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エストサービス コミュニティスペース併設型の不動産店が話題に

2012.11.05 16:55

 賃料が底を打ち、空室率にも改善の兆しが見え始めたといわれる不動産賃貸市況。オーナーが稼働率改善への努力を続けなければならないことに変わりは無いが、依然として仲介業者の営業力や情報力に頼りがちなオーナーも少なくないのではないだろうか。こうしたなか、新たな「機能」を付加した不動産仲介業者が話題になっている。神奈川県川崎市を地盤に不動産賃貸・売買仲介などを行うエストサービスがこのほどオープンさせた「hoome」は、端的に言えば「コミュニティスペースを併設した不動産屋」だ。
 東急田園都市線「宮崎台」駅からすぐの「hoome」の外観を見て、不動産業と気付く人はいないに違いない。物件情報を貼った看板がないどころか、表からは「不動産」の文字すら見当たらないのである。室内に入ればカフェの雰囲気で、コーヒーの香りすら漂う。マガジンラックや書架に並んだ本も、不動産関連は少数派。不動産業務はスペースの奥に配置されたカウンターで行うが、入居者募集情報は基本的にネットで流すため支障はないという。
 ソファとテーブルが置かれたスペースの利用には月額5000円(税別)の会員登録のほか、1日ごとのコースなども用意。利用者はドリンクが飲み放題となるほか、電源とwifiも使用できる。不動産オーナーにも、2年間会員登録すればその間の仲介手数料が無料となるなどの特典を用意。またコンサートや様々な講習会などイベントも開かれているが、満員となることもあるなど地元の人々にも浸透しつつあるようだ。
 「最近、街にコミュニティが不足していると感じ、こうしたスペースを併設した店舗としました。街に暮らす人々の拠点となれば」と話すのはエストサービス代表の榎本正次郎氏。「hoome」が持つ機能は、不動産仲介業の営業力と直結するものではない。しかしあらゆる分野において多角的な展開が必要とされている昨今、不動産業も例外ではない。不動産業が街と深くかかわる業種である以上、その魅力向上へ向けた施策は必要だ。営業力強化が目的ではないにせよ、「hoome」の取り組みは、不動産業が今後果たすべき役割の一端を気付かせてくれる。

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