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NTT、JAL関連に大きな動き 建替え、売却で「移転太り」のテナントも 東京貸しビル市場夏の陣早耳情報

1996.08.15 11:14

 NTT、JALといった大企業グループが大規模移転を行う一方、優良物件の品薄化、ビル売却の動きなど、東京市場では、夏場にもかかわらず活発な動きが見られる。その模様をレポートする。
 相変わらず移転の動きが活発な東京市場では、大企業がグループ会社を引き連れて一挙に統合を図ることにより複数のビルで一度に空室が発生するという事例が目立つ。
 このたび新宿に竣工した東京オペラシティ。日本生命、NTT都市開発などが主要オーナーだが、NTTはこの自社グループの持ち分以外に13フロアもの大量賃貸をする見込み。同社は隣接地に新本社ビルも完成させているが、ここやオペラシティ内のグループ持ち分だけでは足りずに、大量賃貸するものだ。
 この「超大型統合」のあおりを受け、現在NTTグループが入居している都内のビルでは相次いで解約、あるいは解約予告が出ており、この中には三菱地所の日比谷国際ビルヂングや住友不動産築地ビル、同社がサブリースするニチレイ東銀座ビルも含まれている。いずれもそれなりの格を持ったビルだが「賃料が高水準の時代に入居しているので、恐らくコスト面でも移転メリットがあるのだろう」というのが仲介専門業者の見方だ。
 大企業グループの移転では、品川区天王洲に新本社ビルを完成させた日本航空の関連でも解約の動きが出ている。住友不動産品川ビルなどエリア的には品川方面のビルに多い。
 しかし、こうした動きの一報で、都心部好立地の大型物件は依然として希少価値が強まっているというのが、一般的なとらえ方だ。このたび、恵比寿ガーデンプレイスにモルガンスタンレー証券が移転するが、同社が移転前に入居していた新川イーストをサブリースしている三井不動産では、コの空いたフロアの新規集客については、一般仲介業者へは情報を流さないクローズドの形での募集手段をとった。このように都心的立地の大型物件では、オーナー会社が非オープンで、自社で客付けを行おうとする傾向が強まっているようだ。ちなみに新川イーストにおけるモルガンの後には、ジャスコの関連会社であるアイクが湯島方面から移ってくることが固まったようだ。
 キッコーマンがこの秋に、西新橋に建つハザマと興和不動産の共同ビルへ大型移転を行うが、同社の主要部隊が退去するれいめいビルの場合も、大手町に隣接する好立地の大型ビルで設備も整っており、かなりの好条件で集客が期待できることから、某大手がサブリース受託を狙っているとの情報もある。
 しかしその一方で競争力の低下や社内的な資金繰りの関係から売却へ踏み切るテナントビルも、また増えている。
 大きなところでは東八重洲MFビル。日本、アジア、米国に開発、生産、販売先を振り分ける異色の通信機器メーカー、ユニデンが本社を置いていたこのビルだが、同社がほとんど隣接地といえる目と鼻の先に自社ビルを建設して移転したために空いてしまっていたが、このたび売却の方向で結論が出された模様だ。
 テナントの中には入居していたビルがオーナー側の事情により売却、あるいは建て替え等になり、これに伴う多額の”立退料”を得て、結果的に「移転太りだ」などと噂される企業もいる。
 新日鉄とカルコンプ社の合弁企業、エヌ・エス・カルコンプなどはその典型例。同社は数年前まで中央区入船の京橋星和ビルに入っていた。ところがこのビルが実質的なオーナーであるサッポロビールの都合で売却されることになり、退居を要請された。そこで新富町へ移ったが、このビルでもまた、オーナーの国土産業側の都合で、このたび退居を要請された。今後の移転先は港区方面に決まった模様だが、この2回の移転、「かなりの”収益”を得たのでは」というのがもっぱらの噂だ。




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