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スマホが音声自動認識、資料を自動作成

2017.08.28 17:05

建築現場の従来作業時間を大幅削減
「働き方改革」の波は建設業界へ。就労者の高齢化を背景に人手不足が顕著な建設業界の業務効率化を目指し、IT技術の活用が進められている。

 2016年より建設業界向けに音声認識を活用した新サービスの開発・販売を行ってきたアドバンスト・メディア(東京都豊島区)は9月1日より新たなサービス「AmiVoice スーパーインスペクションプラットフォーム」の販売を開始する。各種現場での業務を効率化するもので、取締役執行役員の立松克己氏は「人手不足に起因する長時間勤務を軽減できる」と自信を覗かせている。
 同サービスは音声認識を活用したスマート端末用(iPad、iPhone)の建築工程管理のプラットフォームサービスとなる。配筋検査・配筋写真管理・建築仕上げ検査といった3つの検査・管理をワンストップで行うことで建設現場における作業効率の向上を実現する。
 マンション建設の現場において配筋検査と仕上げ検査に要する期間は約1年といわれており、負担が大きい業務だ。配筋検査は鉄筋が図面通りに正しく配置されているか確認するもので、現場へ黒板、図面、カメラを持ち歩き、検査カ所ごとに階・部位・符号・断面図等の情報を黒板に転記して撮影を行う。さらに事務所に戻ってから撮影データをエクセル等に添付し、該当する場所・指摘事項・是正後のコメント等をパソコンで再度入力していた。コンクリートを流し込むと鉄筋が確認できなくなるため、写真資料として保管する必要に迫られるのだが、その資料は膨大だ。一方、仕上げ検査の作業も大変だ。完成直前に建物内を巡回し、壁や床等に汚れや不具合がないかチェックする。これまでは検査表に手書きで不具合を記載しており、記入量が多く検査しながらの作業が難しい。そして不具合が見つかれば協力会社ごとに資料をコピー・マーキングし、FAX送信していた。膨大な時間と労力を必要とする作業だったのである。
 同サービスではこうした作業を音声認識とスマート端末で即時データ化し、業務負担を大幅に軽減することに成功した。まず、図面や作業指示書、マニュアル、色見本、各種帳票、写真等のデータをサーバー上に保存・共有する。手持ちのスマート端末ですぐに確認できる。そして配筋検査では、検査したいリストを選択し、スマート端末のカメラで是正前後の写真を撮る。検査カ所の指示事項や検査コメントはスマート端末に向かって話せば音声入力で自動的に記載される。指示事項と写真も自動で連結され、エクセルやPDFデータで出力可能となる。仕上げ検査も点検・検査場所を選択し、室名・部位・指摘事項を一気に話すだけで簡単に検査記録が作成できる。写真も添付でき、パソコン上から各検査情報のデータ検索、エクセル・PDFデータで出力できる。黒板や図面、カメラなどの備品を持ち歩く必要がなく、資料作成や写真の照合等の事務作業を行う必要もない。同社の音声認識は建設業界向けに開発され、難解な建設用語にも対応できるのが強みだ。
 立松氏は「今回は建設業界向けに開発したが、来年春頃を目処にビルメンテナンス会社向けのサービスを提供したい」と抱負を述べており、今後はビル管理の現場における業務効率化も進みそうだ。

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