不動産トピックス

【10/20号・今週の最終面特集】新築中小ビルの近況とリーシング戦略に迫る

2025.10.20 11:15

三井物産都市開発の都市型コンパクトオフィス完成
短期回転型の都市型アセット開始
来年夏竣工の店舗流通ネット「TRUNK大森」
 竣工間もない新築オフィスビルと来年竣工予定の飲食店舗ビルがある。テナントリーシングの戦略も定まりながら、双方順調に客付けが進んでいる。直近の中小新築ビルを追った。

都心主要5区を中心に基準階専有面積50坪以上
 三井物産グループの三井物産都市開発(東京都港区)は、千代田区東神田2丁目で新しい都市型コンパクトオフィスの開発計画を進めている。ブランド名は「WORKING FORT(ワーキングフォート)」。第1弾となる物件名は「WORKING FORT東神田」で、2025年9月末に竣工を迎えた。
 「(仮称)千代田区東神田2丁目オフィス計画」としてスタートした「WORKING FORT東神田」の開発は、都市型アセットの開発事業。これまで物流施設の短期回転型による開発事業を進めてきたが、さらなる業容拡大に向けその他アセットでの開発事業を模索。自社の実績と知見を踏まえた結果、短期回転型の都市型アセットに着目した。開発素地については都心主要5区を中心に、基準階専有面積は50坪以上と想定し、品川区や文京区等のビジネスエリアも検討対象とする。今回の開発用地は2023年3月に靖国通り沿いで取得。翌年4月から着工し、本年9月末に完成を迎えた。
 竣工を迎えた「WORKING FORT東神田」は、S造・地上10階建てのオフィスビル。延床面積は1518㎡で、基準階貸床面積は148㎡(44坪)。特徴はJR総武線「馬喰町」駅をはじめ、都営新宿線「馬喰横山」駅や「岩本町」駅、都営浅草線「浅草橋」駅など6駅7路線が徒歩9分圏内にある。リムジンバスを利用すればJR「秋葉原」駅から羽田空港まで40分程度で到着。「東京」駅までのアクセスも容易で、新幹線や空港の利用頻度の多いワーカー・企業に適している。

セットアップオフィス 7~10階まで採用
 貸室は7~10階までで、セットアップオフィスを採用。入退去の容易な什器付きのフルセットアップ。机・椅子はもちろん、6名用会議室が2室、キッチンカウンター、Webミーティングに利用可能な個室ブース2室、ロッカーなどを実装。南向きのガラスカーテンウォールとなっており、明るい室内を実現。1階エントランスと執務室扉のダブルセキュリティも採用した。セットアップオフィスは、同社の本社オフィスが入居する「日比谷セントラルビル」で実施した事例を生かしている。自社の知見・ノウハウを生かすことで、使いやすさと快適性も確保した。
 開発事業本部 開発事業推進部の渡部大輝氏は「開発当初から主なリーシング対象に、ベンチャー・スタートアップなどの成長移転先や中小企業の新築移転需要、また大手企業の分室ニーズ、地方企業の東京オフィスの拠点などを想定して構築しました。実際に、入居希望者からの問い合わせも想定した通りのものが多かったです。ビル外観はガラスカーテンウォールでありながら、オフィス内は木目調の什器・グリーンなどを配置しています。オフィスセキュリティにおける信頼感をアピールしつつ、居心地の良さ快適性も確保できました」と述べた。ちなみに1階から8階までは既に入居企業が決定済みで、残りのセットアップオフィスの上層階2フロアは引き続き入居募集しており、早期満室稼働を目指している。
 三井物産都市開発は、今後も積極的に「WORKING FORT」の展開を計画している。2棟目は西新橋2丁目で計画しており、都営地下鉄三田線「内幸町」駅から徒歩3分に立地。規模は地上11階、延床面積1970㎡。1フロア180㎡(50坪)を検討している。竣工は27年冬の予定だ。

