不動産トピックス

クローズアップ 省エネ対策編

2007.07.23 16:16

 省エネ・省コストはビルオーナーにとって、もっとも身近な問題の1つ。電気代やガス代、メンテナンス費用をいかにして低く抑えるか。省エネに優れた各種の設備や機器を導入するとして、現在はどのようなものがあるのか。各メーカーから役立つ情報を集めたので参考にしてほしい。

住友スリーエム 飛散防止効果も有し震災時にも対応レンズなど光学製品技術を応用 200層以上の膜が熱線を低減
 住友スリーエム(東京都世田谷区)が今年7月9日から発売している窓用フィルム「マルチレイヤー”ナノ”70S」は、空調効率を高めコストを削減すると同時に、飛散防止効果によって震災時に割れたガラス片が飛び散るのを防ぐ。
 これまで、窓からの熱発生を抑える効果を得ようとすればするほど、自然光も犠牲にする暗いフィルムを使用するしかなかった。そうなると、結局は室内照明を明るく設定する必要があり、省エネ効果を半減してしまっていたという。しかしこのフィルムは、可視光線は可能な限り通し、熱源である赤外線や皮膚に影響を与える紫外線だけを大幅にカットすることができる。
 コンストラクションマーケット事業部の青柳康博マネジャーは「これが可能になったのは、光学機器などのレンズに使用されていたコーティング技術を応用したからです。このフィルムはわずか50μm(ナノメートル・10億分の1メートルのこと)ですが、さらにその中に、200層以上の膜が入っています。この膜が、特定波長の光を通したり、または反射させたりして、有害な電磁波のみカットしているのです」と語る。
 オフィス内の温度は、窓際とそれ以外で、かなりの差がでる。個別空調では限界があり、効率も悪くなる。しかしこのフィルムを貼れば、室内温度を均一化でき、同時に自然光により明るさも十分確保することが可能だ。金属膜をつかっていないので腐食せず、耐久性にも優れている。

OM計画 自然エネルギー利用し健康的な暮らし提案 ローコストで太陽熱利用官民問わず導入施設増加
 OM計画(静岡県浜松市)では、自然エネルギーを利用したOMソーラーシステムの販売やコンサルタント業務、施工などを事業の1つとしている。
 OMソーラーシステムは太陽電池パネルなど、機械式エネルギー変換タイプとは違い、二重構造になった屋根で太陽熱を吸収し、温まった空気を建物全体に行き渡らせるシステムである。屋根の一部は割れにくいガラス張りとなり、効率的な集熱が可能だ。外気を取り込むので、常時換気しているのと同じ効果が得られる。
 ローテクのシステムといえるが、暖房に対する省エネ効率は非常に高く、年間で30〜60%のコストダウンが見込める。
 夏場にあっても、50度のお湯を供給することができ、余分な熱は建物外部に排出するので、冷房効率の妨げにはならない。
 このシステムは建物の壁や床を暖めるが、仮に100〜150㎡の床暖房に対応できるシステムを導入しようとすれば、イニシャルコストは300万円程度で済み、ランニングコストはお湯を汲み上げる電動ポンプぐらいで、1カ月1000円前後である。
 傾斜のついた屋根にこのシステムを組み込む場合が多いが、もともと設計・施工の自由度が高く、ビルなどへの導入も可能だ。

日本イトミック 使用データ蓄積し省エネ運転可能に 携帯電話を利用し電気給湯器を制御
 日本イトミック(東京都墨田区)は、世界初となる携帯電話による電気給湯器のコントロールシステム「携帯コン」を開発した。このシステムは、NTTドコモの携帯電話で利用できる「iアプリ」を経由し、面倒な給湯器の設定変更などを簡単に行うことができる。技術本部の宮内正稔主任は「各階に電気給湯器が設置されているビルの場合でも、携帯電話で設定変更をし、それを各給湯器へ赤外線送信するだけで済みます」と語る。
 従来なら、同じ設定変更であっても、それぞれの給湯器についているコントローラーで1つずつ操作しなければならなかった。
 そもそも、給湯器とは使用頻度の高い時間帯と、低い時間帯で運転モードを変えることで、コストを削減するために設定変更をする場合が多い。
 「携帯コン」なら、過去2週間の湯沸しデータを蓄積しているので、「省エネモード」に設定しておけば、あとは給湯器が自動的に湯沸しのタイミングを最適化し、実行してくれる。他にも「季節モード」など多彩な運転モードで余分なエネルギー消費を防ぐ。
 またこのシステムを利用することで、運転情報を日本イトミックに送信することが可能になった。これにより、給湯器に不具合が生じた場合なども修理を迅速に行うことができ、急なトラブルにも悩まされなくてすむそうである。

TOTOオキツモコーティングス 壁面や窓ガラスを光が清潔に保つ 大気中の汚染物質分解空気の清浄化にも貢献
 TOTOオキツモコーティングス(東京都新宿区)が開発したコーティング剤「ハイドロテクトクリアコート」シリーズは、光触媒により、塗布された窓ガラスや壁面を、常に清潔に保つことができる。光触媒とは、酸化チタンを利用した触媒であり、光合成によく似た効果を発揮する。
 まず「防汚」だが、油性の汚れを分解し、付着するのを防ぐ。付着したとしても、超親水性により雨などが汚れの下に入り込み、洗い流す。「空気浄化」は大気中の汚染物質であるNOxやSOxを分解し、空気そのものを浄化してしまう。例えば1000㎡に塗布されていれば、その効果はポプラ95本分の分解能力に匹敵。
 「抗カビ・防藻」能力も有する。営業部課長の若松直樹氏は「紫外線があたることで活性酸素が発生し、カビなどの繁殖力を弱めることができます。付着しても雨で流れるので、カビが発生しやすい梅雨の時季は逆に高い効果を発揮できます」と語る。
 窓ガラスに塗れば、クリーニングは6分の1程度の頻度で済み、メンテナンスコストを下げられる。壁面でも、10年以上効果を持続する。
 「ハイドロテクトカラーコート」はこの機能を持った壁面塗料であり、色や風合いのバリエーションが豊富に用意されているので、新築時やリフォーム時にも有用だろう。
 コーティング剤は施工費込みで、1㎡あたり2200円からとのことである。環境に優しいビルをアピールする上でも有効な方法といえよう。

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