不動産トピックス

クローズアップ 省エネシステム編

2013.08.05 14:54

 築年数が経過したビルでは、空調機や照明器具などを更新したくても、建替えの時期が迫っていると、二の足を踏むだろう。だがテナントからのニーズが高まっている節電対策をオーナーとして取り組むことができる。今回は運用によって省エネを実現するシステムを紹介する。

内田洋行 後付け可能な「Enersense」
 オフィスの空間づくりや教育現場における機器やコンテンツなどの製造販売、コンピューターソフトウェアの開発・販売などを展開する内田洋行(東京都中央区)では、既存のビルにも後付け可能なビルエネルギー管理システム(BEMS)「Enersense(エネルセンス)」を販売している。
 「Enersense」は電力の使用状況から対処すべき課題を顕在化し、快適性を維持しながら電力料金の削減に貢献するシステムとなっている。従来、空調や照明などの設備系ネットワークと、配線、ネットワーク、セキュリティなどのフロア系ネットワークは独立していたが、その2者をプロトコル変換により、相互に接続することにより、従来と比べ、より細かいフロアやゾーンの個別ニーズに対応することが可能となり、テナント単位、貸室単位での導入も可能。
 「Enersense」の心臓部とも言えるゾーンコントローラーには無線対応のものを採用しており、設置工事費用の削減や導入の容易性を実現する。さらには、スケジュール設定や遠隔操作によって設備機器のオン・オフを行うなどこまめな運用で、消費電力の無駄を省く効果がある。
 「建物の制御を全体から個別に変えることにより、フロアごとのコントローラーで室内の温度や照度を調節など、最適な制御を行うことが出来るようになります。それにより、大規模な設備改修を行わなくても効率的な節電が可能となります。東日本大震災後は『我慢の節電』を課せられてきましたが、2年以上経過した現在は、オフィスなどの現場においては、作業効率を落とすことのない『無理のない節電対策』が求められています。そのようなテナントのニーズに対応するためにも、『Enersense』の導入は、同時にビルの資産価値向上にも寄与します」(山本氏)

シーエム総研 簡易的なBEMS「ファマボット」
 建設業向けのシステムコンサルティングやシステム開発、販売、サポートなどを展開するシーエム総研(東京都港区)では、ロボット型建物維持管理サービス「ファマボット」の販売を展開している。
 「ファマボット」は建物に設置されている多くの空調や電気の設備について、不必要な運転を見直し、管理費用を大幅に削減するもの。エネルギー消費量などをリアルタイムで表示し、24時間の推移をグラフ化して見せることで、節電対策に役立てることができる。
 不動産オーナーにとっては、「ファマボット」のシステムを導入することによって、効率よくコスト削減を実現することが可能だ。
 計測したデータは目に見える形として表れ、貸室ごとや階層ごとのエネルギー使用量などを見直すことが出来る。導入の際には設備の現状を調査し、データを分析して指導を行う。また、配線工事が不要で、規模が小さなビルでも後で施工することが可能だ。
 「『ファマボット』は、インターネットが接続されている環境であれば導入がしやすい簡易的なBEMSになっています。単なる省エネのみならず、夏や冬のピークカットにも役立ち、契約電力量を減らすことも可能です。社会的に節電が不可欠となっている昨今は、テナント側としても節電を実行するため、より細かい電力使用量などを知りたいというニーズが高まっています。ビルに導入することにより、テナントのニーズに応えるスペックが備わることになります。また、省エネ・節電のみならず、設備のきめ細かな部分を監視し、メールによる報告を受け取る機能もついています。導入の際は、初期費用はかからず、月々の基本料金のみの負担となります」(谷田氏)

菱電社 工場向けシステムをビルなどにも
 電機・計測制御・情報システム事業を展開している菱電社(新潟市西区)では、オフィスやデパート、ホテル、学校等において合理的なエネルギーを使用するために、「お客様のメリットが照明出来る」というコンセプトのもとに、「省エネソリューションシステム E-4」を開発した。
 4Eとは、「Electrical(電気)」、「Energy(エネルギー)」、「Economy(節約)」、「Environment(環境)を指し、それぞれの頭文字をとったもの。電気というエネルギーを通じて環境に貢献するという意味合いだ。
 同サービスは元来工場向けのシステムだが、導入可能な建物用途を拡大するために開発されたもの。
 ビル全体のエネルギー(電力量、熱量、水やガスの流量など)を計測して、データを蓄積するとともに、デマンド制御を行うという。計測したデータは、LAN上のパソコンからウェブプラウザ上でモニタリングが可能だ。また、パソコンで日報・月報・年報・原単位などを作成して管理を行うことが可能。収集したデータはウェブプラウザ上でエネルギーを監視するため、誰にでも簡単に操作することが出来る。また、データを分析し、定期報告書や中長期計画書などの作成も実現する。

ベクトル総研 省エネのほか防犯防災にも効果を発揮 人流データを活用
 システム開発やコンサルティング、流動調査などを展開するベクトル総研(東京都渋谷区)では、既存設備と人流データを活用した省エネ管理システム「ビルCOP3」を展開している。同サービスは防犯用などの既存の設備を最大限に活用することで、ビル内の各貸室または各フロアの在室者数の時間変動データ(人流データ)を取得し、その人流データを活用して、既存のビル設備の運転の無駄を省くことによって、ビルの省エネルギーを実現するシステムだ。
 ビルの設備が本来備えている固有のパフォーマンスやテナントからの協力意識を最大限に引き出す情報制御で、ビルの主要3業務(省エネ・防犯・防災)の、確実な効果達成に貢献する低コスト省エネシステムである。
人流データと組み合わせた設備制御により、ビルの利用形態に応じた省エネを実現できる。また、既存設備を利用することで、費用対効果の高い効果が見込める。省エネ行動を促す情報を発信することで、在館者の省エネ意識の向上に貢献する。また、効果は省エネのみならず、防犯や防災の分野においても発揮する。

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