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既存ビルの価値を高めるリモデル戦略 大阪・肥後橋で竣工前益90%を成約、早期稼働を実現
2025.11.17 10:24
ビル・マンションなどの収益物件のリモデル(価値の再構築)を手掛けるノットコーポレーション(大阪市中央区)は、大阪市内の賃貸オフィスビル「CAMCO肥後橋ビル」において、エントランスや共用部、貸室の一部改修を含むリモデルを実施した。
大阪中心部の土佐堀通に面して立地する同物件は、最寄りのOsaka Metro「肥後橋」駅より徒歩数分の恵まれたロケーションが特徴の賃貸オフィスビル。物件を所有するキャムコ(大阪市中央区)は、関西を中心に各地で不動産賃貸事業をはじめ、ホテル事業やゴルフ事業など、不動産を軸とした幅広い総合事業を展開。こうした複数の事業を有機的に連携させ、「不動産+α」の価値創出を目指している。
同ビルは長期間に渡り1社による1棟利用が続いていたが、テナントの退去に伴い全館が空室に。「早期リーシングを行い、収益を最大化すること」を目標に掲げ、ノットコーポレーションが企画・設計・施工を一貫して担当した。
ノットコーポレーション常務取締役でビルソリューション事業部の神谷奈緒美氏は次のように話す。
「オーナー様が求められたのは、いち早く稼働を回復し、近隣の競合物件の相場賃料と同等もしくはそれ以上でリーシングできる環境の整備でした。その実現のために掲げたキーワードが、“徹底したテナント企業目線でのビルリモデル(価値の再構築)”です。エリアが持つポテンシャルや、移転先オフィスを探す企業のニーズを多角的に分析し、競争優位性が高いビルへの再生を目指しました。ファーストインプレッションへの訴求効果が高いファサード改修、共用ラウンジの設置、即入居が可能なセットアップオフィスを新設し、さらにビルのアイデンティティを表現するロゴデザインやサイン計画を行いました」
また、リーシング活動では「物件の魅力を正確に伝えること」を重視したという。「当社では、グラフィックデザインを内製化し、物件パンフレットや貸室の架空レイアウト図を制作します。ビルスペックの説明だけではなく、内覧企業が“ここで働く情景”をイメージできるようPRすることで、早期成約の促進をサポートしております。情報発信のあり方も印象設計の一部と捉え、建物の潜在価値を伝える仕掛けを施しています」(神谷氏)
その結果、工事竣工前に約90%の区画が成約。賃料も近隣相場を上回る水準となり、競争力の高いリーシングを実現した。「特に共用ラウンジに近いフロアから契約が進み、共用部の付加価値がリーシングスピードと収益性の向上に直結しました。築古ビルの課題を個性へ変えるのが私たちの役割。“このビルで働きたい”と感じてもらうことが、結果として資産価値を高めるのです」(神谷氏)
課題の共有から目的の明文化、そして印象の設計へ。
ノットコーポレーションは、築古ビルの潜在価値を引き出し、選ばれる建物へ導くリモデルを追求している。



