不動産トピックス

クローズアップ ビル緑化編

2007.02.19 11:10

 屋上や壁面を緑化するビルが増えている。新築時に導入を義務付ける条例や、2面のクールルーフ推進協議会の記事でも伝えているように補助金や助成金が充実してきたことが理由として考えられるが、企業の技術開発が緑化を容易にしていることも見逃せない。緑化の最新技術を見ていこう。

岡谷鋼機 壁面にポケットを縫製し緑化四季の草花、つる植物に対応ビルの壁面を覆う花と緑のシャワー
 岡谷鋼機(愛知県名古屋市)は、「都市のビル壁面を花のシャワーで覆い尽くす」ことをコンセプトにした壁面緑化システム「ハミングポケット」を開発・販売している。
 「花と緑が身近にある生活都市空間の創造」を基本理念として、平成15年11月に、岡谷鋼機、日本設計、京成バラ園芸、クレアテラネットワーク、太洋工業等の8社が集まり、建築緑化システム研究会を結成して開発に取り組んだ。
 東京ドームのテント屋根で有名な太洋工業の技術を活かしたこの工法は、ポケットを縫製して膜材を建物に取り付け、その後、ポケットに土壌を入れて草花を植栽するという形式をとる。四季の草花から、つたやバラ類まで多彩な草花を植栽することができ、緑だけでなく、見た目の美しさにこだわる花を組み合わせた壁面緑化を行なうことが可能である。他社の壁面緑化とは一味違った「膜を使う」という新しい概念を取り入れているため、建物所有者や設計者の自由な発想を取り入れた緑化が可能である。
 「膜材に印刷ができるため、広告を展開することも可能で、この広告収入で緑化メンテナンスをサポートすることも可能です」(開発本部スカイフロントコーディネーター後藤憲司氏)
 ビルの壁面に限らず、大規模ショッピングセンターや、マンションの壁面、公園や遊園地、結婚式場やイベント会場など、多様な場所への導入を提案していきたいとのことである。

ドコー 屈強性に優れたシステム イワダレソウ採用で歩行や運動が可能に
 ドコー(東京都千代田区)の販売する「リピアンベール」は、宇都宮大学野生植物化学センターの倉持仁志氏によって開発・改良された「イワダレソウ」使用の薄層式屋上緑化システムである。
 イワダレソウとは、沖縄や南西諸島などの南日本ではごく一般的に見かける自生植物で、緻密性に優れ、日本芝の24倍の被覆率を誇るという旺盛な繁殖力を持つ多年生植物だ。この植物に改良を加え、マット状に育成させたのが「リピアンベール」である。
 同製品は踏みつけても状態を維持できる優れた屈強性を持つ。従来の薄層緑化はその薄さのため限られた植物しか育成できず、芝やセダム属植物による植栽が一般的であった。しかしセダム類は上に乗ると植物が傷んでしまうため、人の立ち入りの少ない場所にしか導入できない。同製品はその問題を解消しており、植栽部を歩行できる上、運動することなども可能となる。
 「維持管理コストを抑えることができる点も同製品の特徴です。通常の日本芝の場合は特に、成長した草を刈り込む必要が定期的に生じましたが、同植物は年間1〜2回のメンテナンスで済みます。縦方向ではなく横方向に繁殖するという特性上作業も容易です」(代表取締役松本聡氏)
 価格は平米あたり1万8000円程度からで、初期費用としては同社の従来の製品よりも若干高くなるが、メンテナンスが少なくてすむことを考慮すると、3年目以降はコスト削減となる。

耐根シートの強化に注力 あらゆる緑化施工に対応 50年仕様のアスファルト防水を推奨
 建築防水総合メーカーの田島ルーフィング(東京都千代田区)は、同社がこれまで蓄積してきた防水に関するノウハウを活かしながら、防水層から植栽までをトータルに考えた屋上緑化システムを提案している。
 「屋上緑化を施した後の防水層の改修・修理は、費用も手間もかかるため、予め耐久性に優れた防水層を緑化部分の下に備えておくことが必要となります。当社では日本建築学会の指針に準拠した、耐用年数50年仕様のアスファルト防水も用意するなど、長期間防水層のメンテナンスが不要な屋上緑化を実現します」(営業企画室係長西村陽氏)
 また、植物の根が成長するに従ってコンクリートを破り、防水層に侵入・貫通して起こる漏水事故などの経験から、防水層を保護する耐根層の強化にも力を入れている。高い侵入抵抗性を持つ「ルートガード」と、根を横滑りさせて貫通・侵入を防ぐ「FDフィルム」による2層構造のシステムを採用している。
 景観を重視したインテンシブ(管理)型緑化、ローコストでメンテナンスイージーな工クステンシブ(省管理)型緑化、その中間に位置するセミインテンシブ型緑化など、屋上緑化の目的や条件に合わせて選択可能な各システムの価格は、防水工事費込みで、エクステンシブ型が1㎡あたり2万5000円から。インテンシブ型が1㎡あたり3万5000円程度からとなっており、施設の用途や管理方法にあわせて自由に選ぶことができる。

鹿島 高層ビルに適用可能な壁面緑化 作業性と意匠性が向上室内からの景観も考慮
 鹿島(東京都港区)は、高層ビルなどでの高所での壁面緑化でも安全に管理できる新しい壁面緑化工法として「バーティカル・グリーン・システム」を開発している。
 壁面緑化工法には、壁面にツタを絡ませるタイプや、パネル状の基盤を取り付けるタイプ、ステンレスメッシュにプランターを組み合わせるタイプなど様々あるが、導入可能植物が限定されるうえ、基盤の耐久性、維持管理の作業性、廃水処理、施工コストなどに課題があると判断した同社は、室外に設置されたキャットウォークの下にプランターを組み込み、面状の格子につる植物などを這わせて緑化する方式を採用した。
 面状の格子の内側に設置されているキャットウォークから維持管理作業を安全かつ容易に行なえるというメリットが同システムにはある。高所作業車などは必要なく、高層ビルでも安全かつ容易に管理を行える。また、従来壁面緑化は、屋外から見た意匠性を重視するものであるが、同システムは室内からの景観を考慮している。
 キャットウォーク下部に設置されているプランターは視界に入らないようになっており、意匠性が高い。
 灌水工事まで含めた施工コストは1㎡あたり10万円となっている。なお、このシステムは、日本工業大学神田キャンパスの壁面に適用された。導入植物については、在来種の中から成長速度や面状格子枠との相性、葉のつき方、コスト、質感などを実験により確認し、複数種選択して製品化している。

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