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三井不動産 ライフサイエンス推進事業を拡充 製薬の街・日本橋本町エリアに3物件取得

2018.11.05 17:13

 三井不動産(東京都中央区)が、東京・日本橋本町エリアですすめているライフサイエンス分野の拠点整備をさらに拡充する。エリアの特性を生かした開発で、ライフサイエンス産業の発展にも寄与したい考えだ。

 三井不動産の本拠地である日本橋本町は、古くから薬種商人が集まり商いを続けてきた。現在も多くの医薬関連企業が拠点をかまえており、2014年には東京都の長期ビジョンにおける「国際的なライフサイエンスビジネス拠点」として位置付けられている。
 三井不動産ではその歴史的経緯や特性を踏まえ、同エリアに立地する自社保有ビルに医薬をはじめとする多くのライフサイエンス関連企業を誘致し街の機能拡充を図ってきた。2016年にはライフサイエンスビジネスを支援するライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J、東京都中央区)を設立。医薬関連の企業・ベンチャーが多く入居する「日本橋ライフサイエンスビルディング」などに、LINK-Jが運営するライフサイエンス関連企業向けシェアオフィスやカンファレンス施設を整備してきた。
 今回の拠点拡充では、エリア内で新たに「上野ビル」、「LAUNCHビル」、「福島ビル」の3棟を取得するとともに、「MFPR日本橋本町ビル」を借り受けた。これらのビル内にライフサイエンス関連企業向けのシェアオフィスなどを整備し、既存の「日本橋ライフサイエンスビルディング」、「日本橋ライフサイエンスビルディング2」、「日本橋ライフサイエンスハブ」、「東硝ビルライフサイエンスフロア」と合わせて8棟体制で関連業種のさらなる集積を図る。
 「日本橋ライフサイエンスビルディング」には、都市部立地としては日本初の「シェア型ラボ」を整備する。約430㎡の施設内は利用者共用のオープン型実験施設や個室タイプの実験室、オフィスエリアなどからなる。1~2名の利用者10~15組、3~4名の利用者3~4組の最大約20組の利用を想定しており、すでに21組の申し込みがあるという。施設の運営は技術系ベンチャーへの投資・支援事業を行うBeyond Next Ventures(BNV、東京都中央区)が実施し、創業支援という側面も持つ。
 さらに三井不動産は今年10月、BNVが運営する投資組合に対して投資を行った。大学や研究機関が開発した技術を実用化し、ライフサイエンス系のベンチャーの支援につなげるための投資としており、拠点の整備と合わせて新たな産業創造を加速させていくという。
 三井不動産常務取締役でLINK-J理事の植田俊氏は10月30日に開催された記者発表会で「日本橋本町にライフサイエンス企業をさらに呼び込みたい。ビジネスとしてだけでなく、ひとつの街をつくっていきたい。そしていずれはエリアを超えて、世界規模のライフサイエンスコミュニティをつくりたい」と強調する。
 培われてきた街の特性を強化しつつ、新たな機能を付加することで次のステージへと進んでいく。街の発展と産業発展のベクトルが密接に結びついた、新形態の開発が日本橋本町で進行している。

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