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地盤ネット総合研究所 微動探査で地盤の揺れやすさ測定

2018.08.13 14:54

調査費8万円~、1時間程度で終了の簡単調査法
 地面は立っているだけではわからないが、わずかに揺れている。その揺れの影響は交通状況に起因することもあるし、海が近ければ波浪による振動もありうる。また、早く揺れが伝わる場所と、ゆっくり揺れが伝わる場所。その違いは見えないので、地震があった時に起きた揺れの差は追究できないことも多いという。
 立地や建物が同じように見えても、通りを挟んで被害が大きく異なることが2016年の熊本地震には見られた。ビルオーナーにとって、非常に気になるところだろう。
 地盤の揺れやすさを測るために、微動探査というシステムがある。地盤ネット総合研究所(東京都千代田区)の「地震eyeR」だ。民間企業が戸建て向けに導入した初の微動探査システムということもあり、話題を集めた。同システムではその土地がもつ揺れの周期の中、最も大きな揺れが測定できる。
 「地盤の揺れやすさは、場所によって異なります。それは、各々の場所で地質や地形が異なり、揺れの伝わり方が異なるからです。『地震eyeR』は揺れやすさをピンポイントで測り、表層地盤増幅率というデータを出せます。これを、上物の適切な耐震対策につなげられます」と語るのは、地盤ネット技術部長の小林智浩氏だ。
 実際、土地の揺れやすさを測るためには微動探査機を3台ないしは4台使い、その2種類の測定データで解析を行う。揺れやすさについては、ランクAからEの5段階があり、解析データを「診断結果」として顧客に提供している。なお同システムの調査費は8万円。土地の空きスペースに置くだけで、1時間程度で終了する。
 「東日本大震災もそうでしたが、長くゆっくりした地震の時には、地震の卓越周期と建物の固有周期が共振し、非常に大きく揺れます。これまでも長周期の揺れに備えるためにスカイツリーのような細長いものや新宿の超高層ビルは、微動探査で地盤の周期を調べて設計に生かしてきましたが、調査に使う地震計は大きなもので扱いが難しい。今回弊社で提供している『地震eyeR』の地震計は小型で扱いやすく、調査期間も短くなったため活用の範囲が広がりました」(小林氏)。
 「地震eyeR」による測定結果は、約1週間後に顧客へ送付される。
 こうした土地の揺れやすさを、研究している機関がある。国立研究開発法人の防災科学技術研究所だ。同研究所では、「J-SHIS」という、全国の土地の揺れやすさマップを公開している。
 「ここに表示された赤い箇所が揺れやすく、オレンジの箇所が中程度です。一方、グリーンのところは揺れにくいとされています。これはあくまでも200m四方の平均値にすぎないので、微動探査で個別に調査するべきです」(小林氏)。
 また小林氏は「J-SHIS」の揺れやすさマップや、地盤ネットで提供している「地盤安心MAPRプロ」で確認してから、同システムをはじめとする微動探査で正確に測定してもらうことが大切だという。
 「揺れやすい場所は、地盤もあまりよくありません。杭の工事も含め、費用がかかる土地です。もし土地に選択肢があり、利回りが同じくらいであれば、地震のリスクがないほうを選んだほうがいいでしょう」(小林氏)
 今年3月に東京都が、旧耐震基準で建てられた大規模な建物の耐震診断結果を発表した。同社はこの結果をもとに、同システムを使って都内のビルの地盤の揺れやすさ調査を進めていく意向だ。想定よりも揺れやすい場所や、思ったより揺れにくいという可能性もある。耐震化を検討しているビルオーナーは、一度相談してみては。

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