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【今週号の紙面より・トレンドキャッチUP】三井住友ファイナンス&リース 「assetforceリース会計パッケージ」を発表

2025.10.28 13:41

27年強制適用の「新リース会計基準」に対応
全リースがオンバランスに 財務指標などに影響
 三井住友ファイナンス&リース(東京都千代田区)は今月23日、「新リース会計基準」に対応した「assetforceリース会計パッケージ」を発表した。
 会計基準を取り巻く環境の転換点は2016年。IFRS(国際財務報告基準)ならびにUSGAAP(米国会計基準)は、従来のファイナンス・リースのみのオンバランスから、使用権資産とリース負債を含むすべてのリースをオンバランスする新基準を公表した。だが日本の会計基準は従来型のままであり、他国の会計基準との間に差異が生じていた。この是正等を目的として、2027年4月に日本で「新リース会計基準」が強制適用され、短期リースと少額リースを除くすべてのリースがオンバランスされることとなる。
 世界基準との統一を図る一方、こうした会計基準の変更に伴い「実際の運用面やシステムの選定の具体像がつかめない」、「複数の部署を横断する運用設計が難しい」、「手計算で行うことに不安がある」など、運用側の抱える課題は大きい。
 23日の記者発表に登壇した有限責任監査法人トーマツの公認会計士 神谷陽一氏は「資産負債計上を行った上で損益が計上されるため、資産から出てくる減価消却費、負債の返済から生じる利息という形で2つの費用が出てくる形になります。この結果、新基準では営業利益といった段階損益にも影響が出てくると言えます。貸借対照表と損益計算書の金額が変わるということによって、当然、このような金額を基礎として算定される財務指標についても影響があります。例えば自己資本比率はリース負債の計上が増えるため当然総負債が増えます。影響の大きさはリースを利用する程度によって変わってきますが、不動産や小売業者などは影響が大きいと考えられます」と話す。

OCRを活用して自動入力 部署間の確認・承認を支援
 こうした「新リース会計基準」の課題に対し、業務の効率性に訴求するのが「assetforceリース会計パッケージ」となる。同サービスは、従前より展開していたモノやデータの管理を効率化するSaaS型のクラウドサービス「assetforce」をもとに開発。契約情報を入力し管理を開始する段階、次にその契約の実質的なリース期間を判定精査する段階、そして最後に契約期間中の運用管理を行う段階という会計業務における3つの段階に即した機能を備えた。大量のデータを正確に入力し精査、判定することで、契約期間中に正確かつ柔軟な管理を行い、複数の部署関係者をまたいだ業務フローを構築できることが大きな特徴だ。
 具体的には、AI OCRを活用して契約書の情報を自動的に入力。リンク機能によりAIが契約書上の参照箇所と該当入力欄をハイライト表示する。未入力の項目がある場合にはリンクボタンで手入力をすることも可能。入力者自身が参照した箇所を後々の担当者に記録として引き継ぐことができる仕組みだ。
 また、契約情報からリース期間を推定する機能を標準搭載。顧客ごとのリース期間判定ロジックに合わせたカスタマイズを行うというオプションも備え、入力から精査、承認までの一連の流れをつなぐことも可能としている。借り手の開示に求められる情報を帳票や仕訳形式で出力できるほか、処理漏れを防ぐ任意のアラート機能も付帯する。
 これまで紙の契約書ベースで行われていた会計業務をパッケージ化したことで、部署間をまたいだシームレスな共有・精査を実現。実際に三井住友ファイナンス&リースが不動産事業部内で同サービスを導入したところ、従来業務の約5割の業務時間短縮に成功したという。
 DX推進部 副部長の縄野雄大氏は「実質リース期間の試算をはじめ、OCR(光学的文字認識)の精度については、あくまで参考として考えていただきたいと思います。一定のロジックに沿って出てきたものが推定のものであるというふうにご理解いただきたいと思いますし、お客様ごとによって判断が分かれるところでございます。一方で、お客様の判断に合わせてロジックを組むというオプションも用意しておりますので、その場合には高い確率の精度で実質リース期間が出せるのではないかと考えております」とした。
 小売業や飲食店などの多拠点展開を行う企業、ならびに賃借する不動産事業者は特に、会計業務の効率化が今後重要になるといえる。新リース会計基準の強制適用時期は、3月決算企業の場合が2028年3月期、12月決算の場合は2028年12月期から。経理部門にとどまらず、全社的な対策が必要になることは押さえておきたい。




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