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イトーキ オフィスの生産性に関する研究を開始
2025.08.04 17:02
イトーキ(東京都中央区)は、松尾研究所(東京都文京区)とともに、AI技術を活用した「オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究」を開始した。
昨今はテクノロジーの進歩によりAIによる業務代替や自動化が現実味を帯びる一方で、労働生産性の低さが課題とされてきた。加えて生産性への影響因子は組織によって異なり全体像をとらえることが困難なこと、「そもそも生産性とは何か」の確たる基準があいまいであることなども同分野の研究を遅らせる一因となっていた。
イトーキ 代表取締役社長の湊宏司氏は共同研究の背景について「オフィスづくりというのは、作った後もビジネス環境が変わっていくのでどんどんチューンアップしていかなきゃいけない。そのためにはPDCAをデータドリブンにぐるぐる回していくことが必要ですので、AI、ITの力を使って生産性を上げるためにやっていきたいと思っております」と話した。
共同研究では異なる種類のデータを組み合わせて解析する「マルチモーダル」の技術を用いる。具体的には生体データと位置情報のオフライン・オンラインデータを活用しながら、「生活」、「働く場所」、「移動の仕方」、「コミュニケーション」の4軸をもとに生産性への因果について考察する方針だ。
すでに同社内では2回の実証実験を実施。観察研究ではエリア別にパフォーマンス差が生まれていることを確認し、介入実験では指定エリアでの一定時間以上の作業を促すことで成果の変化を分析している段階となる。ウェアラブルデバイスを活用した分析からは、睡眠時間が5~7時間の範囲で最もパフォーマンスが高まる傾向が明らかとなっているほか、オフィス内での移動の活性化が生産性向上に寄与する可能性が示されたという。
今後は研究初期フェーズでの仮説検証とPoC(Proof of Concept:概念実証)を経て、1000人規模での外部実証を進めていく。またセンシングデバイスやWebアプリによるデータ収集・分析プラットフォームを構築し、顧客向け評価分析サービスとしての提供を目指していく構えだ。