないとの高級自転車ユーザーのニーズに対応して、西新宿のオフィス街に近い地下鉄「西新宿五丁目」駅から徒歩2分に位置する共同住宅の1階を自転車創業が借り受け、室内駐輪スペースとした。室内には14台の専用駐輪ラック、大小15の専用ロッカー、2つのシャワールームを備えている。現在12台が定期利用契約を結び、残り2台は一時利用者向け。修理用の工具類も貸し出している。
 今回、スマートロックを導入した理由について自転車創業の中島大社長は「3つの課題を克服することが目的」と説明する。1つ目の課題は鍵の運用の煩雑さだ。現在24時間利用できるように定期利用者に対して合鍵を渡しているが、鍵を紛失した場合、手続きが非常に煩雑になる。2つ目の課題は既存の鍵では1日利用者への対応が難しいことが挙げられる。休日等に利用する場合は事前連絡が必要となる。3つ目の課題は費用的に既存セキュリティサービスに未加入のため、利用検討者に対して少なからず不満や不安に繋がっていた。これらの課題を解決するために選択したのがスマートロックである。中島社長は「一般的なサムターンキーなら後付け可能で、既存の鍵もそのまま利用できる。スマートフォンのアプリ上で鍵の権限を渡すことができ、利用者がスマートフォンで鍵の開け閉めが可能になるため、安心して大切な自転車を預けていただけるのでは」と期待を寄せる。今後はスマートロックの有用性を検証しながら、新たに開設する駐輪スペースへの導入を検討している。


M2モビリティー 欧米で10万台以上の販売実績を持つスマートロックが日本初上陸
 共有スペースの時間貸しに最適なスマートロック製品に注目が集まっている。
 スマートロックとは玄関ドアに取り付けた鍵をスマートフォンから開閉できるシステム。無線で音声を送信できるブルートゥース技術が省電力化された「BLE(ブルートゥース・ロウエナジー)」技術が普及したことで、スマートフォンで鍵の開閉を行うスマートロック製品を開発・販売する企業が急増している。
 海外製品の輸入販売を行うM2モビリティー(東京都品川区)もスマートロックの販売を開始した企業の1つ。同社が取り扱うのはデンマークのPoly Control社が開発したスマートロック「danalock(ダナロック)」。欧米ではすでに10万台以上の販売実績を持つ。価格も1万9800円(税抜、予価)と値ごろだ。
 「欧米では携帯ショップで販売しており、スマートフォンのアクセサリー感覚で販売されています」とは、同社代表取締役社長の橋本清治氏。機能性とデザイン性を兼ね備えており、デンマーク出身の世界的有名なプロダクトデザイナーのヤコブ・イエンセン氏がデザインした製品も存在する。
 同製品には個人ユーザー向けの「BLE型」と「コンボ型」が存在し、日本で先行発売するのは「BLE型」。スマートフォンで鍵の開閉を操作する。既存ドアのサムターンキーを交換して特殊プレートを取り付ければ装着完了。ドアに穴を開けない。「粘着テープで取り付けるスマートロックも存在しますが、経年劣化が避けられない」(橋本氏)ための対策でもある。また、スマートフォンがなくても既存の鍵はそのまま使えるので、電池切れ等の心配もない。一方、「コンボ型」製品は鍵の管理を遠隔で行える。「ヨーロッパではホテルや保養所に導入され、チェックイン等の時間短縮・人件費削減に大きく寄与」(橋本氏)している。
 「日本での販売は北欧デザインを前面に押し出してデザイナーズマンション等へ導入を目指し、その後共有スペースの時間貸し用にビル等への普及拡大を目指したい」(橋本氏)
 貸会議室やコワーキングスペース等、ビルイン型の時間貸し施設は多数存在するが、スマートロックの普及によって運営効率が格段に改善する可能性は大きい。すでにスマートロックを活用した「時間貸し」の可能性を検証する事業者も存在し、ビル業界にスマートロック旋風が巻き起こるかもしれない。


ライナフ スマホで開閉できる工事不要の鍵システム
 築年が経過し、空室を抱えるビルやマンションを有効活用するためには柔軟な対応が必要となる。注目を集めているのが「時間貸し」だが、課題となるのが「鍵の開け閉め」。ライナフ(東京都港区)の代表取締役、滝沢潔氏は保有物件で時間貸しを行おうと検討した結果、滝沢氏自ら開発したのがスマートロック「Ninja Lock」だ。
 スマートロックとは玄関ドアに取り付けた鍵をスマートフォンから解錠するシステム。施工は非常に簡単。サムターンキーを覆うようにそのまま取り付けるだけ。従前のサムターンキーもそのまま使える。そしてスマートフォン画面からアプリを立ち上げ、使用したい鍵を選べば開閉画面が表示され、スライドすれば鍵の開閉が可能。滝沢氏によると「招待者の携帯番号を登録し、時間を設定すれば、ユーザー権限を時間単位で貸すことができる」としている。また、現在は当該物件のドアの前で解錠操作をしなければならないが、室内に無線LANがあれば遠隔地のPCからも開け閉めができるという。
 元々、滝沢氏は既存のスマートロックシステムの導入を検討していたが、既存建築物に設置できるシステムはほとんど存在せず、米メーカーの製品は多種多様な日本の鍵とサイズが合わず、作動状況の不安定だった。
 一方「Ninja Lock」は3Dプリンターでアタッチメントを制作することであらゆる種類のサムターンキーの取りつけることが可能。振動センサーを搭載し、省エネモードを設定。単三電池4本で約1年稼働する。
 今後は「Ninja Lock」を導入した施設専用の時間貸しサイトを立ち上げる予定。空室を貸したい・使いたい方が当製品を取り付けて不動産の時間貸しの普及を目指す。
 「例えば空室を多く抱える団地の場合、団地の住民だけが施設利用者として登録すれば、空いている部屋を住人が使えるようになる。会議場所にしてもいいし、住人の親族が泊まりにきた場合に宿泊施設として貸せる。また自治体で空き家を借り上げて市民限定で空き家を開放するという使い方も考えられる」(滝沢氏)
 空きスペースを時間貸しにすることで付加価値のある空間に生まれ変わらせる。多彩な使いみちが考えられる同製品で不動産の再生を実現できそうだ。

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