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渋谷区「保育園ファンド」満額成立 テーマ型不動産投資が社会課題を解決

2017.09.04 15:35

 投資の世界において台頭してきている「ESG投資」。環境(Environment)、社会(Social)、G(Gorvenance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資のことを指す。従来、利回りや安定性が重視されてきた不動産投資。だが不動産投資の世界でも「ESG投資」といえるものが出現している。

 不動産投資型クラウドファンディング「Croud Realty」を運営しているクラウドリアルティ(東京都千代田区)は先月17日より「渋谷区上原シェア保育園」ファンドの募集を開始。募集金額が1億7400万円、27日23時59分に募集締切という「超短期決戦」となったが、27日に満額達成、プロジェクト成立となった。
このファンドはシェアハウス併設型・企業主導型保育所事業を行う予定の土地を取得し、施設運営者に対する賃貸および売却を目的とした投資を行うものである。
 保育施設の運営は東京都西部を中心に幼稚園や保育園を中心に複数の施設運営の実績を有する正和学園(東京都町田市)が担い、シェアハウスに関しては「Miraie」の運営経験を有する佐別当隆志氏が代表を務めるmazelが運営を行う。
 これまで不動産投資においても保育園ファンドは珍しい。鬼頭氏は今回のプロジェクトについて「今年の4月頃に話を頂いて準備を進めてきた案件。2つの社会的テーマに沿ったものになっている」と話す。
 1つは待機児童だ。東京都だけでも8586人の待機児童がいると言われているが、そのなかでも渋谷区上原地区は区内で待機児童人数が最も多い地域と言われている。「内閣府が進める企業主導型を活用し、地域枠を開放して課題解決の一助となることができるのではないか」と鬼頭氏は話す。もう1つのテーマはシェアリングエコノミー。mazelの佐別当氏はシェアリングエコノミー協会の事務局長も務めている人物。また渋谷区はシェアリングエコノミーを区としても推進していることから、「今回のプロジェクトにマッチした場所です」(鬼頭氏)。
 不動産投資としての意義も高い。税引前の想定利回りは6・5%。用地を取得し正和学園に賃貸するもので、安定的に地代が入るためプロジェクトは他に類例を見ない挑戦的なものだが、不動産投資としては非常に堅実なものとなっている。
 超短期決戦であったものの多くの支持を得て、無事成立となった同プロジェクト。鬼頭氏は「テーマに共感してくれた投資家も多いのではないか」と分析する。新しい不動産投資の形となりそうだ。

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