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住宅街に”祭り”コンセプトのホテルが誕生 「OMATSURI BASE中野新橋」オープン
2025.07.21 10:31
宿泊施設の企画・設計等を展開するNowhere Group(東京都中野区)は、東京メトロ丸ノ内線「中野新橋」駅徒歩1分にテーマ型宿泊施設「OMATSURI BASE中野新橋」をオープンした。
同施設は敷地面積約92㎡、基準階面積約60㎡、地上4階建て。築32年で、元はオフィスビルとして運用されていた。空室となっていたビルをリノベーションし、新たに宿泊施設として活用。今年5月に改修に着工し、6月に「OMATSURI BASE中野新橋」として竣工を迎えた。Nowhere Groupはオーナーとサブリース契約を結び、施設の管理運営、清掃まで一貫して行う。
「OMATSURI BASE中野新橋」では「365日、全国各地の祭りを体験できる」をコンセプトに、日本の伝統文化や祭りの趣を施設のいたるところに取り入れた。外観は赤い祭り提灯やのれんの装飾が印象的。エントランスに入ると法被を着たスタッフが出迎え、一人一回おみくじを楽しむことができる。
3~4階は客室で、それぞれ広さは約70㎡。各部屋ダブルベッドが3台設置されており、5~6名でのグループ宿泊が可能だ。ベッドわきには照明代わりの赤白提灯を配置。室内に畳敷きの小上がりを設えることで「和」を強調した。客室の壁面にはホテル周辺のマップと、中野新橋のお店や名所の絵が描かれたかるたを備えた。マップとかるたを見比べながら、街の魅力を知ることができる。
屋上には縁日を用意。ヨーヨーすくい、輪投げ、スーパーボールすくいの3種類のうち、宿泊者は好きなコンテンツをひとつ選んで楽しむことができる。現在は宿泊者に加え、一般客も有料で利用可能。今後はイベント連動など、さらなる展開も予定しているという。
繁華街にはない町との連携 イベントの開催なども視野に
「中野新橋」駅前には神田川を見下ろせる遊歩道があり、少し歩けば多くの住宅がひしめく閑静なエリアとなる。丸ノ内線で新宿から3駅と都心からのアクセス性が高い一方、ホテルや商業店舗の競合はほぼないことも特徴だ。繁華街とは真逆の立地といえる「中野新橋」にコンセプトホテルの開業を決めたのにはわけがある。
代表取締役CEOの竹内剛氏は「当社が狙うのは観光業のメインとなるような場所ではなくセカンド的な立地です。ランドマークが少ない住宅エリアで新しいことを始めることにより、地域の方々を巻き込んで一緒にまちを盛り上げたいと考えています」と話す。
近隣事業者との連携はすでに始まっている。例えば入浴。客室内はシャワールームのみとなる代わりに、近隣の老舗銭湯「清春湯」に入浴できるチケットを宿泊者全員に提供する。また同施設のはす向かいにあるカフェ「TRICHROMATIC COFFEE」と提携し、宿泊者は同店で朝食のサービスを受けられる。今後は「OMATSURI BASE中野新橋」内に縁日メニューをそろえた軽飲食店舗の開業、2階の客室の整備、地域の振興組合と協力した祭りの開催などを仕掛けたいという。
「20~30代のファミリーやインバウンドの需要を想定しています。プレ宿泊では約9割のお客様がインバウンドの方。海外のSNSに発信してくださったことで話題になりました。『宿泊施設をやりたい』ときいてマイナスなイメージを持たれるオーナー様は多いと思いますが、オーナー様をはじめ、地域の方々からはポジティブな反応をいただいています。今後は売上に応じてオーナー様にインセンティブが入る仕組みもできると考えています」(竹内氏)。
「OMATSURI BASE中野新橋」の宿泊料金は1泊5万円から。今後は海沿いのリゾートエリアを中心に拠点を構える「OMATSURI リゾート」、体験型重視の分散型ホテル「OMATSURI ビレッジ」などを展開していく方針だ。