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ソニーコンピュータサイエンス研究所 六本木ヒルズで協生農法の実証実験

2019.11.05 16:00

ビルの屋上で環境破壊防ぐ研究
 ソニーコンピュータサイエンス研究所(東京都品川区、ソニーCSL)は、森ビル(東京都港区)が運営する複合施設「六本木ヒルズ」の屋上庭園で、11月より都市空間における協生農法に関する実証実験を開始した。
 人類は長い期間、生産性と環境破壊のトレードオフの中で農業を営んできた。その結果、農業の大規模化や単作化が進み、生産性が著しく向上する一方で農地の砂漠化などの土壌劣化が進行し、急速に環境破壊が進んでいることも事実だ。
 協生農法とは、生産性と環境破壊のトレードオフからの脱却を目指した新しい農法。多種多様な植物を混生・密生させることで、土地を耕さず、また肥料や農薬も一切使わずに、植物本来の特性を生かして生態系を構築し土壌の機能を回復する。食料生産だけでなく、環境や健康に与える影響までも包括的に考慮した立体的な生態系の活用法であることが特長。今回の実験のように、人間活動が加わることによって、自然状態を超えて生物多様性・機能が高まった状態は「拡張生態系」と呼ばれ、学術的に定式化されている。
 また、協生農法の植物育成は、既存の都市景観に変化をもたらすため、森ビルは、極力品種数を増やし、生物多様性に配慮した都市緑化を推進してきた。協生農法の考え方を導入することで、さらに都市における生物多様性を促進できるほか、植物を育てながら同時に空気を清浄化したり、ヒートアイランドやゲリラ豪雨などの影響も緩和する様々な生態系サービスを、より高いレベルで育むことができる可能性が広がる。
 今回の実験では、2015年から行われている西アフリカでの実証実験をはじめ、今までに露地栽培で得た知見などを元に、協生農法の導入と拡張生態系の実装を建物の屋上にて行う。具体的には六本木ヒルズけやき坂コンプレックスの屋上庭園に、3パターンの異なる土壌を用意した特別なプランター5個を設置。プランターには、野菜・果樹を中心に、その周囲に100種に上る植物種を配置し、生育状態の変化を観察する。プランター以外にも、「六本木ヒルズ」の屋上庭園の土壌に直に200種ほどの有用植物を植える。
 ソニーCSLは調査だけでなく、設置するプランターを生態系ネットワークを体感するための装置と捉え、様々な場所に展開。拡張生態系に包まれた都市を提案し、実験をもとに開発する「協生理論学習キット」やワークショップなど、協生農法の学習プラットフォーム化を目指す。
 森ビルは、都市と自然が共生した持続可能な都市づくりを深化させるとともに、今後もヒルズを実証実験の舞台として様々なパートナーに提供していく考えだ。

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