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噂のスクランブル 10年間の長期契約に段階賃料も設定 1年にわたるフリーレントも
1996.02.15 15:41
フリーレントなる言葉が一般化しつつある昨今だが、実際のところどの程度利用されているかは、意外と知られていない。業界関係者と言えども、契約当事者が皆口を閉ざす為、憶測だけが先走る面もある。しかし、中にはテナント自ら情報を流すケースもある。最近、業績を急速に伸ばし、増床を繰り返す外資ソフトメーカーのA社は、昨年、開発部門の各セクションを統合、郊外に移転した。同社が入居したビルは、大手がサブリースする物件で、ビルのグレードは、申し分無いものの、アクセス面の弱さや、元の所有者が1社貸しを希望した為、テナント誘致に難航。竣工から1年近く、入居テナントは無かった。
今回、一棟借りしたA社が交わした契約は、10年に渡る長期契約。2年毎に、一定額ずつ上昇する段階賃料を設定し、現在の約1万円の賃料から、10年後には、約1万5000円になる予定だ。さらに1年のフリーレントも結ばれ、特約条項として、著しい経済状況に変化がみられる場合にのみ、賃料の見直しがされると言う。こうした長期契約の背景には、テナント側が多額の設備投資をしている事も大きいが、一方のオーナー側でも、将来的に長期安定テナントを確保したいとの思いも強くある為。結果、両者双方にメリットのあるこうした内容に落ち着いたようだ。