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Future Style総研 ”10年後の30代”の価値観と暮らし方を調査 Z世代の価値観を4タイプに分類
2025.10.20 11:30
日鉄興和不動産(東京都港区)が運営するFuture Style総研は、先月24日、次世代を担う「10年後の30代」の価値観と暮らし方を描き出す調査レポート「Future Style Agenda」を発表した。
同調査は未来を見据えた観点から、街づくりの根拠となる価値判断の軸を生活者の実態からより明確にすることを目的に実施したもの。10年後に30代を迎えるZ世代を対象に、2025年4~6月の3カ月間、デスクトップリサーチと対象者へ1時間半に及ぶディープインタビューによる集計を行った。
価値観や暮らし方の多様化する昨今は、個別事象をリサーチするアプローチでは個別の違いが浮き立つばかりで、未来の30代の暮らしの全体像をとらえることが難しいという課題があった。そこで今回、「『報われない・持たざる世代である』という世代認識」、「『あなたらしさ』が存在することが前提である教育方針」、「SDGs・社会課題が教育プログラムに組み込まれた世代」の3つをZ世代の特性として位置付け、Z世代を16の特徴を踏まえたA~Dのアーキタイプにカテゴライズした。
アーキタイプは「自己定義型×変化志向」のAタイプ、「社会参照型×変化志向」のBタイプ、「社会参照型×安定志向」のCタイプ、「自己定義型×安定志向」のDタイプの4種類と定義。これらのタイプの特徴について「家族観」、「仕事観」、「拠点観」、「健康観」、「所有観」の5観点ごとに掘り下げていった。
24日に行われた社内調査結果報告会の中で、フューチャースタイル総研室 チーフマネージャーの畑中信二氏は「拠点感」の結果について解説。定住意識において、A・Bの2タイプは出生した土地に比較的こだわらず、自身の状況やパートナーの生活圏、子どもの成長に応じて転居や移住を行うハードルが非常に低いことに言及した。一方でCは故郷や親類の居住地に強いこだわりを持ち、Dは居住地のこだわりはないが子育て等に最適な環境を求めて定住する意識が強いと指摘する。
またそれぞれのアーキタイプの傾向を踏まえ、住まいの空間構成要素への考え方も多種多様な結果が出た。具体的な内容について畑中氏はこう話す。
「Aタイプは機能的に必要なものだけを最小限で所有したり、居住地においては仕事の拠点とプライベートの拠点といった形で2拠点を求めている傾向が見えてきています。Bタイプは好みのものや趣味のコレクション、自分の生活を彩るものに囲まれていたい、設備はコミュニケーションツールとして考えている向きが強かった。拠点においては子どもにとっての生育環境のメリット・デメリットを正確に捉えて、特に土地に縛られずに移動して生活していくというのが特徴となっております。Cタイプはコミュニケーションを取れる場所、アクティビティを家の中で完結したい傾向があり、拠点においてはリスク回避のために徹底的に自分で調べたうえで特定のところに住む傾向が見られています。Dタイプは環境を効率化することで空間を最大限取れるようにしていくという特徴や、Bタイプ同様に転勤等で拠点を移動する心理的ハードルが低いという傾向がみられました」
今回の調査結果を受けて、次のフェーズでは4つのアーキタイプの人口分布について検討していく算段だ。今回はZ世代を調査対象としたが、若者像が今後も変わり続けていくことを鑑みて、継続的な調査の実施を見据えているという。
畑中氏は「本調査がこれからのサービスについて考えるきっかけになると思っています。調査結果は住宅開発だけではなく、オフィスや各種不動産サービス開発の参考にしていきたい」とした。