不動産トピックス

クローズアップ 介護福祉事業編

2013.01.14 13:56

 本格的な高齢化社会の到来とともに注目を集める介護福祉事業。また、社会問題化する待機児童の増加。日本はこれまでの社会構造が地殻変動を起こし、新たな社会構造が生まれ、こうした動きが表面化したのが前述の介護福祉と待機児童ではないか。今回のクローズアップでは介護福祉事業をテーマにビルオーナーと同事業の接点を聞いてみた。

ビルを有料老人ホームにコンバージョン
 シスケア(東京都新宿区)は、サービス付き高齢者向け住宅「ご隠居長屋 和楽久」の企画開発・運営、介護サービスに関するコンサルティング業務を行っている。同社は、関連会社で一級建築士事務所であるエス・ピー・エー(東京都新宿区)とともに、介護福祉事業に特化したサービスをワンストップで提供しており、国土交通省の「高齢者居住安定化モデル事業」に選定されるなど、すでに豊富な実績を有している。
 現在、不動産業界においても注目が集まっている介護サービス事業であるが、不動産所有者との接点という点では、郊外などの遊休地に従来のようなアパート・マンションを建てるのではなく、確実な需要が期待できるサービス付き高齢者向け住宅を建てることで補助金による建設費の圧縮や安定した収益が見込めるという事業モデルが当てはまるだろう。しかし、この場合は東京都など都心に既存ビルを所有しているオーナーは対象とならない。同社の代表取締役である太田裕之氏は、都心にビルを所有するオーナーにはオフィスビルから有料老人ホームへのコンバージョンが適していると話す。
 「都心に立地している物件は、既設の有料老人ホームと比べて立地という点で圧倒的に有利です。稼働率の上がらないオフィスビルを有料老人ホームにコンバージョンすることで、好立地という利点を生かし安定した稼働を実現することが可能です」(太田氏)
 しかし、オフィスビルから有料老人ホームへのコンバージョンは容易ではないのではないか、と考えるオーナーも少なくないだろう。この点について太田氏は、住宅を有料老人ホームにコンバージョンするよりもオフィスビルをコンバージョンする方が建築的に有利な面もあると話す。
 「当然、建築基準法に適法するためにはいくつかの要件を満たさなくてはいけませんが、オフィスフロアの方が扉や間仕切り壁などを設置しやすい構造となっています。さらに、都心に立地する有料老人ホームであれば介護施設運営会社が多額の建設協力金を出す可能性が高く、資金面でも有利です」(太田氏)
 また、コンバージョンの際にビルの耐震補強工事を実施することで、新耐震基準を満たすことも可能とのことで、旧耐震ビルを所有するオーナーにとっては有料老人ホームにコンバージョンすることも不動産の有効活用のひとつの手段となるのではないだろうか。

global bridge 保育・介護・歯科を組み合わせ安定稼働を実現
 厚生労働省によると平成23年10月1日の時点で全国の待機児童数は4万6620人。平均所得低下の影響から、従来の標準的家庭モデルと思われていた、夫が働いて妻は専業主婦というモデルが成立しなくなっている。そのため、夫婦は共働き、子供を保育施設に預けざるを得ないという家庭が増加している。その受け皿としての保育施設が足りているならば、社会環境の変化とひと言で片づけても問題ないかもしれないが、実際は冒頭に示したように預けたくても預けられないのが現状である。
 global bridge(東京都墨田区)は、こうした社会的な問題を解決するべく、介護・保育・コンサルティング・品質監査の4つの業務を中心とした福祉サービスを展開している。
 ビルオーナーに対して同社が提案するのは2点。1つはオーナーが事業者として保育施設経営するということ。もう一つは地域貢献の一環として保育施設をビルに設けるということである。
 「当社は福祉事業に関するコンサルティング業務を行っていますので、たとえ保育施設運営に関するノウハウを持っていなくても、施設開設から保育園の運営までサポートします」(代表取締役 貞松 成氏)
 さらに同社は保育園の開設だけではなく、1フロアを区切って保育園と介護施設と歯科も併せて開設することも提案している。
 「保育園と介護と歯科を組み合わせることで、集客という点でも相乗効果が表れ、それぞれ安定した経営を実現することが可能です。さらに保育園の開設にあたって国から補助金も出ますので、この補助金を活用すればそれぞれの施設を開設するのにかかる内装工事の費用も安く抑えることができます」(貞松氏)
 保育園と介護施設と歯科の3つの組み合わせに必要な坪数は50~70坪。また、保育園と介護、保育園と歯科という組み合わせも可能とのことだ。また同社が賃貸契約を交わし出店するというケースにおいてもビルオーナーにとっては空室が埋まることに加え、地域社会にも貢献できるというメリットも享受することができるだろう。
 「現在、当社のクライアント30社が保育園の開設のため、東京・横浜・大阪・仙台などの物件を探しています。周辺が住宅街で50坪~70坪の1階の物件が空室であるようでしたら是非お声掛けください」(貞松氏)

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