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「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」31日竣工 容積緩和を受けた分譲団地の全国初の建替え

2025.07.28 13:34
旭化成不動産レジデンス(東京都千代田区)と丸紅都市開発(東京都千代田区)が参加組合員として参画してきた、既存マンションの建替え事業による再建マンション「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」が今月31日に竣工する。本プロジェクトは東京都世田谷区で1971年に建築された2棟7階建て171戸の分譲団地「給田北住宅」を建替えるもので、マンション建替円滑化法第105条による容積率の緩和を受けている。同法による団地における容積率の緩和は、本プロジェクトが全国初の適用となる。
「給田北住宅」の管理組合は、2011年の東日本大震災で建物にひび割れ等の被害が発生したことを契機に耐震診断を実施。その結果、築年数の経過とともに構造が劣化し耐震基準を満たしていないことが判明したことから、管理組合では建替えに向けた検討・協議を重ねてきた。2017年には建替えの事業協力者の募集を行い、翌18年に旭化成不動産レジデンスおよび丸紅都市開発のグループを選定。2022年のマンション建替組合の設立認可、約1年の解体工事、約2年の新築工事を経て今回の竣工に至った。
マンション建替円滑化法は、マンションの建替えを含めたマンション再生をスムーズに行うための手続きやルールを定めた法律で、2002年に制定。2014年の改正では、耐震性不足を認定された「要除却認定マンション」を対象にして、マンション敷地売却制度や容積率の特例が創設された。「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」はこの容積率の特例を受けており、設計上の条件を満たすことによって従前の建物よりも大型の建物を建築することができた。旭化成ホームズ(東京都千代田区)のマンション建替え研究所の重水丈人所長は「敷地面積は従前と同じ約1万2000㎡ですが、延床面積は従前より2倍近い約2万㎡を確保。総戸数は171戸から248戸と大幅に増加することができました」と話す。容積率緩和の実現に向けては、道路沿いに歩道状空地の設置、近隣住民を含めた憩いの場となる広場状の空地、貫通通路の設置などが行われている。
「アトラスシティ千歳烏山グランスイート」は、「杜ノ棟」と「風ノ棟」の2棟で構成され、建物規模はいずれも地上4階地下1階。建築基準法第55条第2項の認定を受け、最高高さ12mへの緩和を受けることで、4階建てを実現した。間取りは1~4LDKとなっており、総戸数248戸のうち非分譲住戸は104戸。旭化成不動産レジデンスによれば、2024年1月より販売を開始し、現在までにほぼ完売となっているという。