週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

「熱負荷」対策が省エネのポイントに 効果最大化には「テナントとの協力も」

2025.11.03 11:24

 オフィスビルやマンションなどの脱炭素をどのように実現していくか。最新の設備を導入すれば効果は得られるものの、導入コストは決して小さくない。桑島技術士事務所(埼玉県蕨市)の桑島哲哉代表は「そうしたコストをかけずとも、既存設備の運用改善で大きな効果を出すことは可能だ」と強調する。
 桑島代表は国内外に80以上の工場を持つ大手電子部品メーカーで工場の省エネ施策を立案。国内20工場の省エネ活動支援で、3年間に30%の省エネを実現。この成果は内外で高く評価されている。
 2024年から技術士として独立し、メーカー向けに省エネ支援や環境経営支援を展開してきた。工場での省エネ支援で築いてきた知見やノウハウを活かして、既存ビルのZEB化や省エネ支援に取り組む。
 工場でもビルでも省エネ施策を実施するのに重要となるのが空調だ。実際、経済産業省が2023年6月に事業者向けに出した「夏季の省エネ・節電メニュー」というパンフレットによれば、オフィスビルの消費電力のうち約半分を占めるのが空調。その点に着目して高効率の新しい空調機器や様々な制御ツールが販売されている。
 更新やツールの導入も一手ではあるが、桑島氏は「空調だけではなく、熱負荷になっている部分がどこかを探るべきだ」と指摘する。例えば照明やオフィスのコピー機やPCなどからは熱が発生しており、これらは熱負荷として室温を上昇させている。これらの要因を無視して、更新や新ツールを導入しても十分な効果は得にくい。
 ただ、オーナーにとって専有部の施策を進めていくのはテナントの協力がなければ成り立たない。桑島氏は「工場においても作業する現場や管理する社員など関係者が多く、それぞれが納得して一丸となって進めていくにはどうすればいいかが一番の課題だった」と振り返る。ビルオーナーに対しても決して簡単ではないが、「テナントと協力して進めていくことも検討してほしい」と呼びかける。
 ビルの省エネを進めたいオーナーに対して、桑島氏は「最初の一歩」として省エネ診断を勧める。
 桑島技術士事務所は環境共創イニシアチブが実施する省エネ診断事業の診断機関に採択されており、設備の管理状況を診断してエネルギーの無駄遣いや省エネにつながるヒントの提示やコスト削減を提案するウォークスルー診断を提供している。ビルの場合、規模にもよって異なるが、「2~3万円ほどで診断できる」という。
 「診断を受けることで、どこに省エネの余地があるかがわかる。さらに一歩進んで、実際に省エネ施策を実施するまで伴走していくことも可能で、まずは相談してほしい」
 電子部品メーカーの工場で3年30%の省エネを実現した桑島氏。その知見とノウハウを生かして、ビルの省エネにも貢献していく。




週刊不動産経営編集部  YouTube