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軒先/吉野家HD 「軒先レストラン」件数伸ばす

2018.09.25 15:10

飲食店シェア、オーナーにも妙味
5月にサービススタート
 軒先(東京都千代田区)と吉野家ホールディングス(東京都中央区)が共同運営する「軒先レストラン」。2018年5月より運営をスタート、都内での軒先レストラン登録件数が50店に到達。これを機に登録対象店舗を東京都内から1都3県へ拡大する。
 「軒先レストラン」は既存の飲食店舗と、新しく開業したい人とをつなげるシェアリングプラットフォームだ。飲食業界は廃業率も高く、大手チェーン店であってもそのリスクを抱えている。他方、新しく飲食店を開業したい人にとってネックとなっているのが初期コストの高さ。物件賃借や内装工事まで合わせて、1000万円弱かかることもある。
 一方で「足もとで開業の需要は増えている」と指摘するのは軒先代表取締役の西浦明子氏。その背景のひとつとなっているのは「副業解禁」。いくつかの企業では社員の副業を解禁している。そこから「自分の技術でどこまで通用するのか」と思い立ち、飲食業を始めようとしている人も増えているという。そこに加えて、飲食店勤務者の独立開業需要も根強い。
 「そこで今回、始めたのが『軒先レストラン』です。飲食店開業希望者である借り手と、アイドルタイムを活用したい店舗運営者側とをマッチングします。2018年9月1日現在の運営中店舗は11店舗で、利用希望者・登録店舗含めて順調な滑り出しだったと思います。今後は1都3県へ拡大していき、実証実験のフィールドを広めていきます」(西浦氏)
既存店舗の収益向上策に空室リスクの軽減に寄与
 飲食店のアイドルタイムを活用したシェアリングは少ない。特に起業前のプレマーケティングとしても活用できるものは「軒先レストラン」が初だった。
 「軒先レストラン」のスキームはこうだ。ビルオーナーから許可を得た店舗運営者が「軒先レストラン」に登録。利用希望者はそこから開業場所や利用料金などに見合った店舗を見つける。契約は1カ月ごとで更新となる。
 今回、「軒先レストラン」事業を共同で進める吉野家ホールディングスグループ企画室特命担当部長の武重準氏は飲食店舗のシェアリングの難しさについて「たとえば設備や備品に破損があった場合の責任区分」を指摘する。
 「店舗を貸す運営者側、借りる利用者側にとってもこの部分はネックとなっていました。『軒先レストラン』では保険や防犯カメラを活用することよって、この問題をクリアにしています」  利用希望者にとって、飲食店舗の間借りが実現できるメリットは大きい。先述のように新規開店となれば1000万円弱かかる。ちなみに「吉野家」の場合には「4000万~5000万円の投資が必要になる」(武重氏)という。「軒先レストラン」を使えば、「利用料金を除けば、10万円前後で開業することができる」。
 一方で課題もある。それはビルオーナーからの許可が下りない事例もあることだ。
 店舗のシェアリングを賃貸借契約書に記載していることは少ない。そのため拒絶されることも少なからずあるという。西浦氏は「シェアリングに対する認知がまだ低いことも一因」と分析する。ただビルオーナーにとってもメリットは大きい。
 「廃業率が高い飲食店舗ですが、ビルオーナー側の視点からみれば『空室リスクと隣り合わせ』という見方もできなくありません。たとえば、最近居酒屋やダイニングバーを中心にランチタイムの営業を見直す動きがあります。ランチ営業は薄利多売となるため、夜の時間帯を主に営業してきた居酒屋にとっては割に合わないことも多くあるようです。これらの店舗にとって、昼間の時間帯をランチ営業が得意な方に厨房を利用してもらうほうが収益改善につながります。ビルオーナーにとってもテナントの経営が安定するため、空室リスクを抑えていくことが可能になるでしょう」(武重氏)
 広がるシェアリングエコノミーは無視できない潮流となっている。ビルオーナーもその流れをうまく活用したい。
途上のシェアリング 可能性は幅広く
 日々、新しい形のシェアリングが生まれる日本。保険業界でも対応した保険商品の販売を展開する。今後、副業需要が高まれば、気軽に個人でも商売を行えるシェアリングはさらに人気が増しそうだ。
 2009年の創業以来、シェアリングエコノミーのトップランナーとして走り続けてきた西浦明子氏。スペースシェアサービス「軒先ビジネス」に始まり、パーキングシェアサービス「軒先パーキング」を展開。今回第3弾として始めた「軒先レストラン」も成長を遂げている。
 見据えるのは次のシェアリングサービス。「日本にはまだ存在しないシェアリングも多くある」と指摘する。一例として挙げるのは「ヘルスケアやエンターテイメント」。「『軒先ライブ』などがあってもいいかもしれない」と話す。
 「軒先レストラン」の次に出てくるスペース有効活用のプラットフォームは何か。そこにも目を向けておきたい。


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