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広がる「ステイホーム」支援 京都では宿泊事業者が食を提供

2020.05.11 17:06

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、緊急事態宣言が発令されてから1カ月を迎えようとしている。政府は延長に向けて動き、しばらくは外出自粛の要請が続くとみられる。不動産業界にも暗雲が立ち込めるなか、「ステイホーム」支援も始まっている。

5年で52施設展開も創業後初の困難に直面
 京都市内で不動産売買や宿泊施設の管理運営を行うレ・コネクション(京都市下京区)は運営する飲食店「紡 Dining」にて手作りした自家製弁当の提供を京都市内に展開している施設外玄関帳場をはじめとする7拠点で始めた。
 同社は2016年の創業以来「人を結び 街を紡ぐ」を企業理念として、京町家の保存活用に貢献するべく、京町家をフルリノベーションし一棟貸しの宿泊施設へと再生する事業を展開。それらの施設を「紡 Machiya Inn」としてこれまでに京都市内で52施設を展開。「紡 Dining」は3月20日にオープンし、食を通して宿泊者と地域住民との交流の場としての役割を期待されていた。
 一方でコロナ禍の影響は大きくのしかかった。同社代表取締役の奥田久雄氏は「コロナウイルスの一報が入ったのが春節の直前だったこともあり、その頃から影響が見られ始めました」と話す。当時は中華圏の宿泊者が減少して、その後全体の観光客が激減。3月の訪日外客数は前年同月比93%減の19万4000人。国内の移動も自粛ムードが広がる中で宿泊施設の稼働率は厳しさを増していった。同社でも「8割程度の社会的接触減」を目指し営業の縮小を決断。「紡 Dining」も4月13日から営業自粛となった。
苦境でも「明るさ」を 計4日間800食配布
 同社にとっても苦しい環境下。そのなかで今回の支援の取り組みを行うのは地元への「恩返し」からだ。
 「自粛が続くなかで食材の卸業者の販路の減少や家庭内でのストレス蓄積、休校の影響で日々の食に困る子どもがいることなどを報道で耳にしました。また当社の宿泊施設のレセプションスタッフなどにも休業をお願いせざるを得ない状況があります。このようななかで、当社ができることとして企画したのが、今回の自家製弁当800食提供の『ステイホーム』支援でした」(奥田氏)
 この自家製弁当の提供は「紡 Dining」に加え「紡 松原御幸町もみじ邸」、「紡 伏見稲荷」、「紡 伏見稲荷別邸」、「紡 東寺東門前」の4宿泊施設、同社本社と下京区東塩小路町にある同社新社屋の7カ所となる。
 初開催となった4月29日。前日にはチラシを配布し、それを見た人が来場。また通りがかった人も「主旨をご説明すると受け取っていただくことができました」という。
 認知も少ない中での開催となったが、多くの感謝の声が届いたようだ。
 「『ありがとう』と笑顔を頂戴し、とても嬉しく感じました。また『お礼に』ということで飲み物を差し入れしてくださった方もいらっしゃいました。日頃の恩返しに『みなさまを笑顔にしたい!』という思いで行った企画でしたが、私たちも勇気づけられる形になりました」(奥田氏)
 当日の企画に参加した同社広報担当者も「思いやりや笑顔は連鎖します。それぞれのちょっとした思いやりや笑顔が、今を乗り切っていくために必要だなと感じました」と話す。
 同社では同様の企画を今後、5月9日、16日、30日に実施する。収束の見通しがまだつかないなかでも、それぞれが支え合って困難を乗り切っていこうとしている。

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