不動産トピックス

【10/27号・今週の最終面特集】不動産業界 広がるDX化の波

2025.10.27 10:57

空き物件の反響率増加・早期成約に貢献
プロップテック積極推進で事業拡大 東京都心だけでなく関西にも進出
 成長する企業は新しいアイディアをいち早く取り入れる。今回はテクノロジーの活用で成長を続ける企業と、テクノロジーの活用で成長を支援する企業を紹介する。

不動産をもっと自由に 運用資産規模3000億円目指す
 東通不動産(東京都港区)、東通建物(東京都港区)、東通コミュニティ(東京都港区)の3社で構成される東通グループは、マカオのデベロッパーを母体としており、東京を中心に不動産事業を展開する総合不動産会社だ。同グループは2030年に運用資産規模3000億円の達成を目標に掲げ、「不動産をもっと自由に大作戦」をスローガンとするプロジェクトを始動。今年4月には、海外投資家との強固なネットワークを有する同グループと、グローバル不動産投資において豊富な実績と高い専門性を持つアジリティー・アセット・アドバイザーズ(東京都中央区)との共同出資で「東通アセットマネジメント株式会社」を設立。
 このほか、不動産小口化商品事業の検討や高品質な新感覚ホテルの開発、大型ペット共存型賃貸マンションやオーダーメイド型賃貸マンションといった時代の変化に応える賃貸物件シリーズの開発、高級レジデンスシリーズの新設など、プロップテック(不動産×テクノロジー)を通じた事業領域の拡大と新しい価値の創造に注力している。
 今月20日には、新たな事業戦略を発表。また同日を「東通の日」とし、港区芝公園の「ザ・プリンス パークタワー東京」にて、「東京タワー」が企画する人数限定の展望ツアー「TOKYO DIAMOND TOUR」への協賛を記念したライトアップイベントを開催。「東京タワー」が東通グループのイメージカラーへライトアップされた。
 東通グループ執行役員の桜井吉男氏は、不動産再生事業「TRUST VALUE」を関西に展開することを発表。「大阪は今後さらなる成長が期待されており、不動産マーケットとして大きなポテンシャルを持つエリアです」と述べ、シリーズ40棟目となる築40年の既存物件をリノベーションする「TRUST VALUE本町」のプロジェクトを紹介。同物件は5階に木の温もりを感じさせるデザインのセットアップオフィス、3階には無人ホテルのオープンが予定されている。また福岡では居住用に特化した大規模バリューアップ賃貸物件「Totsu Residence」シリーズの開発を発表。
 一方、東京都内ではJR「新橋」駅東口の市街地再開発の準備組合において組合メンバーに参画すると説明。「TRSUT VALUE」シリーズについても、麻布十番や赤坂、渋谷などの都心一等地で進行しているとした。東通グループでは前述した運用資産規模3000億円の目標に向け、AIやIoTといったテクノロジーを活用した「不動産をもっと自由に大作戦」を加速させる構えだ。

高品質・低価格を両立 AIで室内写真を生成
 カグオク(東京都文京区)は、家具・インテリアを設置して魅力的な物件写真を、AI技術を活用して作成するホームステージングサービス「カグオク」を提供している。
 住宅の入居者募集や売買の場面において、家具のない室内写真を用いるのが一般的である。一方で近年では家具やインテリアを配置した状態の室内写真を合成するバーチャルホームステージングの採用例が増えており、成約率向上への効果が期待されている。カグオクでは空室物件の反響率の増加と賃貸・売買の早期成約に貢献できる不動産広告支援ツールとして「カグオク」を開発。増山大知社長は「昨年4月のリリース以降、大手の不動産デベロッパーや地方の有力企業といった新しいビジネスやサービスへの感度が高い企業様を中心に引き合いがあり、現在では空室を抱える不動産オーナー様からもお問い合わせをいただくようになりました」と話す。
 「カグオク」の特徴はAIによる画像処理の高い精度に加えて納品までのスピード感とリーズナブルな価格帯にある。利用者は室内の写真をアップロードするだけで、家具・インテリアを配置した室内写真をAIが生成。増山氏は「写真の情報だけでは部屋の間取りを認知できず、他社のサービスでは本来は設置にふさわしくない場所にインテリアを配置してしまうケースが散見されます。当社はAIの高い精度に自信を持っており、画像から入居後の暮らしがイメージしやすい自然なインテリア配置を行います」と述べる。生成した画像は注文から最短3時間で納品という圧倒的なスピード感をもち、利用料金は1枚あたり3480円からと、業界最安の水準を誇る。
 また今年4月には、室内にある家具や荷物をAIで自動的に消去する空室写真生成サービス「カグケシ」の提供も開始。不動産の買取再販や既存物件のリフォーム後の入居者募集などで、「カグケシ」の利用ニーズが高まっているそうだ。
 同社では「カグオク」や「カグケシ」の高い技術力をAIホームステージングの領域で広げるべく、協業相手の募集を積極的に行っている。協業はホワイトラベル型OEMを想定。開発コストを抑えてAIサービスへの参入を検討している企業との協業を目指すという。
 主要な不動産ポータルサイトでは、自社でガイドラインやルールを策定し、合成やCG等で加工した室内画像の掲載を認める動きが一部でみられる。閲覧数や成約率に直結するだけに、バーチャルホームステージングを活用した不動産広告を私たちが目にする機会は今後ますます増えていくことが予測される。一方で懸念されるのが画像の品質と精度。この領域の黎明期から事業展開してきた同社のサービスは、利用者の求める品質と低コストによる満足度を両立することで、市場をリードする存在といえるだろう。




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