不動産トピックス

クローズアップ 屋上緑化編

2014.05.19 14:58

 屋上緑化が義務化され屋上に植物を設置したはいいが、手入れされずに放置され、枯れたような状態になってしまうことも多い。屋上緑化を導入した後に緑化の状態をいかに維持していくかは屋上緑化の1つの課題である。今回は屋上緑化のメンテナンスをどのようにすれば良いのか紹介する。

 東邦レオ(大阪市中央区)は35年前から屋上緑化事業に取り組んできた。同社広報室長の熊原淳氏は「当社はおもてなしの管理を行ってきました。メンテナンスのチームを用意し、東京・大阪を主体としてスタッフが現地を定期的に訪問し200施設で緑の手入れをしています」と語る。
 同社は、他社との差別化を図るために技術、デザイン、工事、メンテナンスなどの分野ごとにチームを分けてビジネス展開しトータルでサポートする体制を整えている。また、屋上というフィールドをオフィスや住宅、商業施設などで分けて考え、顧客の欲しいコンテンツに合わせて柔軟に対応し「見える」差別化を提供している。
 植物を取り入れるということは、多かれ少なかれメンテナンスが必要になる。オーナーが自ら水を撒いて管理することは困難だ。メンテナンス費用がかかることから、導入前に何のために空間が必要なのか、どのような意図で活用し、メンテナンスはどうするのかなど念頭に置いておくと緑化が長続きしやすいという。
 枯れた緑は来客に古さを抱かせてしまう。同社は、オーナーがイメージする状態を上手くコーディネートするために人工芝を提案することもあるそうだ。最近ではコストを抑えて管理することができる選択肢も増えてきている。同社ではオーナーと相談し初期投資と導入費を無理のないコストで提案しているとのこと。2010年頃からは新築だけでなくリフォームの一環として、他施設と差別化になる空間づくりを屋上で行いたいというオファーも出てきているようだ。同社は、長年に渡り屋上緑化事業に取り組むなかで緑という枠組みに捉われずグリーン+αの方針を打ち出している。最近では緑化事業を活用して人が集う空間を作る屋上プロデュースの色合いが濃くなっている。
 「屋上に緑化を導入する前にオーナーと相談して、空間が生きるために何がハードとして必要かを考えています」と同氏は語る。
 都市のビルの谷間の狭地や屋上緑化など、植物の育成が厳しい環境下における快適な都市型ガーデンライフのガーデンデザインを手掛けるデザイナー矢野TEA氏と綿半ホールディングス(東京都新宿区)の柴山千穂里氏は、5月16日まで西武球場ドームで開催されていた「国際バラとガーデニングショー」でガーデンユニットを出展し、ゆとりや心の豊かさを表現した都市型ガーデンを提案した。60歳を迎え定年退職した父がガーデニングを始め家族でガーデンライフを楽しむというストーリーを参加のデザインコンセプトとし、父をヘミングウェイにたとえ「パパヘミングウェイ」というタイトルにしたとのこと。両氏は4月25日にオープンした愛知県豊田市が進めているスマートシティ「とよたエコフルタウン」のメインガーデンの作庭に携わり、7年間かけて市民と共に都心に里山をつくり自然環境を学ぶ青空教室を実施できるサステナブルガーデンを作り上げた実績を持つ。現在は、埼玉県深谷市のシャッター通りの活性化プロジェクト「深谷BASE」では研究中のコンテナを使ったガーデンハウスで市民主体の新しいコミュニティーガーデンをスタートさせているとのこと。屋上緑化をマネジメントして活用しながら新たなライフスタイルを提案する動きが出てきているようだ。

 屋上緑化を利用した空間活用が広まっている。コストをかけることができる企業は屋上緑化に力を入れ、空間を活用して街づくりや地域活性化などに事業を展開することができる。しかし、中・小ビルを経営する大半のオーナーにとっては屋上に緑化を取り入れるだけで金銭的に苦しむ場合もある。屋上緑化が義務化されている地域に限れば、規制対象部分だけはコストを抑えてでも何とかしなければと考えているオーナーも多いようだ。
 大日化成(大阪府門真市)は、環境に優しい屋上緑化システムを提供している。同社技術部次長の山下律正氏は「屋上に緑を取り入れたいという気持ちはあるのですが、何とか安く導入したいと考えている顧客が圧倒的に多いと思います」と語る。
 屋上緑化に費用をかけることができる企業はメンテナンスにも力を入れている。しかし、屋上に緑を取り入れたとしても、コストをかけることができない企業は環境を維持することが困難になる場合も出てくる。「屋上緑化の導入前にオーナーと話し合うことができれば良いのですが、大半の方は枯れてから相談にきます」と同氏は語る。植物によってはコストを抑えつつ長く生きる品種もあるそうだ。同社ではオーナーの要望に合せて多様な緑化資材を提供しているとのこと。
 寿命の長い品種を取り入れたとしても、定期的な手入れが行わなければ緑化環境は荒れてしまう。緑の環境を維持するために管理は必要不可欠となってくる。屋上緑化を導入するのであれば、メンテナンスについても考えていかなければならない。管理を委託する場合の注意点として、屋上緑化は強風が絶えず吹き、気温の差が激しく、乾燥に晒される過酷な環境であることを考えなければならない。
 「専門的な知識を持たない造園業者に任せても管理は上手くいきません。まずはシステムを作ったメーカーなどの専門家にメンテナンスを依頼することが一番です。植物が何を要求しているのか、病気なのか、環境調査問題かなど総合的に判断してくれます」(同氏)
 これからの屋上緑化のメンテナンスは、顧客との信頼関係を築きながら行うことが大切になる。「当社では有償メンテナンス契約を結んでいるクライアントに毎回屋上メンテナンス報告書を作成し、緑化の健康報告書を渡しています」と同氏は語る。同社が顧客からの信頼を得てきた背景には信頼のおけるメンテナンス体制があるのではないだろうか。

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