不動産トピックス

クローズアップ バリアフリー編

2015.02.23 12:32

 東日本大震災によってビル業界の防災意識は飛躍的に高まったが、当時課題となったのがビルの安全性を即時把握できなかったことである。ビルの破損カ所がその場でわからなければテナント従業員に避難すべきかどうかといった適切な判断・行動に移れない。こうした背景から、新たに開発される大規模ビル等で導入が進んでいるのが地震被害測定システムである。

白山工業 LAN型加速計で地震時の被害状況を導き出す テナントへの説明を迅速化
 白山工業(東京都府中市)が展開する防災システム「VissQ(Visual Sensor System for Quakes)」は、主に高層建築物を対象にした地震被害予測システムだ。地震直後の建物の安全性や事業継続に関する被害想定を可視化することが可能になり、現在では大手デベロッパーが開発した超高層ビルにも導入が進み、オフィスビルのBCP対策として定着しつつある。
 東日本大震災は多くの建築物に被害を及ぼし、高層ビルにおける地震動対策を徹底する動きが顕在化している。震源地から遠く離れた首都圏の高層ビルが長時間にわたり大きく振動し、倒壊の危険はなくとも入居テナントに恐怖感を植え付ける結果になった。そして、震災発生後、各テナントからビル管理者に対してビルの継続使用の可否に関する問い合わせが殺到。しかし、建物の被害状況を伝えるための正確なデータがなく、テナントへの説明に多大な時間とコストを要してしまう。こうした課題を解決するのが同システムの役目となる。
 「高層ビルに当システムを導入したのは約100棟。以前は、地震発生後に建物躯体における被害の有無を確認するのに時間を要し、ビル管理者がテナントへの説明責任を果たせない状態でした。しかし、当システムによってその場で被災度の判定を支援することにより、建物内が安全かどうかの判断ができ、迅速にアナウンスして、周辺住民の避難場所として受け入れることもできます」(防災システム事業部 営業部 部長 馬目 誠氏)
 同システムは、建物の高さに応じた適切な数のLAN型加速度計をフロア毎に設置。地震動による加速度データを計測し、同社独自のシステムによって地震時における層間変形角を解析。建物躯体における被害状況を導き出す。その結果、建物の継続使用の可否を判断する材料の提供が可能になる。ビルの防災センター等に設置したPC画面に判断情報を表示。誰もが一目で建物の安全性が判断できるように「見える化」を実現した。


NTTファシリティーズ 中規模ビルへ導入できる建物被災判定システム
 NTTファシリティーズ(東京都港区)は地震直後の建物の継続使用に関する安全性を提示できるシステム「揺れモニ」を展開している。
 従来型の建物被災判定システムは震動解析モデルがないと導入できないため、建物の高さが60m未満のビルには導入が困難だった。さらに、高額な地震計と震動解析モデルを採用したため、非常に高コスト。一方、「揺れモニ」は独自センサーを開発したことで、システム構築価格の低コスト化を実現。建築基準法の関係から今まで導入できなかった高さ40m(10階建相当)程度のビルに導入できるようになった他、独自開発した地震対応型加速度センサーを採用することで、より低コストで導入でき、テナントへの安心・安全の提供と調査コストの削減を両立することが可能になった。
 同システムは建物の全層にセンサーを設置することで、加速度データを取得し、地震時における固有周期・傾斜・層間変形角を導き出し、建物の継続使用が可能かどうかを瞬時に判断する。利用者のPC画面に青・黄・赤の3段階で判断情報を表示。誰もが一目で建物の安全性が判断できる。
 従来品はシステムの販売のみで、その後のフォロー体制が確立していないケースも多かったが、同システムはデータ収録装置を24時間365日体制で監視しており、建物カルテレポートの毎月配信やシステムの点検・修理、故障時の対応等は同社が対応しており、効果的なBCP対策が可能になる。


東急建設 建物継続使用可否を早期に判断
 東急建設(東京都渋谷区)は、大地震発生時におけるBCP(事業継続計画)活動を迅速に行うためのシステム開発に向け、同社が入居する「メトロプラザビル」へ地震観測装置を設置。昨年1月から観測を開始した。
 大地震発生後、迅速に災害対策本部を設置するためには拠点となる建物を継続使用しても安全かどうかを判断しなければならない。また、建物の被害が深刻な場合には建物外に避難を指示する必要があるが、こうした判断にかかる時間は余震の危険性も懸念されるため可能な限り短縮することが望まれる。
 これに対して同社では建物からの避難の要否・被害調査要否の判断、損傷階の特定といったBCP活動拠点として対策本部設置までの時簡短縮を支援するためのシステム開発に着手した。
 ビルに導入した地震観測装置は富士電機(東京都中央区)が開発したMEMS型加速度センサを採用。常時微動から地震動までの振動検出が可能で、従来の加速度計と比較してセンサ価格が3分の1程度と設備投資額を抑えることができる。また、インターネットを介して遠隔地でも観測条件の設定や観測記録の回収が行えるのも大きな特徴といえる。
 同社は今後、観測記録の分析を自動化し、社内関係部署でリアルタイムに分析結果を閲覧、関係者への被災状況速報配信等のシステム開発を行っていくという。また事業展開としてオフィスビルや商業施設向けに建物管理者が迅速に避難や被害調査の必要性を判断できるようなソリューション技術を提案したり、平常時から蓄積される観測データをもとに建物更新に関わる耐震診断や耐震補強の情報提供等への取り組みも行っていく予定だ。


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