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アートで差別化を図る 伊勢神宮近くの元歯科医院をホテルに

2025.11.17 10:28

単なるホテルではない泊まれるギャラリーに
 三重県中部で住宅設計・施工などを行うビーディホーム(三重県伊勢市)は11月9日、伊勢神宮・外宮まで徒歩10分の旧伊勢街道沿いに「EXPERIENCE ISE MIYAMACHI HOTEL(エクスペリエンス伊勢宮町ホテル)」を開業した。
 ホテルは4階建てで、もとは歯科医院だった建物を活用した。RC造で1階・駐車場、2階が歯科医院、3~4階は住居だったものを、1階をレセプションに、2~4階を10室の客室に改修した。
 濱口和也社長は「もともとホテル運営には関心を持っていた」と話す。伊勢神宮という屈指の観光スポットがあり、宿泊需要も多い。近隣には数軒のビジネスホテルがあり、観光需要がコロナ前を上回ったことを契機に大手がさらに手掛けてくることも予想される。
 「当社が同じことを行っても、差別化が難しいと思った。それであれば、当社ならではのホテルを展開しようと考えた」
 もともと濱口氏はアート好きで、出張時にはアートホテルやライフスタイルホテルに宿泊することを好む。「伊勢にもこういったホテルができれば、単なるハコではなく『そこにしかない価値』を創出できるのではないか」。
 そのようなプランのもとにオープンした「エクスペリエンス伊勢宮町ホテル」は「泊まれるギャラリー」と銘打つ。全国から応募があった多数のアーティストから15名を選定し、客室やフロアにそれぞれのアーティストの作品を展示する。作品が気に入ったら購入することも可能だ。1階のカフェでは定期的に個展も開催する。

既存物件を活用 地域の活性化も
 なぜ既存物件を活用したか。その背景には伊勢の不動産事情がある。
 「伊勢は観光地としては知名度がありますが、周辺には空き家や空室が点在している。もちろん建物の状態をしっかりと確認できることや修繕費用が想定の範囲に収まるかが前提だが、こうした空き家・空室を活用していくことが地域の活性化にもつながると考えた」
 元歯科医院が売りに出されているという情報をつかんだとき、「図面はしっかりと残されていて、旧耐震であることはネックだったが物件を実際に見て、長く使用できると判断できた」という。
 実は「エクスペリエンス伊勢宮町ホテル」の改修工事が始まった段階で、近くの民家も購入。ここも「離れ」として宿泊することができる。
 同社は中長期的な目線で、ホテル事業を拡大していく方針だ。まずは「エクスペリエンス伊勢宮町ホテル」の運営に注力するが、「機会があれば新しいホテルにも取り組んでいきたい。付加価値を創出できるよう、宿泊と何かを掛け合わせて展開していく」(濱口氏)。
 同社が掲げる理念は「時間を超えて愛される家造り」。その理念をホテル運営にも生かしていく。




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