不動産トピックス

【11/17号・今週の最終面特集】オフィス家具 最新トレンドを追う

2025.11.17 10:21

多様な働き方に対応した商品づくり
 オフィスは、社員間のエンゲージメントを高め企業の成長を加速させる基盤であると認識されるようになった。オフィス家具メーカーもニーズの変化に合わせ様々な提案を行っている。
新オフィスへの移転を機に各社員の居場所を明確化
 オフィス家具メーカー各社の近年の商品開発や、直近で新たにリリースした商品をみてみると、「多様な働き方への対応」や「人と人との交流・会話の誘発」といったキーワードが浮かび上がってくる。機能やデザインへのこだわりはもちろんのこと、人が集まり、人と人とのつながりが生まれる場にふさわしい商品づくりに注力しているようだ。加えてデジタル技術を組み合わせたICTへの進化も、現代のオフィス環境を構築する上で重要な要素となっている。
 国内通信大手のKDDIは今年7月、本社オフィスを港区高輪の再開発街区「高輪ゲートウェイシティ」にある大規模複合ビル「THE LINKPILLAR1 NORTH」へ移転した。新オフィスはグループ企業も含めた約1万3000名が働き、約600カ所の会議室やオープンミーティングエリアが設けられている。KDDIでは社員が業務に応じてオフィス内の最適な働く場を選択できるABW(Activity Based Working)の実現を目指しており、内田洋行(東京都中央区)が提供する社員居場所検索システム「SmartOfficeNavigator」が導入された。
 このシステムは、Wi-Fi電波を通じて各社員が持つスマートフォンやパソコンの位置を検出し、オフィスの中での社員の居場所を特定するというもの。固定座席ではなく場面に応じた働き方ができるフリーアドレスのオフィスにおいては、同システムがオフィスの運用管理に大きく貢献する。社員の位置を特定できるだけでなく、フロア内の混雑状況の可視化から空調・照明などの設備機器の最適制御、フロアの利用実態に基づくスペースの効率的な運用と、エネルギーマネジメントや利用効率の改善にも効果を発揮する。
 KDDIの新オフィスでは「SmartOfficeNavigator」の導入に合わせ、会議室運用管理システム「SmartRooms」も導入。これは、予約・入退室管理・サイネージとの連携により会議室の空室情報を可視化し、混雑のない効率的なスペース利用を支援するシステムで、約600カ所にのぼる会議室・ミーティングエリアのうち約420カ所で導入。残る約180カ所についても、「SmartOfficeNavigator」と連携し、フロアマップ上で検索・予約や状況確認が可能となっている。ICTを活用した空間構築は今後のオフィスづくりにおける重要な要素となるだろう。


オカムラ 曲線と高さでゆるやかに空間を仕切るシステム家具「YAA」を12月に発売
 オカムラ(横浜市西区)は10日、パネルとソファやテーブルを組み合わせるシステム家具「YAA(ヤア)」を発売すると発表した。
 「YAA」は曲線状や高さに段差を付けたりしたパネルにソファやテーブルを組み合わせる。パネルはストレート、90度・120度の曲線状、ラウンド状、両端で高さの違う段差状の5種類。それぞれ高さの違いをラインアップ。ソファとテーブルもバリエーション豊かに展開。パネルやソファ、テーブルを自由に組み合わせ、人が自然に集まりやすい空間を生み出すとしている。12月に発売予定。
 ほかにも既存のシーティングシリーズ「Sylphy(シルフィー)」に新色の追加やカンファレンスシーティング「Flotte(フローテ)」のラグジュアリータイプ、自治体向けのフレキシブルカウンター「koloka(コロカ)」など新商品も発売。
 12~14日には、完全招待制のイベント「オカムラグランドフェア2026」が行われた。場所は24年ぶりにリニューアルされた東京都千代田区の「オカムラ ガーデンコートショールーム」。
 イベントに先駆け行われた10日の記者発表会・記者内覧会では、冒頭で代表取締役 社長執行役員の中村雅行氏が挨拶。「時代の流れを捉えて提案力と製品力を磨き、需要創出型企業への変革を加速していきたいと思います」とした。
 その後ガーデンコートショールームで担当者が新製品の説明を交えながら展示を案内。また24~26階にあるオカムラのオフィス「We Labo」のリニューアルされた25階の見学ツアーを実施。新商品の「YAA」が実際に使用されており、社員が働く姿が披露された。

内田洋行 人のつながり生む空間デザイン ICTの融合でオフィスはさらに進化
 内田洋行は2000年代からいち早く、大きな天板で構成される大テーブルをオフィスで使うことによる、ワーカーのための柔軟な「テーブルワーク」に着目してきた。大テーブルは働く人が自らの意思で働く場所を選び、最適な使い方を考えることで、人との接点を生み出し新たな価値の創出に寄与する。このほど、同社が提唱するテーブルワークを多様な働き方に合わせて発展させるため、これまで展開してきたワークプレイスシステム「COMMONS TABLE SYSTEM-i(コモンズテーブルシステム アイ)」に、新モデルを追加した。
 新モデルは人を招くような流れるカーブデザインが特徴であり、有機的な天板形状の大テーブルと足元の自由度を高める新開発のインセット構造によるコア脚により、使用者は自由な位置に座ることが可能となっている。
 また、米国カリフォルニアに本社を置く世界最大のコンピュータネットワーク機器メーカー・シスコ社が掲げるハイブリッドワークの理念を実現すべく、内田洋行とシスコ社は新しいハイブリッド会議空間を開発。炎を囲んで人々が対等に語り合うキャンプに見立て、「CampTribe(キャンプトライブ)」と命名した。このシステムは座席を「ロ」の字型に配置してリアルとオンラインの参加者が同じ空間にいるかのような一体感を実現。シスコ社の人物検出・話者追跡・ノイズ抑制技術がリモート参加者を自然な議論へと導く。
 内田洋行は11日から14日までの期間、中央区新川の東京本社において新製品発表会を開催。代表取締役社長の大久保昇氏は「オフィスは単に『働く場』という役割だけでなく、『人と人との関係性を育む場』、『創造が生まれる場』としての役割も担うようになりました。当社が重視するのはつながりをデザインする提案です。その中核となるのが人を中心とした空間デザインとICTの融合であり、当社が注力してきた領域でもあります」と述べている。

イトーキ ワークチェア「SHIGA」発表
 イトーキ(東京都中央区)は、ワークチェアの新商品「SHIGA(シガ)」を、法人・個人向けに12月より順次発売を開始する。
 場所を問わずに仕事ができるようになり、人々のワークスタイルが変化する中で、同社は長時間の着座でも快適な人間工学(エルゴノミクス)に基づく機構を内包し、美しさと快適性を両立するチェアとして「SHIGA」を開発。重厚さをあえて抑え、背と座の間にわずかな余白を設けることで「抜け感」を演出。これにより、空間に軽やかな印象をもたらす。
 ワークチェアは多機能化によって座面下のメカボックスが大型化する傾向にあるが、「SHIGA」は必要な機能だけに絞り込みメカボックスの小型化を実現。ミニマムなデザインとエルゴノミクスを考慮したロッキングの両立を実現した。




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