不動産トピックス

クローズアップ 空調編

2014.10.13 17:52

 オフィスで快適に過ごすには空調機器の導入が必要不可欠だ。しかし光熱費のことを考慮すれば初期費用もランニングコストも安く抑えたいと考えるビルオーナーは多いだろう。今頁では省エネやコストを抑えることができる空調機器や湿度コントロールできる製品を紹介する。

 大成建設(東京都新宿区)は、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の実現を提案するために大幅な省エネルギーと快適性を両立する「超省エネ型タスク・アンビエント空調システム」を開発した。
 オフィスビル全体の消費エネルギーに占める空調消費エネルギーの割合は約4割と言われZEB実現のためには空調エネルギーの更なる削減が必達課題となっている。人が作業している領域である「タスク」と、その周辺の空間領域である「アンビエント」とを別の仕組みで空調し全体を効率的かつ快適にコントロールするという概念は以前からあったが、大成建設は独自の技術を用いてタスク・アンビエント空調システムを生み出した。
 温度・湿度の調整が可能なパーソナル空調ユニットと自動開閉のパーソナル吹出口から構成される「タスク空調」は床下に設置され、在籍状況を自動的に検出し人がいる領域のみ吹出口が自動で開き適切な外気導入量を制御するシステムとなっている。一方、「アンビエント空調」は天井に埋め込まれた配管に冷水を循環させることでコンクリートを冷やして部屋全体を放射空調する方式が採用された。
 設計本部設備設計第二部設計室長の梶山隆史氏は「アンビエント空調システムのエネルギー源として水素と酸素で電気を作る燃料電池の排熱を使用しています。発電するときの熱を使用して冷暖房を行うシステムとなっているため無駄なエネルギーを使用することはなくCO2も排出することはありません。コンクリートを放射パネルに見立てて直接冷やしているため、他社の放射空調システムよりも施工費用を抑えることができます」と語る。
 コンクリート天井に埋め込む形で設置されていることから照明をどのように配置するのか、また個別制御にどのように対応するのかなど一般テナントオフィスに適用するには解決すべき課題が残っているが、現在、横浜市の技術センターで実証を行い、システムの向上と汎用化への方策を検討中とのこと。
 「省エネ照明などと組み合わせて当社の空調システムを導入して頂くことで、一般ビルと比べ75%の省エネを実現することができます。リーシングの売りになるのではないでしょうか」(梶山氏)
 コンペティションや製品を開発するなかで省エネは外せないテーマになってきている。大成建設はさまざまな製品の開発を通して省エネルギービルへの提案を行っていく。

 川重商事(神戸市中央区)は昭和26年に設立し今年で63年目を迎える総合商社だ。川崎重工グループの製品と技術を併せて取引を行っているが、近年では取扱ジャンルに関連する他社製品の販売も行いビジネスを拡大させている。空調機器に関してはダイキン工業(大阪市北区)のスーパーディーラーに認定され、温度・湿度個別コントロール空調システム「DESICAシステム」を販売している。
 東日本本部汎用機械部部長の松田智行氏は「湿度を調節することができる空調機器は他にもありますが、大半の製品は冷暖房した空気に水を噴霧して調湿するというものです。水を使用する製品は配管を行わなければならないため費用がかかります。『DESICAシステム』は空気中の水分を取り込み室内に放出するという技術を採用しているため配管は必要なくコストを抑えることができます。この方法はダイキン工業か独自に開発したもので他製品とは一線を画していると思います」と語る。
 湿度の方が温度よりも体感的に感じる寒さや暑さの影響力は強い。エアコンの温度を20度に設定したとしても湿度が高ければ暑さを感じてしまう。湿度を調節することで快適性が高まり、冷やしすぎなどの無駄を抑えることができる。
 「省エネにもつながる製品だと思います。今後はビルへの導入が進んでいくのではないでしょうか」と松田氏は「DESICAシステム」の需要拡大に期待を込める。

 ダイナエアー(東京都千代田区)は、人と環境にやさしい液式調湿換気システム「モイストプロセッサー」の開発および販売を行っている。
 室内環境を快適にするためには湿度の管理が重要だ。通常、室温は20~28度に設定されているが同じ温度でも空気中に含まれる水分の量によって体感上の暑さや寒さが変わってくる。夏は除湿、冬は加湿して温度を調節することで室内の快適性を高め、結果的に冷暖房の使用コストも抑えることが可能となる。
 代表取締役の宮内彦夫氏は「外気のなかでも湿度のエネルギーは大きくコントロールすることは大変です。湿度を調節する空調機器は昔から販売されていましたが、従来の技術では大量のエネルギーが消費され、設備コストやランニングコストもかかってしまう製品ばかりでした。当社が開発した『モイストプロセッサー』は、イニシャルコストはかかりますがランニングコストはかなり抑えることができます」と語る。
 湿度を重視した空調は健康上にも良い効果を発揮する。「モイストプロセッサー」の納入先で最も多いのは介護施設だ。同製品は花粉やPM粒子、放射能塵などを除去しインフルエンザなど集団感染のリスクをある程度抑えることができる。空調機器の入れ替えサイクルに関わらず導入したいという顧客は多くいる。
 「テナントビルの一室が医療施設で、その空間だけ別グレードの空調を導入したいという問い合わせもありました。品質の高い製品なので一般のオフィスに設置しても効果は高いと思います」(宮内氏)
 湿度は臭いを払しょくする効果もある。「モイストプロセッサー」には脱臭効果もあり、パチンコ店などの遊戯施設にも設置されている。「きれいであるべき医療空間と人が多く喫煙率が高いなどどうしても汚れてしまう空間という両極端で効果を発揮することができる製品です」と宮内氏は自信を見せる。

PAGE TOPへ