不動産トピックス

クローズアップ 防災編

2014.10.20 16:21

 東日本大震災から3年以上が経過した今でもその記憶は生々しく残る。防災・減災をしていく上で何が必要か。本稿では災害時に人的・物的被害を抑えていく防災商品を紹介していく。  富士電機(東京都品川区)では建物や橋などの振動を測定する「感振センサ」を開発・販売している。  同社は主に電気機器を中心とした事業を展開してきたが、その過程で培った技術を応用することで同製品の開発に至った。同製品を建物や橋梁、トンネルなどの構造物に設置し、耐震性の診断などに活用する「構造ヘルスモニタリングシステム」として導入を進めていく。地震などで建物が揺れたときに、建物の健全性や損傷度合いをモニターに表示することができる。同製品は同社独自開発の「MEMSセンサ」を搭載している。低周波の振動を三次元の高分解能で測定可能であり、地震はもちろん、環境振動を検知することができる。  同社のシステム工務部営業技術課の上村和大氏は「これまで用いられてきた地震計と比べて安価で、また取り付けも簡易です。現在、複数のマンションや商業施設で導入が進んでいます」と話す。既存のビルに対しても、建物の構造や図面さえわかれば設置可能だ。  「これまで地震計が主流でしたが、価格面も障壁となり、ビルへの導入は進んでいませんでした。そのため、地震が起こった際の建物への影響は後日、応急危険度判定士の診断を待つ必要がありました。さらに、この診断は手作業で行われるため、時間がかかってしまいます。当社の『構造ヘルスモニタリングシステム』を用いることで、簡易的な診断ではありますが、地震の直後に建物を継続して使用することが可能かどうかの情報を出すことができます。このシステムはビルオーナーの資産価値向上にお役立てできることはもちろん、地震発生時のパニックを抑制する効果も期待できます」(上村氏)  同社は今後フロアごとのモニターを各戸のインターホンでも表示できるようにするなどしていきたい考えだ。  野毛印刷社(横浜市中区)は昭和23年の創立以来、横浜市を中心に事業を展開しており、これまで謄写版印刷をはじめとして、タイプ印刷、オフセット印刷と時代の流れに沿って歩んできた。同社では自社の福利厚生の一環として、大地震対応マニュアルを社員に配布していたが、平成20年より企業や学校などに対し商品提案を開始した。
 同製品は企業・団体向けのものと、家庭向けのものがある。企業・団体向けのものでは、コンテンツのアレンジが可能な「オーダーメイド版」と、緊急時の連絡先や会社への連絡方法などを書き込む「テンプレート版」が用意されている。「オーダーメイド版」では個々の企業・団体ごとに防災マニュアルとしてどのような情報を盛り込むか決めることができる。「テンプレート版」は定型のマニュアルとなっているが、震災以後、早急に導入したい企業からの問い合わせが多いという。
 同製品の特長はまずAR(拡張現実)防災動画サービスを挙げることができる。横浜市防災局の協力の下、消火器の使い方等を視覚でわかりやすく理解することが可能だ。またこの映像コンテンツも企業・団体ごとによってオリジナル映像を制作することが可能となっている。第二に同製品は耐久性・耐水性に優れたストーンペーパーが使用されていて、水に濡れても問題なく、破れにくい紙質となっている。営業部営業1課担当主任の大石幸介はストーンペーパーの使用の理由について「災害時、どのような事態になるかを想定できないからこそ、このような紙質でマニュアルを作成することは安心感にもつながります」と話す。大きさも名刺サイズとなっているため、持ち運びが可能で出先で罹災しても落ち着いて災害時の行動を確認することが出来る。
 同氏は「東日本大震災以来、需要が格段に高まりまして、それは現在まで続いています。ビルなどでも消化器の位置や避難経路などそれぞれ違いますので、そのようなところでお役に立てると思います」と語る。

 平成23年の東日本大震災において、天井の落下事故が多く発生した。天井の落下防止についてはこれまでも耐震天井で行われていたが、これも落下事故を完全に防げるわけではなかった。
 日栄インテック(東京都荒川区)は新潟中越沖地震の際の天井落下事故をきっかけとして、天井の落下をワイヤー吊金具で防ぐ「BBカチットワイヤー」、「BBクリッパー」の開発・販売を始めた。同製品の特徴としては、天井落下をワイヤーで吊るすことによって人的・物的被害を防ぐ。耐震天井が「落ちにくい」天井だったのに対し、同製品は想定外の事態でも「落とさない」天井となっている。取り付けも簡易で、Mバーに上から取り付けるだけだ。また同製品は各メーカーのMバーに対応している。
 これまでの導入実績として教育施設や空港施設などがある。公共施設で使用実績があることはその安全性を立証しているものと言えるだろう。その一方で民間ではあまり導入が進んでいないという。
 同社耐震営業部の増井祐亮氏は「一度大きな地震が起きて天井落下のような事故がありますと、商業ビルなど多くの人が集まる場所では多大な人的・物的被害を出してしまいます。人命と建物などを守る意味で必要性は高いのではと思います」と語る。

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