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森ビルがTNFD情報を開示 各ヒルズにおける土壌の醸成が明らかに

2025.07.14 11:56

 森ビル(東京都港区)は先月30日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づき、これまでの都市づくりを通じた生物多様性に関する情報を開示した。
 TNFDは2021年に発足したグローバル・キャノピー、WWFなどが支援する国際的な枠組み。世界の資金の流れを「ネイチャーポジティブ」に貢献できるように変えることで、生態系や自然資本を守ることを目的としている。森ビルは今年2月にTNFDフォーラムに参画。2012年竣工の「アークヒルズ仙石山森タワー」をはじめ、これまで都市開発で整備してきた生物多様性の取り組みについて、TNFDの枠組みに基づき開示する準備を進めてきた。
 自然関連情報の分析の結果、「アークヒルズ」、「六本木ヒルズ」、「虎ノ門ヒルズ」、「麻布台ヒルズ」などの各ヒルズにおいて、多様な生物が暮らせる緑地と水辺が整備されていることが認められた。加えて都心部における多様な昆虫と植物によるエコロジカルネットワークの形成により、東京都の絶滅危惧種に指定されている180種の昆虫の往来を実現、生物多様性の維持・拡大に貢献していることが判明。各ヒルズ内開発時の設計思想、竣工後の管理・運営、時間の経過による土壌の熟成等により、土壌微生物の多様性が豊かであり、里山林土壌に類似した物質循環に関わる機能を持っていることも明らかになったという。
 先月30日に行われた報道関係者向けの説明会のなかで、経営企画部兼サステナビリティ委員会事務局の伊藤椋平氏は「2012年竣工のアークヒルズの仙石山森タワーでは、人と自然が共存する新たな都心の緑を実現しました。過去にはJHEP認証でAAAを国内初で取得、東京都の『江戸のみどり登録緑地』の優良緑地にも認定していただいております。今後も仙石山森タワーで得た知見や経験を生かしながら、ほかのヒルズにおいても生態系配慮の取り組みを深め、都市における価値ある緑地の創出に貢献していきたい」と話す。
 TNFDをめぐっては、ここ数年で各デベロッパーの動きが盛んな様子がうかがえる。2023年に東急不動産ホールディングスが「TNFDの自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク ベータ版v.0.4」を参照したTNFDレポートを国内不動産業で初めて策定したほか、今年4月には三井不動産、東京建物等もそれぞれTNFDの提言に基づき、自然資本や生物多様性に関連した情報を開示したことを発表している。生物多様性に関わる不動産事業者の動きはさらに活発なものとなるだろう。




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