不動産トピックス

【9/8号・今週の最終面特集】新ビルめぐり BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S

2025.09.08 10:43

都市の利便性と豊かな自然両立した働き方提案
先行開発の「TOWER S」が全面開業
世界的ホテルブランドが出展 唯一無二の宿泊体験を提供
 野村不動産(東京都新宿区)と東日本旅客鉄道(東京都渋谷区)は、共同で推進している国家戦略特別区域計画の特定事業である「BLUE FRONT SHIBAURA(ブルーフロント芝浦)」のツインタワーのうち、南側の1棟目「TOWER S」が本年2月に竣工。今月1日に全体開業を迎えた。同物件は浜松町・芝大門といった都市と竹芝・芝浦といったベイエリアの結節点に位置し、水辺の自然を感じられる最新鋭のオフィスやラグジュアリーホテル、商業店舗などで構成される。

ワーカー向けに充実の設備 野村不も本社移転
 「BLUE FRONT SHIBAURA」は、JR「浜松町」駅東側でかつて東芝グループが本社を構えた「浜松町ビルディング」の建替え事業として整備が進められているプロジェクトで、区域面積は約4・7ha、ツインタワーの延床面積の合計は約55万㎡に及ぶ。設計は建築家の槇文彦氏が担当。高さ約230mのツインタワーを建設するとともに、ベイエリアに面した立地を生かし船着き場の整備や舟運の新規航路開拓が予定されている。
 先行して開発が行われ今年2月に竣工した「TOWER S」は、建物規模が地上43階地下3階。オフィスを中心としたフロア構成で、高層部には世界的ラグジュアリーホテルブランド「フェアモント」の日本初進出となる「フェアモント東京」が開業。低層部は飲食を中心とした商業店舗が集うフロアとなっている。プロジェクトのコンセプトは「TOKYO&NATURE」。東京都心部の陸の端であり、都心とベイエリアをつなぐ中心地でもある同物件では、都市の利便性と自然の豊かさが融合した新しいライフスタイルの創造を目指している。
 オフィスはワンフロア約1500坪と、都内有数の規模を誇る。野村不動産では都市の利便性を享受しながら自然豊かな環境の中で一人ひとりに合ったワークスタイルを実現できる働き方「TOKYO WORKation(トウキョウ ワーケーション)」を提唱。この理念を実現する取り組みとして、「TOWER S」の28階にはオフィスワーカー専用のスカイラウンジを整備。屋外テラスやカフェ、フィットネス、サウナなど、多様な働き方や心身の健康に寄与する環境づくりに注力した。オフィスフロアには入居企業の移転が順次行われており、野村不動産もグループ各社を含め8月以降、同物件への本社移転を順次実施している。
 地上35~43階の「フェアモント東京」は今年7月に開業。「フェアモント」はフランスを本拠地とするアコーホテルズグループのラグジュアリーホテルブランドで、客室数は29室のスイートルームを含む217室。客室は52~278㎡のゆとりある広さを確保し、日本家屋の縁側を連想させるシーティングエリアが宿泊客に安らぎを提供する。このほか5つのレストランと2つのバー、屋外テラス、宴会場、チャペル、屋内・屋外プール、ジム、サウナなど、充実の施設を備えている。
 地上1~3階の商業エリアは、多様なジャンルで構成される27店舗の飲食専門店等が出店している。商業エリアは「まちのコミュニティハブ」をテーマとしており、オフィスで働く人々だけでなく、地域で暮らす人々の利用も想定。このため客席は店舗内の客席以外にも、各店舗で購入した商品を自由に楽しめるフードコート形式の共用席も約770席用意している。また一部エリアをパブリックスペースとして開放しており、エリア内では持ち込みも可能。仕事や勉強、コミュニティの形成といった、食事以外の用途でも利用することが可能だ。共用席はモバイルオーダーで商品を注文し、出来上がった料理を利用客が各店舗で受け取る方式だが、17時以降になるとレストラン方式に変更。注文した料理をスタッフが各座席まで届けるフルサービスが提供される。野村不動産ではこれまで都市型飲食ビル「GEMS(ジェムズ)」シリーズをはじめ商業開発の実績を豊富に有している。同社取締役兼執行役員で都市開発部門長の黒川洋氏は「本物件の商業エリアは、当社のこれまで培ってきた商業開発の集大成ともいえるもので、地域にお住まいの皆さまにも気軽にご利用頂けることを意識して定番のジャンルを中心とした飲食店舗の構成としました」と話す。
 物件はJR・東京モノレール「浜松町」駅、都営地下鉄「大門」駅、ゆりかもめ「日の出」駅が徒歩圏内で、新幹線が発着する「東京」駅や「品川」駅、東京の空の玄関口である羽田空港へのアクセスもしやすく、非常に高い交通利便性を有する。また「浜松町」駅から同物件へはペデストリアンデッキと、デッキ出口から同物件までの間に約200本の植栽を配置した歩行者空間「GREEN WALK」によって、雨にぬれずにアプローチすることが可能となっている。「GREEN WALK」にはカフェ・アメリカンダイニング・イタリアンの3つの飲食店舗が出店しており、緑に囲まれた空間でゆったりと食事を楽しむこともできる。
 今月1日の「TOWER S」全体開業に合わせて行われた式典には、野村不動産代表取締役社長の松尾大作氏、野村不動産ホールディングス代表取締役社長の新井聡氏、東日本旅客鉄道常務取締役の中川晴美氏ら、関係者が出席。挨拶に立った松尾氏は「本プロジェクトは2018年3月に国家戦略特区の認定を受けてから約7年をかけ、関係者の皆様方から多くのご支援を頂き、本日『TOWER S』の開業を迎えることができました。『BLUE FRONT SHIBAURA』から東京のベイエリアのさらなる発展を目指し、東京の都市力の向上に貢献できればと思います」と述べた。プロジェクトは今後、「TOWER N」の開発へと進行し、竣工は2030年度の予定。「BLUE FRONT SHIBAURA」は、都心にいながら自然を体感できる豊かなライフスタイルやワークスタイルを実現する拠点の新たなベンチマークとなる。


<建物概要> 名称:BLUE FRONT SHIBAURA
【建物概要】 所在地:東京都港区芝浦1-1-1他
延床面積:55万450.80㎡
敷地面積:4万104.29㎡
規模:
地上43階地下3階(TOWER S)、地上45階地下3階(TOWER N)
用途:オフィス・商業店舗等・ホテル・駐車場(TOWER S)、
   オフィス・商業店舗等・住宅・駐車場(TOWER N)




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