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アフターコロナ見据える中小ビル 短期で需要継続もニーズ変化に準備 感染対策強化で安心感える

2020.06.22 17:24

 コロナ禍により、感染拡大を懸念してテレワークや在宅勤務を実施する企業が増加。その影響が不動産賃貸業にも波及し、オーナーの賃貸収益にも支障が生じた。東京都港区の三田に「万代三田ビル」を保有するエム・アイユーコーポレーション、千代田区内神田に「豊島屋ビル」を保有する神田豊島屋、千代田区平河町に「朝日ビル」を保有する東洋リンクス、これら3社はテナントの賃料負担の厳しい状況から、一時的な減額や支払期限の先送りなどで対処。また消毒液等々を自社で確保しテナントへ配布する、清掃・除菌業務を増やしテナントの不安を軽減するなど、賃料とは別のサービスで対応した。結果、コロナの影響で退去するテナントはなく、むしろ継続して入居を望む様子が見られる。
 一方3社とも、アフターコロナのビル経営について現時点では、不安材料は少ないとのこと。背景には、テレワークや在宅勤務を実施していたテナントが6月以降からは徐々に戻り始めており、継続してテレワークを実施しても、誰かしらはオフィスへ出社している。中には「オフィスのほうが集中できる」や「働く場所と暮らす場所は分けたい」との声もあり、シェアオフィスやサテライトオフィスの変わらぬ需要を指摘するオーナーも。エム・アイユーコーポレーション・代表の唐木元彦氏は「急激にワークスタイルが変化するわけではなく、変化が進むとしても数年は必要と思われます。なので、直ぐにオフィス需要が無くなることはないでしょうが、アンテナや感度を高く持ち、不動産に関する情報は引き続き収集していきたい」と語る。
 また平河町にオフィスを構える東洋リンクスは「立地環境に適したビル経営やリーシングを行えば、まだまだ高稼働は持続する」と見ている。実際、同社の保有の「朝日ビル」は、官公庁が集積する永田町に近く、士業関係のテナント需要は強い。また「豊島屋ビル」を保有する神田豊島屋は、丸の内・大手町に近い特性を生かし、大手企業と取引や商談の多い小規模企業のレンタルオフィスも用意。同社・代表取締役社長の木村倫太郎氏は「オフィスに求められる機能や環境の変化は何かしら来るかと思われますが、今から対処するといっても時期早々の気がします。また具体的な対処方法も定まっていない今、闇雲に投資を行うことは禁物」と語る。
 3社とも飲食店などの店舗テナントの入居は断っている。唯一、その点については「良かった」と語る。来客型の店舗や観光施設、宿泊施設などの需要は、今後大きく減少すると見ており、これら需要の抜けた穴を何が補填してゆくのか、注視している。唐木氏は「コロナへの感染を懸念し、またテレワークの推進でテナントの借りる床面積が減ると、貸ビル市況にとって大きな痛手になるかもしれません。ですがソーシャルディスタンスが求められる様になると、オフィス内における1人分のスペースが広くなり、従前ほどとは言わなくとも危惧している状態での床面積の減少はないと思います」と語る。

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