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<新事業戦略>アールプロジェクト コア事業を不動産投資・開発事業にシフト リーシングからサブリース・PMなどの対応が可能に近く、不動産私募ファンドも組成

2006.07.10 11:45

 平成13年に発足し、一躍『ビル再生』の旗手となったイデーアールプロジェクトは、昨年10月に経営陣のMBOにより、社名をアールプロジェクトに改めている。戦略を代表取締役社長永井好明氏に聞いた。

 「空ビルやマンションの再生を行う若いクリエイター集団」  これが以前のアールプロジェクト(東京都千代田区)の印象であり、事実、ビルオーナーから依頼を受けて、不動産の収益・価値を最大化するための再生・プロデュースをコア事業として展開してきた。しかし、現在は自己投資による不動産開発にシフトしつつある。
 「当社のバランスシートおよび共同投資による開発案件が増えました。共同投資の金額もあわせると、ここ2年で120億円~130億円程度の不動産開発を行っています」(永井氏)
 2007年3月期の売上高は30億円、経常利益3億円を見込み、08年3月期には売上高55億円、経常利益6億円を目指す。共同投資による開発でも、物件の仕入れから企画、マネジメント、テナント誘致、売却業務を中心的に行い、開発リスクを共有しながら事業を推進する。渋谷・目黒・世田谷区および港区の一部を中心に、10億円~50億円規模の開発を数多く抱え、近く、不動産ファンドも組成するという。
 「リノベーションやコンバージョンなどのビル再生事業は、建物の構造やオーナーの資金的な状況によって、年2~3件程度しか手掛けられません。これでは到底コア事業には成り得ないため新規開発案件にも注力しているのです。ただし、ビル再生事業を捨てたわけでなく、魅力的な物件があれば積極的に手掛けていきます」(永井氏)
 積極的に投資・開発しているのは中小規模の商業施設。超一等地ではなく、メイン通りの裏通りが多い。店舗の集積で勝負できる大型物件や商業集積地と異なり、企画力とリーシング力が問われるが、成功すれば高い収益が期待できる。事業構成の6割程度が商業施設で、残りの2~3割がSOHO含むオフィス、1~2割がレジデンスだという。ビル再生に関しても、以前のようなデザイン改修や用途変更だけでなく、リーシングやPM、サブリースまで一貫して引き受けられる体制に変化している。
 また、変わったのは業務内容だけではない。働くスタッフの意識も一変した。
 「以前は、いい意味でも悪い意味でも『素人集団』。だからこそアイデアが生まれ、思いもよらないバリューアップが可能でした。しかし、事業を推進していく上でどうしても甘い部分があったと思います。そこで、社内体制を改めるためにMBOを実施し、不動産・建築業界の経験者を採用。業務区分とフィー形態を定めて『プロ』として仕事に取り組める体制を構築しました」(永井氏)
 1年で社員数(役員含む)は倍増し、20人強になった。プロとしての仕事にこだわるが、持ち味である自由な発想による企画力は失っていない。
 「デザイナーなどのクリエイターやカフェなどの飲食業に関わる人達とのネットワークが当社の強み。アールプロジェクトの立ち上げ時から関わっている副社長の2人をはじめとして、各人が様々な経験を経たことで企画力には磨きがかかっている。今後はさらにリーシングやサブリースを強化するなど、より多くの物件に係わっていきたい」(永井氏)
 現在一部の物件で手掛けている他社物件の商業施設やSOHO、レジデンスへのリーシング事業も今後本格化する。月間約20万PVのアクセスがあるホームページなどを活かしてリーシングの新しい仕組みつくりにも取り組んでいく。

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