不動産トピックス

クローズアップ 耐震工法編

2011.03.14 17:20

 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震。これまでの弊紙において幾度となく建物の耐震について特集を組んできたが、災害の現状を目の当たりにすると国の助成制度整備も含めて一刻も早い耐震化が必要と感じる。

大成建設 耐震改修工事でビル資産価値を向上 賃料収入の増加につながるケースも
 既存ビルの耐震化においてポイントとなるのは、耐震補強工事の実施によって、いかに建物の資産価値を向上させるかという点です。一般的に耐震補強工事を実施するには、多額の資金が必要となります。建物の安全という意味では、耐震化は必要な工事と言えますが、多額の資金を投入して、果たして収益性をあげることができるのか、この点がオーナーにとって耐震化を躊躇する、障壁となっているのではないでしょうか。当社では、耐震補強工事を実施する際には、補強工事により資産価値向上に繋がる提案を行っています。一例を挙げますと、当社が施工を担当した「中間階免震レトロフィット」による耐震補強工事では、改修後に賃料を2割増で賃貸することができ、結果的には賃料収入の大幅な増加につながりました。また、縦格子鋼板補強壁である「TーGrid」では、建物の耐震性能とデザイン性を両立しており、耐震性能の向上だけでなく意匠性を高めることも可能です。耐震補強工事というと、その投資効果がオーナーに分かりづらかったのですが、今後は当社としても資産価値向上を図れる、耐震化を含む総合改修の提案を進めていきたいと考えています。

大林組 入居テナントに影響を与えない溶接作業不要の耐震改修工法
 当社は、東海旅客鉄道・ジェイアール東海コンサルタンツ・新日鉄エンジニアリングの3社と開発した「耐震SDJパネル」を使用した小型鋼製パネル組立補強工法を民間建物、公共施設などの建築物の柱補強に提案しています(工法名:3QーColumn)。耐震補強工事の際に課題となるのは、テナントが入居していることを前提に工事しなければならない点にあります。同工法は、鋼板が小型で薄いことから、人力で搬入することが可能で、揚重機などを使用する必要がありません。また、ボルト止めによるはめ込み接合を採用しているため、現場での溶接作業がありません。そのため、改修工事での火災の心配がなく、建物を使用しながら短工期で補強工事を実施することができます。また、当社が展開している耐震補強工法「3Qシリーズ」(3QーWall、3QーBrace)においても、同じように低騒音・低振動、省スペース施工、工期短縮を特徴としています。特に「3QーWall FRPブロックタイプ」は、FRPブロックを接着剤で接着して構築する耐震壁で、光を透過する事も可能なため、意匠性にも考慮したつくりとなっています。耐震補強工事の進め方は、建物の形状や構造、オーナーの考え方によっても千差万別ですので、当社としても耐震補強工事に関するあらゆる要望に応えられるよう体制を整えています。

飛島建設 高性能オイルダンパーで揺れを制震 耐震工事実施箇所の削減も実現
   飛島建設(東京都千代田区)は、建物の耐震性の向上を図る制震技術である「トグル制震工法」を展開している。
 建物の耐震化といえば、一般的にはブレースなどを設置することによる耐震性能を向上させる耐震工法や、免震装置を設置することにより、地震の揺れを免れる免震工法などが存在する。同社の制震工法とは、前述した工法と異なり、オイルダンパーを使用した制震装置を設置することで振動エネルギーを吸収するという仕組みを持っている耐震補強工法である。
 特徴はこのオイルダンパーが風揺れ、微笑変形から大地震まであらゆる揺れに対応することが可能なものであり、余震対策も可能であり、半永久的に使用できる点が挙げられる。また、ブレースなどの設置による耐震化の工事において課題となるのが、建物の外観が損なわれる可能性がある点だ。
 この点に関しても、トグル制震工法は、オイルダンパーが小型なため、大きく外観を損なうことがなく建物の耐震性能を高めることができる。さらに、高い性能を持つ増幅機構により、耐震補強箇所の数も少なく済ませることができるため、工事にかかる時間、そしてコストも削減することが可能である。

鹿島建設 開口部に対応低騒音耐震補強壁
 鹿島建設(東京都港区)は、低騒音耐震補強壁増設工法を展開している。既存建物の耐震補強工法で最も多く採用されている工法の一つである耐震壁増設工法は、既存の躯体の柱や梁にあと施工アンカーを打設後、配筋をしてコンクリートに打ち込むことで一体化を図るが、アンカー工事の騒音・振動・粉塵が「居ながら施工」を困難にするものであった。同社は、平成12年12月に「膨張・無収縮コンクリート」を不要とする低騒音耐震補強壁増設工法(Kajima No Anchor Wall工法)を開発し、実工事に適用してきた。ただし、適用範囲は無開口のものに限られることから、出入り口や採光窓などの開口部を持つ低騒音耐震補強壁の開発が望まれている中、開口部付き耐震補強壁の増設へ適用を拡大している。
 同工法は、増設壁部分と既存躯体に粗骨材を接着剤で固定した接合部を構成した上で、配筋し、膨張・無収縮コンクリートを打診して耐震壁とするものである。

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