JR「大森」駅徒歩2分 新築商業ビルを建設
 店舗流通ネットグループ(東京都港区、以下TRNグループ)のTRNシティパートナーズ(東京都港区)は、JR京浜東北線「大森」駅東口から徒歩2分の好立地で新築商業ビル「TRUNK(トランク)大森」を開発している。竣工は2026年8月、店舗のオープンは早くて10月半ばの予定だ。
 TRNグループは、駅前立地の店舗不動産に特化した物件の取得・開発を行っている。開発用地の仕入れから設計・建築を行い、リーシング、管理までワンストップで対応。これまでに「TRN」と「TRUNK」を冠とする2ブランドを所有またはファンド物件として展開してきた。特にTRUNKシリーズは開発地域の個性と調和した、街づくりの目線も意識して展開。今年3月に竣工した「TRUNK秋葉原」に続き、当ビルで通算7棟目。着実に実績を伸ばしている。
 「TRUNK大森」は、24年10月に取得した大田区大森北1丁目の土地で開発。不動産会社から紹介された当時は更地だった。視認性の良い角地にあり、北一番街やガード通りに近く、集客性・繁華性にも優れたロケーションであることに着目。これら要因から、飲食店舗をメインに据えた商業ビルを企画した。着工は今年の6月1日。S造の地上10階建て。延床面積は597・97㎡(予定)。賑わう商店街と調和しつつ、存在感のある外観デザインを設計。看板やサインも視認性を意識することで、テナントの集客を大きく手助けする。

近隣に暮らす仕事帰りのワーカー等がターゲット
 「大森」駅周辺は、駅ビルの「アトレ」をはじめ商業施設が集積。通勤・通学・買い物客などで常に賑わうエリア。1日14万人超の乗降客数を生かした、安定的な集客が見込める。ランチやディナー、テイクアウトなどのニーズも高いが、今回は仕事帰りの飲食にターゲットを設定。近隣に暮らす仕事帰りのワーカーなどを対象に、アルコールを提供する居酒屋やディナーに適した店舗の入るビルを構築する。
 リーシング・マネジメント部の末川浩平部長は「テナント区画は1~9階までで、2~9階が約56・37㎡(17・05坪)。1階のみ約53・52㎡(16・18坪)となります。単身者も多い街なので、店舗面積はコンパクトなサイズでも充分機能するでしょう。3階と4階といった2フロアで借り、小荷物専用昇降機(ダムウェーター)の設置も可能な設計を行いました。基準階の階高3・5mのスケルトンで、飲食店向けのインフラ機能を充実させました。すでに問い合わせも来ており、一都三県を中心に複数店舗を展開している企業からの問い合わせが目立ちます」と語った。
 現在は順調に建設工事が進んでおり、早くてC工事は9月1日から。店舗のオープンは10月半ばと見ている。飲食店舗の繁忙期に当たる12月前に、新たに出店できる場所が誕生するとして飲食チェーンなどからは注目度が高い。実は同じタイミングで、大阪市都島区に「TRUNK大阪京橋」の竣工が控えている。JR「京橋」駅やOsaka Metro「京橋」駅、京阪電鉄「京橋」駅からも近い。規模は地上10階建てで、延床面積は665・90㎡を予定している。
 取締役 都市開発事業部の金子新部長は「『TRUNK大森』と同様に、『TRUNK大阪京橋』も飲食店舗の需要の高い場所に立地しています。期待値も高く、店舗実績・出店実績を伸ばしたい企業に好ましいビルです。TRUNKシリーズは年1、2棟を目標に今後も継続していきます」と語った。


<物件概要>
●名称:WORKING FORT東神田
●竣工:2025年9月
●延床面積:1518㎡
●基準階貸床面積:148㎡(44坪)
●規模:地上10階
●構造:S造
●所在地:東京都千代田区東神田2-10-16


<物件概要>
●名称:TRUNK大森
●竣工:2026年8月予定
●延床面積:597.97㎡
●基準階貸床面積:56.37㎡(17.05坪)
●規模:地上10階
●構造:S造
●所在地:大田区大森北1-3-10




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