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都心5区のオフィス空室率は1.5%に コリアーズがオフィスマーケットリポートを発表
2025.11.17 10:34
コリアーズ・インターナショナル・ジャパン(東京都千代田区)は、東京・大阪のグレードAオフィスのマーケットレポート(2025年第3四半期)を発表した。
今月6日に発表した東京主要5区のオフィスマーケットレポートによれば、今期の空室率は1・5%で前期から0・6ポイントの低下。賃料は坪あたり3万4000円で、前期比1・8%のプラスとなった。2025年の東京都心は前半に新規供給が集中し、今期の新規供給は8600坪にとどまった。一方で需要は6万5500坪と、新規供給を大幅に上回る水準となっている。シニアディレクターの川井康平氏は「人材採用に有利な都心の新築・築浅の物件に人気が集中しており、貸主に優位な状況が強まったことで契約の更新あるいは新規の募集に係る賃料も上昇傾向が続いています。空室率1・5%は過去最低水準に迫るもので、都心の優良物件に関してはまとまった面積を確保できる募集案件は数が限られています。移転先を探す企業は中心部以外でも移転先候補を探す動きが本格化しており、湾岸エリアなどに移転する企業もみられます」と話す。
来年以降も東京主要5区ではコンスタントに新規供給が予定されている。一方、需要も堅調の見通しで、タイトな市場環境はしばらく継続するものと予測される。前述したように都心の優良物件は空室の消化が進み、また賃料は上昇傾向が続いていることから、オフィス移転を検討する企業にとっては自社の賃料負担力や物件の交通利便性など、条件面に折り合いをつけながら移転先の絞り込みをする必要がある。
また懸念されるのが工事費の高騰で、上昇する賃料を受容しつつも移転先のオフィスの入居工事に係るコストが想定を大幅に超えるケースも散見されるようになっており、川井氏は「企業は現下の状況を踏まえた現実的なオフィス移転に関する予算戦略が求められています」とする。
本レポートは基準階面積が概ね300坪以上のオフィスビルからサンプルを抽出しているが、今回からグレードAオフィスの中でも特に高品質な物件を選抜して「プレミアムグレード」を設定。主要エリアの賃料や空室率を公開している。これによれば、賃料の水準は丸の内・大手町エリアが最も高く、坪あたり5万6400円。渋谷・原宿エリアの坪5万2500円がそれに続く。特筆すべきは日本橋・八重洲・京橋エリアで、プレミアムグレードのオフィス賃料は5万1300円と、「東京」駅を挟んだ丸の内・大手町エリアとの差が縮小傾向にある。
大阪中心部のグレードAオフィスのレポートは今月12日に発表。空室率は3・2%で前期比から0・1ポイントの低下。賃料は坪1万8700円で、前期比2・7%のプラスであった。移転需要が新規供給を大幅に上回る傾向は大阪も同様で、東京と同じく人材採用の強化に乗り出す企業による中心部への移転需要が旺盛な状況が伺える。また大阪では2026年の新規供給が昨年や今年に比べ大幅に減少し、翌27年はグレードAオフィスの供給予定が具体化していない。これについて川井氏は「建築費高騰の中でも、賃料の水準が安定して上昇している東京都心は採算面で計画の見通しが立てやすい。大阪も賃料の水準が高まっているとはいえ、すでに過去になかった水準に到達しており、今後さらに上昇する見通しに確信が持ちづらいのではないか」と述べる。賃料水準の上昇をけん引している梅田エリアには全国規模で事業を展開している大手企業のオフィスが集積しており、これらの企業は賃料水準の上昇を受容しやすい。一方、関西圏での事業展開を基盤とする地場の企業が集積する淀屋橋・本町・心斎橋といったエリアでも、企業側の意識変化によって賃料水準の底上げが進めば、静観の状況にあった建替えや新規開発の動きが活発化する可能性があるとしている。



